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時計の契約(コントラクト)

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5歳の時、颯空(そら)はじいちゃんを亡くし、その深い悲しみに心を閉ざしていた。しかし、一冊の不思議な本と共に彼の人生は大きく変わり始める。 失われた家族への思い、過去への後悔、そ…
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#パラレルワールド

時計の契約:第1章4時

4時:目覚めの朝 [遙の世界] 眩しい光とともに、遠くから優しい声が響き渡る。 「はるー、はるー」朝日が眩しくまるで天使に包まれているような光が降り注いでいる。その声は親しみや安らぎをもたらすような声だった。だが、俺の心にはまだ不穏な感覚が漂っている。その声の正体を知りたいが、混乱と不安がまるで殻の中に閉じ込めるように瞼を覆う。ここはどこなんだ、と不安と恐怖の感情が交互に揺さぶって来る。 優しくおおらかな声で「遙、ここで寝とったら風邪ひくぞぉ」と、聞き覚えのある声によう

時計の契約:第2章5時

第2章:夢幻5時:深い夢の中へ 「遙、また夢をみたんか?頭痛いか?薬飲んでなかったやろ」どういうことかと思い、俺はゆっくり部屋を見渡した。リビングの部屋の隅に父さん、母さん、弟の時翔の写真が一枚ずつ並んでいた。そうか、俺は時翔と話す夢を見ていたんだ。家族は俺が5歳の時に事故で死んでしまった。断片的な記憶が蘇ってくる。家族で少し遠いところまで遊びに行った帰りだった。俺は寝ていたから何があったのか分からなかったが気付いたときには、上下さかさまの車、飛び散ったガラス、動かないおと

時計の契約:第2章6時

6時:時の幻影 意識が徐々に夢の世界へと引きずられていった。夢と現実のはざまを行き来しているさなか、部屋の空気が一瞬変わったように感じた。心臓が急速に鼓動し始め、何かが俺の回りを静かに、重く漂っている気配を感じた。そして再び、あの不気味な声が聞こえてきた。 「そ、ー、、ぉ、、ら、ー、、ぁ、、、」 ギュッと目をつぶり、声を無視しようとした。俺には聞こえなていないかのように、だがその存在感はますます強くなり不安を煽ってくる。内なる混乱が再び襲ってきて、息が詰まりそうにな

時計の契約:第2章7時

7時:記憶の欠片 [颯空の世界] じいちゃんが手招きしているのが見えた。光の粒子、幻想的な光、柔らかな雲、青々とした丘、穏やかな川の流れ、光と色彩の輝きに満ちた空間が広がっている。「待っていじいちゃん!!」必死にじいちゃんを追いかける。もうちょっとで届く、限りなく遠くまで手を伸ばした。その瞬間伸ばした腕は空中に浮かび、そのままソファーから転げ落ちた。「夢か。」と、腕を伸ばしたまま深いため息をついた。夢の中で届きそうだったけれど、まるで手が届かない場所にいるんだと思い知らされ

時計の契約:第2章8時

8時:記憶の迷路 机に向かってえらく分厚い本を静かに読む時翔の背中を時折見ながら、俺はベッドでゲームをしていた。中学一年生になった時翔は背が伸びて、スラっとした手足と母さん譲りの色の白さ、あまり感情を出さないところは父さんにそっくりだ。俺は時翔の部屋でのんびりとゲームに興じていた。時翔は相変わらず分厚い本に集中してたが、ちらっとこっちを見ているように感じた。その視線は何かを窺うようだった。 「兄さん、最近よく眠れないんじゃない?」時翔の声が部屋に響く。 「別に」淡々と答える

時計の契約:第2章9時

9時:時の迷宮 [颯空の世界] 「じいちゃん、じいちゃん、待って」俺は手招きするじいちゃんに向かって駆け寄った。ここは一体どこだろうか。 幻想的な空間が広がり、まるで天国のような居心地の良さが漂っている。青く透き通った空が広がり、優しい風が心地よく吹き抜ける。夢か現実か、そんなことを考える余裕もないほど、この不思議な場所に心を奪われている。柔らかな風が心地よく、体が浄化されているように風が全身をまとっては通り過ぎた。奥には静かに流れる滝があり、その奥の入り口を入ると石碑が目

時計の契約:第3章10時

第3章:螺旋の果て10時:闇と光の螺旋 「・・・兄さんは、悪魔を信じる?」一体急に何を言っているんだ? 「悪魔って、ゲームや本に出てくるあの悪魔のこと?」何か知っているような気がするが思い出せない。 俺はさっき見た夢のことを伝える。じいちゃんが手招きをして時計の表紙の本を開かせ、本が光輝いたという夢のことを話した。黙って聞いていた時翔だったが驚きと困惑の表情を浮かべている。そういえば、夢の最後にじいちゃんが何かを耳打ちしていた。俺はその言葉を復唱した。 「ナア・ヴィラル・

時計の契約:第3章11時

11時:鏡の向こうの真実 死ぬとはどいうことなんだ。”死”という単語に驚きと恐怖が俺を包み込む。俺は遙という名前で”そら”の世界と入れ変わっていて・・・。頭の中でピースとピースをあてはめるが、訳が分からない。今起きていることすら、受け入れられないと言うのに。 「兄さん!!」時翔の声でハッとした。彼が俺を見つめる目に、驚きと悲しみが入り混じっていた。眉間をよせ、唇はわずかに開いていた。その表情からは時翔の心に激しい衝撃が走り、恐怖と不安が広がっていることが伝わってくる。時翔の

時計の契約:第3章14時

14時:鏡と交わる運命 俺は深い疑問と戸惑いを抱えながら、自分が世界線を超えているという事実に向き合っていた。俺の心は複雑な思いで揺れ動き、違う世界線での自分との間にある奇妙な繋がりに気づいていく。俺の記憶が曖昧だったことも、体中がだるくなっていくことも、全部全部世界線を超えてしまったことのせいなのか。こっちの世界の”俺”と記憶が重なっていたのか。 あれほど憎いと感じた悪魔だが、よく見ればとても悲しそうな目をしていた。気付かなかったけど悪魔はとても痩せていた。 「君はどっち

時計の契約:第4章15時

第4章:交差する運命15時:命の光交差点 時の本を開いたまま表紙を見てみる、指先でなぞるとその光沢が心地よく伝わってくる。手に感じる本の重みは、その中に秘められた力の象徴であり、未知の可能性に満ちた存在を感じさせる。部屋の中には静寂が広がり、悪魔の不安げな表情がその中に溶け込むように浮かび上がる。その眼差しは、新たな淵から抜け出すような虚ろさを帯びていた。 「なぜ、この本に悪魔が宿るのか・・・」 俺の問いかけが部屋に響く。その声には疑問と不安が入り混じっていた。時翔の表

時計の契約:第4章16時

16時:鏡の向こうの旅路 「急がなくちゃ」時翔がささやくように言った。 その言葉に俺はざわついた。時翔の声は静かだった。その背後には切なさと焦燥が滲んでいた。鏡越しに映るその顔は、俺ともじいちゃんとも遙とも目線を合わせない。俺と遙は世界線が違うだけの”俺”。 だけど、少しだけ違う感じがする。時翔は遙と過ごした時間もかけがえのないものだったのかもしれない。 遙はそれをよく分かっていた、だから時翔の両手を優しく握り向かい合っていた。何か話しかけたようだったが俺には聞こえなかった

時計の契約:第4章17時

17時:呪文 ドスン。地面に激しく叩きつけられた音が響く中、俺は尻もちの痛みに耐えながら意識を取り戻していった。ぼんやりと視界がかすむ中、そこに広がるのはまるで俺がプレイしていたゲームの世界そのものだった。不思議な感覚が心を包み込む、ふと隣に人影を感じ、俺はそっちへ振り向いた。 俺と同じサイズの白猫の姿が目に飛び込んできた。白魔法の装いを身にまとった、真っ白な毛並みが美しい猫だ。長い毛がふわふわと揺れ、時が止まったように見つめあっていた。薄い青色の目は俺をじっと見つめて

時計の契約:第4章18時

18時:魔法学校の秘密 俺たちは向こうに見える魔法学校へと向かった。その場所はゲームの始まりであり、冒険の原点だった。本当にゲームと同じ世界のようで、精巧な建物や背景がとても美しかった。 まずは、古代の魔法の書を探すための地図を探すところからだ。確か入口付近にいた天使に話しかければよかったはず、少し離れたところにそれらしき天使を発見した。俺たちはそこを目指し歩みを進めた。予想とは裏腹に天使に触れるとあっけなく地図をもらえた。この世界は城のような魔法学校で、とてつもなくで

時計の契約:第4章19時

19時:魔法の宝庫と謎めく光 遙もまた、同じように苦しむ俺を見つめながら、無力感と絶望に打ちのめされた。すると悪魔たちの細くて長い指が本に触れた。その瞬間、体が空中に浮き地面へと落ちた。息苦しさが一気に和らぎ、心の中に深い安堵が広がった。 「ありがとう」とまた同時に感謝を述べた。憎むべき悪魔だったはずなのに、いつの間にか恐れも憎悪も消えていたことに自分でも驚いている。ただ今は時間がない。急いで次へ向かわなくては。俺たちは立ち上がり、パズルを持って次の目的地へと向かった。