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時計の契約(コントラクト)

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5歳の時、颯空(そら)はじいちゃんを亡くし、その深い悲しみに心を閉ざしていた。しかし、一冊の不思議な本と共に彼の人生は大きく変わり始める。 失われた家族への思い、過去への後悔、そ…
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#毎日note

時計の契約:第1章0時

あらすじ 第1章:始まり0時:記念日の微笑み 「ハッピーバースデー、颯空!!」 今日は俺の誕生日で、じいちゃんの命日でもある5月5日だ。家族そろって毎年誕生日会と、じいちゃんを偲ぶ大切な日だ。リビングの隅には小さな木製の台の上に笑っているじいちゃんの写真が飾ってある。いつもここから見守ってくれている、この存在が家族の心をほんのりとあたたかくしているんだ。弟の時翔はまだ3歳だったからじいちゃんのことはあまり記憶にない。だから俺はよく時翔に、じいちゃんといっぱい遊んでもらった

時計の契約:第1章1時

1時:兄弟の記憶 「兄さん、5歳の誕生日のことを覚えてる?」急な質問に驚いた。あの日のことを家族は誰も話したがらないから。あの日は俺の誕生日を祝っていた。その最中にじいちゃんが心臓発作で亡くなった。あの日どうしてそうなったのかいつも思い出そうとするが、なぜかその記憶だけが切り取られたように思い出せなかった。 「全然思い出せないな」そう答えると、時翔はゲームの手を止めてこっちを向いて話しかけてきた。その眼差しは、俺の顔を捕らえ、俺の内に隠された何かを鋭く探しているかのように、

時計の契約:第1章2時

2時:記憶の闇 どのくらいたったのだろうか。自分のベッドに横になっていた。やっと落ち着いてきた俺は、ベッドに座りなおし、ベッドボードに置いてある写真を手に取った。5歳の誕生日に皆で撮った写真だ。父さん、母さん、時翔、そしてじいちゃん。この日の記憶だけ切り取られたようにすっぽりと抜けている。何度思い出そうとしても霧がかかったように思い出せない。ただあるのは、あの日じいちゃんが亡くなったという事実だけだった。もし、時翔の話が本当なら、フラッシュバックが現実だとすればもしかして悪

時計の契約:第1章3時

3時:悪魔の涙 太く低い、耳にまとわりつく、悪魔の途切れ途切れの声が部屋に響く。 「いただ、きまー、、、すぅ」獣のように額から突き出た大きな角と、悪魔の鋭い眼光は、まるでこの世に怖いものなんてないかのように瞬きもせずただまっすぐに見つめている。俺を喰らっているのが感覚で分かった。俺は食べられている。でも不思議とどこも痛くなかった。悪魔と目が合っているが俺を見ていない、何を見ているんだお前は・・・。 悪魔は俺の怒りと憎悪に満ちた視線を受け流し、ずっと不気味な笑みを浮かべてい

時計の契約:第1章4時

4時:目覚めの朝 [遙の世界] 眩しい光とともに、遠くから優しい声が響き渡る。 「はるー、はるー」朝日が眩しくまるで天使に包まれているような光が降り注いでいる。その声は親しみや安らぎをもたらすような声だった。だが、俺の心にはまだ不穏な感覚が漂っている。その声の正体を知りたいが、混乱と不安がまるで殻の中に閉じ込めるように瞼を覆う。ここはどこなんだ、と不安と恐怖の感情が交互に揺さぶって来る。   優しくおおらかな声で「遙、ここで寝とったら風邪ひくぞぉ」と、聞き覚えのある声によう

時計の契約:第2章5時

第2章:夢幻5時:深い夢の中へ 「遙、また夢をみたんか?頭痛いか?薬飲んでなかったやろ」どういうことかと思い、俺はゆっくり部屋を見渡した。リビングの部屋の隅に父さん、母さん、弟の時翔の写真が一枚ずつ並んでいた。そうか、俺は時翔と話す夢を見ていたんだ。家族は俺が5歳の時に事故で死んでしまった。断片的な記憶が蘇ってくる。家族で少し遠いところまで遊びに行った帰りだった。俺は寝ていたから何があったのか分からなかったが気付いたときには、上下さかさまの車、飛び散ったガラス、動かないおと

時計の契約:第2章6時

6時:時の幻影 意識が徐々に夢の世界へと引きずられていった。夢と現実のはざまを行き来しているさなか、部屋の空気が一瞬変わったように感じた。心臓が急速に鼓動し始め、何かが俺の回りを静かに、重く漂っている気配を感じた。そして再び、あの不気味な声が聞こえてきた。   「そ、ー、、ぉ、、ら、ー、、ぁ、、、」   ギュッと目をつぶり、声を無視しようとした。俺には聞こえなていないかのように、だがその存在感はますます強くなり不安を煽ってくる。内なる混乱が再び襲ってきて、息が詰まりそうにな

時計の契約:第2章7時

7時:記憶の欠片 [颯空の世界] じいちゃんが手招きしているのが見えた。光の粒子、幻想的な光、柔らかな雲、青々とした丘、穏やかな川の流れ、光と色彩の輝きに満ちた空間が広がっている。「待っていじいちゃん!!」必死にじいちゃんを追いかける。もうちょっとで届く、限りなく遠くまで手を伸ばした。その瞬間伸ばした腕は空中に浮かび、そのままソファーから転げ落ちた。「夢か。」と、腕を伸ばしたまま深いため息をついた。夢の中で届きそうだったけれど、まるで手が届かない場所にいるんだと思い知らされ

時計の契約:第2章8時

8時:記憶の迷路 机に向かってえらく分厚い本を静かに読む時翔の背中を時折見ながら、俺はベッドでゲームをしていた。中学一年生になった時翔は背が伸びて、スラっとした手足と母さん譲りの色の白さ、あまり感情を出さないところは父さんにそっくりだ。俺は時翔の部屋でのんびりとゲームに興じていた。時翔は相変わらず分厚い本に集中してたが、ちらっとこっちを見ているように感じた。その視線は何かを窺うようだった。 「兄さん、最近よく眠れないんじゃない?」時翔の声が部屋に響く。 「別に」淡々と答える

時計の契約:第2章9時

9時:時の迷宮 [颯空の世界] 「じいちゃん、じいちゃん、待って」俺は手招きするじいちゃんに向かって駆け寄った。ここは一体どこだろうか。 幻想的な空間が広がり、まるで天国のような居心地の良さが漂っている。青く透き通った空が広がり、優しい風が心地よく吹き抜ける。夢か現実か、そんなことを考える余裕もないほど、この不思議な場所に心を奪われている。柔らかな風が心地よく、体が浄化されているように風が全身をまとっては通り過ぎた。奥には静かに流れる滝があり、その奥の入り口を入ると石碑が目

時計の契約:第3章11時

11時:鏡の向こうの真実 死ぬとはどいうことなんだ。”死”という単語に驚きと恐怖が俺を包み込む。俺は遙という名前で”そら”の世界と入れ変わっていて・・・。頭の中でピースとピースをあてはめるが、訳が分からない。今起きていることすら、受け入れられないと言うのに。 「兄さん!!」時翔の声でハッとした。彼が俺を見つめる目に、驚きと悲しみが入り混じっていた。眉間をよせ、唇はわずかに開いていた。その表情からは時翔の心に激しい衝撃が走り、恐怖と不安が広がっていることが伝わってくる。時翔の