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物語り詰め合わせ

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優しい物語りに浸りたい時がある。
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#眠れない夜に

道なき森と僕らの物語

※物語は全て無料で読めます😊 木が生い茂り、来るものを拒む森。 ここは一体どこなんだろう。 どうして僕はこんなところにいるんだろう。 僕は何度も自分に問いかける。 足元の落ち葉を踏むたびに、 過去の誰かの冷たい言葉が、頭の中こだまする。 『君はいつも間違っているんだ』 『誰も君を必要としてない』と。 それらの言葉が、僕を森に引き戻し、 何度も何度も僕を傷つける 「こんな森にいる理由なんて、もうとっくに忘れてしまった。どこに行きたかったのかすら、忘れてしまったよ」 果て

¥100

レンズの先

同じものを見ているはずなのに 写真にすると世界が違った 私の見る世界は現実的で そこにある物が当然映るのだけど 彼女が映し出す世界は、幻想的で美しかった 同じものなのに、儚かった 同じ夏空を見上げては 「キレイな空だね」って言うと彼女は 「私には、ちょっと切なく見える」って答えが返ってくる。 私の目が捉えるのはただの青、 無垢で広がる空が、私の視界にはただの空虚として映る。 けれど、彼女の目が捉えた空は、 夢の中に広がる青さの中に 深い海の底のような静けさを孕み、 それ

君の視線と僕の視線

趣を大事にするフクロウが言いました 「突然降る雨を見てごらん。 空は誰かの心の叫びを、涙に変えているのだろう。 その涙が静かに染み込んで、悲しみを包み込み、 深い感情の川を流れてゆく。 雨の一滴一滴に物語が宿り、 心の奥底に届いて、響く音楽のように。 それはただの水滴ではない、心の詩なんだ。」 精確さを求めるハヤブサが答えました 「空が泣く…詩的で美しい見方だね。 でも、僕にはそれはただの気象現象に見える。 雨は湿度と気圧の変化によるものだし、 そこに感情はないと思うんだ。

季節外れのアジサイ

夏の太陽に負けてしまった君が 枯れて儚く散りそうだ 梅雨からずっと咲き誇っていた君の 生命が尽きた瞬間か 夏の暑さのせいなのか 僕の怠慢なせいなのか ただ本当に終わったのか 梅雨が好きだった君はあまりの夏の暑さに 生きる希望を失いかけては まばゆい太陽を睨みつけ、怒って 変わらない環境に愚痴を重ねて。 進むべき道はいろいろあっただろう どうすればよかったのかなんて結果論だ まだ大丈夫だろうと めんどくさくて君の生命力を盾にして ほっていたのは僕なんだから。 今更後悔し

逆さまくじら

ある晴れた日、小さな村に住む少女は、一人海辺に座っていました。潮風がそよそよと吹き、波が静かに寄せては返す音が聞こえてきます。太陽は真上から照りつけ、肌をじりじりと刺すようでしたが、少女は気にせずに空を見上げていました。 少女は今日も、何かを待つように空を見上げていました。誰よりも小さな少女はいつも馬鹿にされていました。そんな時は、いつもこうやって海辺に座り空を眺めます。彼女がまだ幼かったころ、世界を旅する船に乗って村にやって来た大きな男の人と出会いました。その出会いが彼女

透明な自由

山に咲く美しく儚い花、サンカヨウ。白い花を持ち雨露に濡れれば透明になる、とても神秘的な花。そんなサンカヨウのお話。 ある日、山の谷間にサンカヨウが静かに咲いていた。サンカヨウは自分の儚い命に疑問を持っていた。なぜ自分はこんなに短命で、透明になってしまうのだろうか?彼女はいつもこの問いに苦しんでいた。 その夜、山に雨が降り始めた。サンカヨウの白い花弁は、次第に透明になり、まるで存在を失ったかのように感じていた。そんな時、サンカヨウのそばを小さなイモリが通りかかった。黒い背中

約束の付箋

電車で見つけた落とし物 真新しい小説が一冊 ちょこっとだけ顔を出している付箋 興味本位であけたページ 小説を読まない僕には ただの文字の羅列 どうして付箋をつけたかったのか でもすぐに分かった 左下の手書きの文字 「13時にいつもの神社で」 その隣に違う字で「OK」 僕は一安心した 返事が来ていることで二人は 小説がなくても出会えることができるだろうから 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は 約束 × 付箋

追いかける風

人間は怖い。一昔前、人間の友達が出来た。僕は化けて人間と遊んでいた。冷やかしてやろうと思ったんだけど、すんごく楽しくていつしか友達になっていたんだ。 あの日は風が少し強くって、でも一緒に遊んでいたら突風が吹いて、僕は驚いて耳としっぽが出てきちゃったんだ。そしたら友達がすごく怖い顔をして大人たちを呼んで、僕を追いかけまわしてきたんだ。怖かった僕は森の中に逃げ込んだ。 友達だと思ってたのに、悲しかった。あれ以来人間が怖い。だらか僕は人間にちょっと悪戯をしては驚かすんだ。自分の

風に消えた友達

おばあちゃん家に行くと、 あの少年に会える気がするんだ。 小さいころ、一度だけ出会った、 あの特別な友達に。 見慣れないおばあちゃん家の裏、 森の中で一人遊ぶ。 木々のざわめき、風の音、 不思議な気配を感じた瞬間。 そこに現れた同じ年頃の子、 笑顔で近づき、「一緒に遊ぼう」。 無邪気な声に心躍らせ、 二人は森でかくれんぼ。 木陰の秘密、草のトンネル、 笑い声と蝉の声が響く、森の中。 初めての友達、特別な時間、 夏の日差しに包まれて。 帰ろうと思ったその時、 突然、風が

魔法の扉と不思議な冒険(後編)

※物語は無料で読めます(*'ω'*) 第2章:扉を開こう ドンドンと響く、冒険の鼓動と一緒に僕は扉を開いた。 今まで見たことがない世界に触れられる興奮と行ってもいいのかな、という不安が入り混じるけど、目の前に広がる世界を見たらそんなことは吹っ飛んでいった。なんてきれいな世界なんだろう。これは僕が夢見ていた世界そのままだった。 猫に兎にリスもいる。翼を持っていたり、色が虹色に輝いていたり、僕の心をワクワクさせてくれるなんて美しい世界なんだろう。森たちは歌を歌い、キノコたち

¥280

夢の灯を持つリリイと夢を食べるドリアン

夢の灯を持つ妖精リリイと、夢を食べる魔法使いのドリアンがいました。リリイは美しい夢を人々に与える存在として崇められ、ドリアンはその夢を食べてしまう存在として嫌われていました。リリイはいい夢を見させて人々へ希望を配りつづけていましたが、ドリアンはそんなリリイのことをよく思いませんでした。 世界ではリリイのように人に夢を与えられるのが正義です。 人の夢を食べるドリアンは誰からも好かれず、一人彷徨っていました。ある日、リリイの作った夢を見ている一人の少女がいました。その夢は、白馬

解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」 理想の世界が現実と交差する お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り しかし、現実は予期せぬ道を辿る 自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り 予定と違う現実が私を縛り付ける だからこれは私じゃない だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった 幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ 私の物語りの主人公は 金持ちの一人っ子 白くて長毛のボルゾイを飼って 不自由なんて知らない 自由とともに生きる美少女 それが何一つ叶わない世

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い