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4°Cをディスる奴は俺が許さない

かなり今さらになってしまうが、昨年のクリスマスことだ。何気なくツイッターを開いたら、恐ろしいくらいに「4°C」の話で埋め尽くされていた。

どうやら誰かが「貰っといてなんなんですが、30歳にもなってクリスマスプレゼントに4°Cはちょっと…」という投稿をして、それが燃えているらしかった。

「貰っといて文句言うなんて何様だ!」「貰えない人だっているというのに!」「4°Cだって素敵じゃないか!」と怒りの声を荒げる人もいれば、「でも30にもなって4°Cはさすがにね」「萎えちゃうよね…」「高校生ならまだしも…やっぱ社会人だったらね…」と同調一派もかなりの数がいて、気づけばタイムラインは業火の炎が巻き起こっていた。

最終的に「好きな人からだったら何をもらっても嬉しいよ」「中身じゃないよね、気持ちだよね」と聖人君子ツイートが出回り、その派閥が「うんうん、そうだよね」「やっぱ大事なのは心っていうかさ」と市民の盛大な支持を集めこの論争の覇権を握り、燃え上がった炎はどうにか鎮火の方向に向かい、事態は収束した。


ところで、まぁ、かなり、今さら?って感じにはなってしまうが、一応ね、僕はまぁ、蒸し返すようで悪いけれども、一つだけ、言いたい。


めっちゃ4°Cあげてた。


すごい、なんならびっくりするくらいのドヤ顔で。

それは妻と付き合っていた頃、一緒に初めて迎えたクリスマスのこと。

プレゼントは何にしようか、やはりクリスマスだからいつもと違うおしゃれなディナーでも取りながら、いい感じのネックレスでもあげようかと思った。まぁ色々考えた。やっぱり喜んでほしい。「値段ではなく気持ちが大事」とはいうものの、初めてだしある程度はちゃんとしたものを贈りたい。でも夜中にいきなりさ、ドールチェアーンドガッバーナとか、グッチとか、コーチとか、シャネルとか、ヴィトンとか、ハイブランドをあげるのも、ちょっと気合入りすぎじゃない?って気がした。いきなりは、重くないかな?って気がした。


普段の私服見ててもあんまりブランド興味ない感じだし、たぶん「えーー!!そんな悪いよ〜」ってガチで恐縮するタイプで、「私もプレゼント買ってきたけどそんないいもの選んできてないし…」って落ち込むタイプで、素朴な感じというか、安いものをいい感じに着こなす系なタイプで、これ見よがしにブランド品ちら見せするタイプではないなって。


じゃあどうするか。んー、手紙でも書く? いや全然ね、ありと思う。古風。西野カナも「短くても下手でも手紙が一番嬉しいものよ」って歌ってた。いやでも、クリスマスだし、やっぱちゃんとした物をあげたいなって、手紙はいつでも書けるしさ。

じゃあどうするか。高すぎず、とはいえ安すぎず、ちょうど良い塩梅の。んーそんな需要にベストマッチしたブランドなんてあるかなーんー、なんて考えたら、奥さん、4°Cがあるじゃない。 もうほんと、ちょうどいい。

その中でも3万くらいかな、けっこういいお値段の選んだと思う、我ながら。店員さんも言ってた。「きっとお喜びになられると思いますよ」って。店員さんがそう言うんなら間違いない。


で、ちょっと良さげなフレンチを予約して、その日はお互い仕事だったから仕事終わりに待ち合わせして、意気揚々とお店に入っていったら、隣の隣の席に職場の先輩がいるっていうハプニングね

お前もかよー。って、目が合った時お互い思ったと思う。

しかも、前日に「saiは誰かとデートすんのー」って聞かれて、その時は彼女いることもいってなくて説明も面倒だから「いやー全然ないっすよー先輩はー?」「いやー俺もだわークリスマスつれー」なんて会話してた。学生の試験勉強全然してないっていうけど実はめちゃくちゃしてるみたいなノリが、社会人のクリスマスでもばりばり健在してた。

でもまぁ、ここはクリスマスという聖なる夜で、お互いの空間ってのがあって、互いに干渉されたくもないので、我々は暗黙の了解で互いの存在を消して、各々の世界に浸った。

僕と先輩の間に漂った一瞬の不穏な空気を悟ったのか、彼女も「ん、知り合い?」みたいな雰囲気出したけど、そこは全力でスルーしといた。(あとから実は先輩だったと言った)


で、まぁそんなハプニングも聖なる夜のアクセントにして、乾杯して、お互いの仕事だったり趣味だったり、将来の話だったり、たわいもない話をしながら食事を楽しんで、デザートの前くらいに、頃合いかな?と思って、満を辞して4°Cのネックレスを差し上げたわけですよ。

僕もこの瞬間はね、まさか数年後の未来にツイッターで4°Cがディスられてるなんて思いも寄らないわけだから、何ならどうぞ受け取ってくださいとばかりのドヤ顔で、あげたわけですよ。

したら、彼女、ちょっと泣きそうな感じになりつつ、めちゃくちゃ感激してた。「嬉しい…」つって。こちらの想像を超えてた。その姿、もう天女かな?ってくらい、まぶしくて、透明で、教科書に載せたいくらいのリアクション。それから会うたびつけてくれててね、もう全部が大正解。


それは僕が26歳くらいの頃だったと思うけど、その思い出の4°Cをね、それから数年後、まさかツイッターで盛大にディスる奴が現れるとは思わなんだじゃないですか。しかも、僕の目には入ってこなかったけどどうも毎年クリスマスでディスられてるようなんですが! いやいやちょっと待てよと。僕は彼女とはそれから結婚して、今では妻です。結婚に至るまでの数ある思い出の大事な一つ。そんな4°Cをね、まぁ年齢相応とかそういう言いたい気持ちもわからないでもないけども、貰っといて文句いうのは、やっぱりどうかな。


好みかもしれないと色々考えてくれたかもしれないじゃん! お金ないけど、何とか捻出して、相手が喜んでる姿とか想像しながら選んだかもしれないじゃん! それをネットで「あの、貰っといてなんなんですけど、さすがにちょっとこれは…」とか言っちゃうのは、どうなん?って話ですよ。

そしてそれをもし、贈り主が見ちゃったらどう思う?

僕だったら、ちょっと生きていける自信ない。確実にHP0になる。全集中で無呼吸になる。いかなる回復呪文も受けつけない。蘇生も不可。

それに僕みたいに、そのブランドが思い出になってる人もいると思うから。

だからつまり、贈り物は、たとえ期待を超えなかったとしても、想像と違っていても、選んでくれた、贈ってくれた、って気持ちを持とう。たとえ花束一本でも、選んでくれたのなら、嬉しいじゃないですか。贈ってもらった物にケチをつけるのは、あなたの価値を下げてしまうだけだよ。


ところで、僕が数年前にあげたその4°Cのネックレス、妻、今はぜんぜんつけてないです。正直どこにあるかもわかんない(ちゃんとどこかにあると主張している)。

でも去年初詣に出かけてふらっと入った雑貨屋で何気なく買った1,500円のネックレスを、なぜかずっとつけてる。

妻、4°Cさえも、やっぱちょっと高級品だったみたいです。


▼ツイッターやってます。


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