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タイムカプセル20240831

姪っ子が学校へ行きたくないらしい。

君のかーちゃんからそれを聞いたのは私が右足首に湿布を貼っている時だった。
 
人生において通算三度目の右足首の捻挫だ。
スポーツ選手なら故障者リスト入りしてトレーナーの治療を受けることが出来るかもしれないが、誰にも夢も希望も与えない人生を肥満で生きている人間にとっては湿布一枚で無理をするしかない。もちろん心配してくれるファンもいない。ただ「痩せろ」というヤジは飛んできた。振り返れば身内だった。

正直、今回の捻挫に体重は関係ないと思っている。
姪っ子の夏休みの自由研究に助っ人として駆り出されて、一緒に行った公園で大きな蜂と遭遇し、慌てて逃げる途中、踏み出した一歩を踏み外して右足首をグニャリした。
文字にしてみると我ながら情けない。
右足首の捻挫の歴史は一度目が小学生の時、鬼ごっこをしている最中にグニャリ。矢野君に肩を貸してもらって保健室まで行ったことを覚えている。二度目は高校生の時、体育の授業でバスケをしている最中にグニャリ。さらにその後に味方に踏まれてグニャグニャリ。一週間、松葉杖をついて過ごした。そして今回は蜂でグニャリだ。
「グニャリ」という擬音はきっと私の右足首のために生まれてきた言葉なのだと思う。
 
いいか姪っ子よ。君と同じように学校へ行くのが嫌で嫌でしょうがなかった私の右足首にもこんな歴史があるんだ。君のこれから先の未来にはどんな歴史が生まれるのか、私は楽しみでしょうがない。
 
君が生まれた日の事をよく覚えている。雪が降ってとても寒い日の朝だった。私にとっての姉で君にとってのかーちゃんはもちろん、ととも、じいじも、ばあばもみんな君が生まれてくるのを心待ちにしていたんだよ。

はじめて抱っこした時、両手にすっぽりおさまるくらいの大きさでこの世にこんな愛しい生物がいるのかと思ったよ。
子を望めない私にとって君が生まれてきてくれたことは本当に嬉しいことだったんだ。
 
正直にいって今、私が君のために出来ることは何もないかもしれない。でも、約束するよ。これから先いついかなる時もずっと君の味方でいる。どんな道を歩もうと君の歩いた歴史を尊重する。
勝手に約束してここに埋めるよ。

いつか君がもっと大きくなって、ここを掘り起こす時が来たとしたら、その時、私が約束を守れているか答え合わせしてみてくれ。
その時は私の右足首が無事であるといいな。

#未来のためにできること

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