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インターネットからは見えないもの

伊之助ボディ腹筋ローラーさんの記事を昨日書いていてインターネットとはやはり専門特化のメディアなのだなということを強く再認識しました。

多少失礼なもの言いになってしまうかもしれないのですが、端的に言ってしまえば彼に求められているのは腹筋ローラーだけであり、その他の要素が徹底的に消されていたからこそ、マーケティング的な意味では大成功したのだろうと思います。

彼が仮に、毎日の腹筋ローラーに交えて書評だったり映画の感想だったり、ニュースに対する意見などをつぶやき続けていたら、恐らくですがこれほどの注目を集めることはできていなかったでしょう。

旧来のマスメディアがプッシュ型のメディアであり、インターネットの世界はプル型のメディアというのはかなり昔から言われていることですが、まさにこの話がぴったり当てはまります。

プル型とはすなわち、自分が求めている情報を能動的に調べて取りに行くことです。旅行が気になっている人は基本的に旅行の情報にしか興味がないわけですし、ダイエットが気になっている人はダイエットの情報だけを求めてインターネットをさまようわけです。

家族や友人でもない限り、自分以外の人の好き嫌いや人となりに対して総合的に興味を持つなど不可能なもので、ましてやインターネットの世界で匿名の顔も知らない相手の一体何が知りたいかというと、その人の専門性以外にないわけです。

伊之助腹筋ローラーさんの人気を確変状態に持っていったのはほぼ確実にポメラニアンのエマちゃんなのですが、とはいえ犬はあくまで脇役です。

かわいい犬のアカウントなんてものは世の中にごまんとあるわけで、彼自身のストイックなトレーニング姿勢があるからこそポメラニアンのあざとさは良い意味で中和され、純粋な愛らしさでメインコンテンツを引き立てるピッタリの脇役になっているのでしょう。

伊之助腹筋ローラーさんは腹筋ローラーをしている姿が求められているのであって、別の要素はノイズになるわけです。ゲーム実況YouTuberが突然食レポを始めても再生回数が伸びないわけで、だからこそ彼らはゲーム実況に絞って取り組むわけです。

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自分の専門性を自覚し、一つのことに打ち込んで生きる生きざまというものは実際美しいもので、大谷翔平選手が野球ばかりを追い求めて生きるのも、藤井聡太竜王が将棋ばかりを追い求めて生きるのも、多くの人のあこがれの的になっています。

彼らのようなスーパースターではない一介のビジネスマンであっても、キャリアの観点・商売の観点から考えると、皆どこかで自分の専門性を定めて、能力や付加価値を磨きつづけていくことが必須であるということは言うまでもないでしょう。

しかし世の中の多くの人、いやほとんどの人にとって、生活は多様なものであり人生には寄り道や回り道がたくさんあるものです。専門性に向かってまっすぐ一本道という人生はおよそ考えにくく、それこそスポーツエリートや研究一筋の学者などでもない限り当てはまらないのではないでしょうか。

インターネットはプル型のメディアであり、専門家がオーディエンスを総取りする世界です。SNSで目立つのは、一つのジャンルばかり徹底的にこだわり、専門業者のような情報発信を行うアカウントです。

逆に言えば、生活における様々なコンテンツを厳密にジャンル分けし、自分が専門として発信するジャンル以外の情報を敢えてひたすら捨象していくことこそが、インターネットにおける発信活動において重要になってくるといえるでしょう。

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多かれ少なかれ、人間は生活の大部分をインターネットに接続して生きるようになっており、世間的な常識もまた、インターネットに寄り添った常識になりつつあるのだろうと感じています。

何が言いたいかというと、インターネットに記された捨象された情報をもとに、人を単純化してとらえてしまうことが怖いということです。

情報発信における捨象の重要性は事実として認識しつつも、インターネットの向こう側にいる人間には捨象された多様な生活があり、捨象された人生の寄り道や回り道といったものがほぼ例外なく存在することでしょう。

インターネットに頼りきりの生活を送っているからこそ、インターネットからは見えない部分に想像力を働かせ、相対している人の全体像を見失わないように生きていきたいと思います。


とりとめのない文章になってしまいましたが、本日は以上です。
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それではまた次回。

2022.3.3 さいとうさん


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