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マッチングアプリという自由競争市場で戦略的恋活をしてみた【日常のコンサル思考】

「ここにはアダム・スミス時代の自由競争市場がある」と、ある種の感嘆を覚えたのは、マッチングアプリ『タップル』にプレイヤーとして参加したときのことです。要は恋人欲しさに会員登録しました。登録した途端、来るわ来るわ「いいかも(「いいね」のタップル版です)」の嵐…。もちろん、その「いいかも」の裏側では、通知されないだけで、大量の「NG」もあったと思います。
男女が互いに欲望剥き出しで、好みの異性に「いいかも」を送り合うのは、恋愛競争市場とも呼べる、原始的な売買取引の様相で、大変興味深く感じたものでした。

「この自由競争市場で、経営戦略論やマーケティングの理論を応用したら、入れ食いなのではないか?」

そんな学術的興味から、私は戦略的に恋活を始めたのでした。

1.まずは何はなくとも市場調査

タップルでは、競合である同性会員がどのような写真・プロフィールを使っているか、見ることができません。Googleで「タップル 女性会員」で検索し(申し遅れましたが筆者は女です)、おおまかなユーザーの年代層や、人気会員の週間のいいかも数、プロフィール画像イメージを把握しました。

すると、20代が最も多く、次いで30代だそうです。また、やはり若い女性に人気が集まるようです。トップクラスの人気会員になると、週間で5000を超えるいいかもが来るとのことでした。

2.SWOT分析で自身の取るべきポジションを明確化

中小企業診断士試験では真っ先に勉強する、SWOT分析。マッチングアプリは、割と単純な市場環境なので(参加者は原則的に売買プレイヤーのみ)、分析もシンプルな手法を採用しました。

・強み:目標達成に貢献する組織(個人)の特質。
・弱み:目標達成の障害となる組織(個人)の特質。
・機会:目標達成に貢献する外部の特質。
・脅威:目標達成の障害となる外部の特質。
引用:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/SWOT分析

この4つの観点から、目標達成のための自己・環境分析を進めます。

目標:相性が良く、惹かれる男性とマッチングし、交際する
①強み:半年前に奇跡的に撮影できた詐欺自撮り写真がある
②弱み:30代女性であり、20代女性よりも需要が落ちる
③機会:新規登録会員は露出量が多く、いいかもをもらいやすい
④脅威:20代女性の競合が多い

ここから導き出される戦略は、「年齢よりも別のスペックを重視する男性と、一週間以内にできるだけ多くマッチングする」でした。

3.ターゲットの明確化

「相性が良く、惹かれる男性とマッチングする」ことが目的ですが、これでは、ターゲット像が曖昧です。ペルソナとまでは言わないものの、もう少しターゲットを明確にします。

・外見:清潔感と異性としてのチャーミングさを感じられること。感性の問題なので、これ以上の言語化は不可能。
・年齢:歳上であること。社会経験が豊富で、精神的に落ち着いている方が好みであるため。
・職業:ホワイトカラーであること。仕事における苦労や価値観を共有するには、一定の類似性がある働き方をしている人が望ましい。
・年収:自分より高いこと。歳上であることも踏まえ、社会的に一定の成功を収めている方から刺激を受けたいため。
・趣味:共通する趣味があること、また、趣味が良いなと思えること。完全に趣味が異なると、好きになるもの=根底の価値観が異なる可能性が高い。
・性格:一般的な礼節がありながらも、楽しいコミュニケーションが取れること。

…なんだか恋愛相手というよりビジネスパートナーを探しているような内容になっている気がしますが、気のせいです。

4.AIDMAのプロセスを踏んだプロフィール作成

AIDMAの法則では、消費者がある商品を知って購入に至るまでに次のような段階があるとされる。
1.Attention(注意)
2.Interest(関心)
3.Desire(欲求)
4.Memory(記憶)
5.Action(行動)
引用:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/AIDMA

上記プロセスを意識して、プロフィールを作成します。

1.Attention(注意)→半年前に奇跡的に撮影できた詐欺自撮り写真
2.Interest(関心)→プロフィール文で「どのような男性を求めているか」を最初に明示、「これ俺のこと!?」と刺さった人に関心を持たせる
3.Desire(欲求)→任意登録のスペック(出身や年収、趣味など)、可能な限り情報を公開する
4.Memory(記憶)→×マッチングアプリでは「持ち帰って考える」はないため、割愛
5.Action(行動)→「いいかも」を押してもらう

5.最終的な量的成果

新規登録後、一週間で約2000いいかもをもらい、メッセージのやり取りまで発展した男性は10名程度でした。30代女性であることを踏まえると、悪くない成果ではないでしょうか。ただ、正直言えば、女性会員であればこんなに戦略立てなくても普通に大量にいいかももらえます。完全な売り手市場です。

ぶっちゃけると、登録10分後に「スーパーいいかも」を押してくれた方に、最初から落ちていました。

タップルには、「スーパーいいかも」という機能があります。普通の「いいかも」と違うのは、「通常のいいかもの50回分を使用して、相手につけられるマッチング希望機能であり、これをつけられた相手は「OK」「NG」を回答するまで他の操作ができなくなる」という強制性があることです。男性が女性にスーパーいいかもを送るには、課金しないとダメらしい、とも聞いています。とは言えスーパーいいかもを送られた側は、NGを出すこともできますので、必ずマッチングするようなものではありません。実際、Google検索しても、「あまり効果ない」と謳っている記事が多いです。

ただ、実際に送られた側からすると、これがめちゃくちゃ嬉しい。しかも会員登録10分後。もう運命でしょ。ソウルメイトでしょ。

実際、その後、別の男性からスーパーいいかもをもらうことはありませんでした。差別化成功しすぎやろ。

そんなわけで、最初の10分で控え目に言って99%心が固まっていたのですが、「原始的な自由競争市場のプレイヤームーブしたい!!」という肉食な一面が出て、一週間ほどは真面目に参加してました。その後すぐにアプリに飽き…もうほぼ心は固まっているのに、他の方とあまり長々とメッセージをすることも良くないと思い、活動を辞めたのでした。

現在は、スーパーいいかもを送ってくれた方と、楽しくお付き合いしています。

結論:恋愛は競争によって勝ち取るものではなく、運命によって導かれるものである。

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