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インディ・ジョーンズの進化と苦悩「運命のダイヤル」で見せる驚きと決断

「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を観た。

事前の、そう高くない期待に比べれば、とてもよかったと思う。
「なぜ、いま、また、インディなのか」と思っていたが、見終えてみると本作はインディ・ジョーンズの後年を可能な限り美しくフェードアウトしてみせた作品だと感じる。

中盤までの「相手を追う」「追ってから逃げる」と言ったお約束アクションの応酬が(シリーズの系譜だと分かっていても)少し退屈に感じられたものの、終盤のあの展開は嫌いになれない。

最高なのは、一線を越えた先をクライマックスとしてたっぷり見せてくれたこと。
「まさか本当に来ちゃった」という驚きと、事態に巻き込まれる中、どうやって切り抜けるのが正解なのか分からないドタバタっぷりを見せる。行きつくところまで行ききった解放感という意味で、このシーンを内包する『運命のダイアル』は観て良かったと思う。

最後の決断は、観ている側としても正直揺れた。
どちらの意見に対しても賛否の感情を抱く。
常識的に考えて判断すべきか、老い先短い彼の逃避の混じった意思を尊重すべきか。
月旅行をする宇宙飛行士が全世界から憧れの目で見られ、帰還すれば盛大なパレードで迎えられるような、未来を夢見る世の中で、歴史にこだわり時代から取り残されている老人考古学者インディ・ジョーンズにとって「どっちが幸せなんだ」と胸が痛くなる。

映画では、彼の知人親類として真剣に考え、取るべき最良の判断をしたと思う。それは我々観客の目線に近いような気もする。
そもそもインディは、過去にもずっと同じ決断をしてきたし、それがクールに映ってきたわけだし、これまでの考古学者であり冒険家として追うべき謎を見つめる視点をブラすことは無かったのだから。


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