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2024/02/05

去年の今頃、2度目のオーバードーズで緊急入院をしていた。1度目は一昨年の12月だった。
短期間で繰り返したオーバードーズは私の躁鬱を急激に悪化させた。でも2度も助かってしまったので、3度目の自殺未遂は格好悪くてもう出来ないなぁと思った。
副作用か後遺症かはっきりしてないけど、体重がかなり増えた。仮想的に自殺するために坊主にした。外に出るのが恥ずかしくなれば、オーバードーズはしないだろうと考えた。
可愛くなりたいと願えば、生まれ変わったように生きられると思った。

その冬をなんとか生き延びて春に障害年金の申請をした。申請するにあたって、診断書をもらって自分の病歴をまとめた。
職場でのセクハラが主な原因の適応障害から始まったはずなのに、いつの間にか双極性障害に変わっていて統合失調症も併せ持っていた。
ここまでひどくなっているとは思わなかった。
申請が無事に通って夏から年金が振り込まれることになった。
会社が認めてくれなかった加害性を、国が認めてくれたことは大きかった。
私は、友達に会いに旅行やライブへ出かけられるところまで回復した。

そのままの体調をキープして秋に誕生日を迎えた。もう少し耐えればオーバードーズから1年経過して、そうしたら「もう大丈夫」と思えそうだった。
だけど11月の診察で冬季鬱と診断された。病気は一進一退するものだけど、良くなっているとばかり思っていたからショックだった。
冬季鬱と言われたら、どんどん冬季鬱になってしまう。ご飯以外は自分の部屋から出られなくなった。お風呂も無理しないと入れなくなった。
うつ状態、ずっとベッドの中でYouTubeばかり観ていた。主に未解決事件や太平洋戦争末期の解説動画を観ていた。それらに飽きた頃にM-1グランプリの3回戦のネタが配信されていた。
お笑いはそこそこ好きだった。小学生の頃は毎週叔母とエンタの神様を観ていたし、中学生の頃はキングオブコントもM-1も観るようになっていた。高校生の頃は通学中にラバーガールやうしろシティのコントと磁石の漫才をウォークマンで聴いていた。藁にもすがる思いでお笑いを頼った。面白いと感じられて笑うことができたら、冬季鬱でも安心できると思った。
ネタ動画で初めてたくろうを知った。飛び降りを止めるというネタだった。つかみの「眼鏡でパーマのきむらバンドと」「モラルの欠如、赤木です」でかなりの衝撃を受けた。心を鷲掴みにされた。
急いで巻き戻してもう一度つかみを観た。つかみも風貌も、改めて見てこの人たち絶対に面白い、と思った。
時事ネタというかトラウマを思い起こしかねないというか、なんだか難しそうなネタをよくやるなぁ…とも思った。でも、挙動不審に見える赤木がきむらバンドの自由奔放なキャラに振り回されているのは観ていて面白かった。無理せず自然に声を出して笑っていた。今まで塞ぎ込んでいたのが嘘みたいに、当たり前のように、笑った。本当に面白かった。
「実家に引きこもってぶくぶく太って、あんな奴はおまんじゅうです。おまんじゅう野郎。か、肉まん野郎のどっちがいいかというアンケートを取ってまして…」というセリフに、実家に引きこもってぶくぶく太ってるってまさに私のことだなぁ、でも発想ひとつでこんなにおかしくなるんだなぁ、と思った。
重く受け止めていたことも面白くすれば軽くなることがあるんだ、と気づいたらめっちゃ元気になった。
私の人生の出来事は悲しくても、たくろうを観てもっと笑いたいと思った。

それからたくろうが出ているYouTubeを全部観て、赤木のコラムも全部読んで、きむらバンドのInstagramも全部見た。
よしもとの会員サービスFANYに入会してライブを観るようになって、ラジオも毎週聴いている。ラジオには欠かさずメッセージを送っている。

療養生活に嫌気がさして疲れて落ち込みそうになっても、たくろうに絡めて考え直す。
私はおまんじゅう野郎か肉まん野郎か、どっちがいいかといまだに迷っている。
気に病んだ出来事もラジオ番組へのメッセージとして人に伝える工夫をすればなんてことないな、と思える。
私もつかみを思いつきたいと考え込んでるうちに、何に悩んでいたのかすっかり忘れたりする。
ネタを引用して気持ちの代弁をしてもらったりもする。

私の毎日にたくろうがどんどん溶け込んで、なくてはならない存在感となって、日常がものすごい勢いで彩られている。

躁鬱なのも事実だけれど、面白いと笑えることもまた事実である。それがすごく嬉しい。

たくろうを面白いと思えることが、とても楽しい。
たくろうのおかげでドキドキワクワクすることが増えた。

ずっとお笑いをやってきたきむらバンドと、お笑いをやるしかなかった赤木がコンビを組むなんて、なんてロマンチックなんだと運命みたいなものにうっとりする。

たくろうのネタも2人の会話も面白くてしょうがない。

面白いことはすごいことだと思う。
生きる上でなによりも大切なことだと思う。

思慮深い人は面白い人だと思う。

面白い人ほど、いい人だと思う。



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