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キャリア・ネットワーキングイベントに参加して

今週は"International Women's Day 2022"の関連イベントが連日開催されていました。この"国際女性デー"は私自身イギリスに来るまでは聞いたことがなく,2年前の2020年3月8日に初めてそのような日が設定されていることを知りました。

毎年3月頃になると,世界中の大学や研究機関,企業,カウンシル他,SNSなどを通じて関連する投稿や記事,イベントをたくさん目にしました。日本でも,理化学研究所などの研究機関で国際女性デーに関連する内容がSNSで投稿されていました。

なお,2月11日は"International Day of Women and Girls in Science"とされていて、今年は特にSTEM分野(Science,Technology,Engineering,Math)の女性をencourageするような記事をたくさん目にしました。

2020年のテーマ

この年の公式テーマは"I am Generation Equality: Realizing Women’s Rights"で,ハッシュタグに使われたのは#GenerationEquality。多くの人が腕で「=(イコール)」のポーズをとって写真を投稿していました。

おそらく,キャンパス内や大学でも多くのイベントが開催されていたであろうと思われますが,この日の意味や背景をギリギリまで知らなかったため,意識することがありませんでした。多くの大学や研究機関がSNSで#GenerationEqualityと発信していたので気になって調べたところ,イベントなども各地で行われていることを初めて知りました。

2021年のテーマ

COVID-19パンデミックが始まってちょうど1年後となったこの年の公式テーマは"Women in leadership: Achieving an equal future in a COVID-19 world"で,ハッシュタグに使われたのは#ChooseToChallengeでした。

投稿された多くの写真では,笑顔で挙手してる人がたくさんいましたね。まだ多くの国でSocial distance等の制限があったせいか,zoomとかのオンライン会議で手を挙げている記念写真を撮っている投稿も多く見かけました。この年は大学でも関連するオンラインイベントも開催されていました。

2022年のテーマ

そして今年の公式テーマは”Gender equality today for a sustainable tomorrow”で,ハッシュタグに使われたのは#BreakTheBiasです。みんなが手をクロスして写真を投稿していましたね。Biasをなくそうというメッセージが良く伝わってきました。

この年は大学とHarwellキャンパスの両方でイベントが開催されていて,可能な限り参加してみることにしました。そして忘備録もかねて書けそうな内容だけざくっと。

参加したイベントの紹介

最初に参加したのは,Early careerもしくはPhD学生(女性)を対象とした大学主催の"How do you become a future leader? (Women early career researchers only)"というオンラインワークショップです。このワークショップでは,自身の分野でリーダーになるために考えるべきことを実際の言葉に起こしていくというものでした。インタラクティブな会にするために,モデレーターの方がzoomでポールを立てたり,Webサイトでリアルタイムアンケートを取ったりしながら進められました。

アイスブレイクの後は,"Handout - Becoming a future leader"が配布され,30分間与えられて次の項目を埋めていくというものでした。

1) What’s the research challenge you want to address?
2) Why is it important? The Big Picture
3) What do you need to become a leader in your field?

さらに細かい設問もありますが,とにかくこれらを文章で書いていきます。

1)はそれっぽく書くことができましたが,2)と3)はその場ですぐちゃんとした文章にできず,少し落ち込んでしまいました。特に2)のThe Big Pictureとは,10年先までを考えるというものです。これまで2-3年先の研究提案(フェローシップやグラントなど)をすることがあっても,10年というタイムスパンでプロジェクトを考えたことがなかったからです。3)に関してもそれっぽいことは思いついても,具体性には欠け一般化しすぎている。今回のワークショップを通じて,普段から考えておくべきことを具体的に知れたのは大きな一歩だったと感じています。

次に参加したのはHarwellキャンパスで開催された"Harwell Women in Tech: Confidence in the Workplace"というオンサイトイベント。3名の講師による話題提供がメインで,前後にネットワーキングの時間が設定されていました。話題提供してくださった3名の方はバックグラウンドも内容も全く違っていて,かなりセンシティブに感じるような内容も含まれていました。講演後の交流会では,参加者個々が現在の職場で感じていることなどを意見交換のような形で議論が出来たのは新鮮な経験でした。

参加者はキャンパス内の民間企業に勤務されている方や近隣大学のPhD学生など,これまで交流する機会が全くなかった人たちと繋がりが出来たので,それも楽しく良かったです。なお,講演はYouTubeでライブ配信され,アーカイブが見れるようになっています。

別の日には,Harwellキャンパスで開催されたオンサイトでのネットワーキングイベント"What is Harwell NextGen: Ideas and Inspiration Event"にも参加しました。目的はHarwellキャンパスで働くEarly Careerの人たちを繋ぐためにはどうすればいいか?という主題に対し,3つのグループに分かれて話し合いを行いました。

Harwell NextGenをもっと知ってもらうためにはどうすればいいか?どのようなイベントや取り組みがあるといいか?どのような施設があるといいか?などの案をひたすら出し合って,紙に書いていくというスタイルでした。エンタメから家族ぐるみで楽しめる科学イベント提案などがあり,考えるだけでもワクワクするし,何よりみんな本当に楽しそうでした。

このイベントでは,Diamond(放射光施設),ISIS(中性子ミューオン施設),STFC(レーザー施設)に所属する方が多く参加されていたので,SPring-8で勤務していたことが良いネタになりました。また有難いことに,RALで働くEarly Careerの人たちのグループチャットにも入れてもらい,良いネットワークを築けたかなと思っています。ちなみに,翌日早速〇時に△△パブで飲もう!と連絡が入ったのは驚きました。遅くまで実験があり行けなくて残念。

最後に参加したのは,大学主催のインライントークイベント"In Conversation with Academic Women"。3名の女性PIの方がご自身のキャリア体験談をシェアしてくださって,質問を自由にできる座談会のような形で開催されました。いつPIになることを意識したのか。国を跨いた移動を決どのように決意したか。リーダーになるために同のように動いたか。迷いや葛藤。などなど。

バリバリで活躍されているPIの方々からシェアされた内容は,どれも私たちのようなEarly Careerの人と同じような悩みをかつて抱えていたこと,その中でどのようにモチベーションを維持してきたかなど,とても響く体験談が多くありました。なぜPIになったのか?という質問に対して,これはPlan Bだったと話されていた先生もおられて,これには少し驚きました。必ずしも早い段階からPIを目指していたわけではないと聞いて,あらゆる可能性は残して選択肢を多くしておくのは大切なことだと改めて感じました。

イギリスにはいわゆるポスドク用のフェローシップがない代わりに(ヨーロッパのEMBOやMarie Skłodowska-Curieなどは応募可),Wellcom TrustやUKRI関連の各分野のカウンシル,各大学による独立フェローシップがあります。PIの方々がどのタイミング(ポスドク歴,業績,自分の研究を確立)でこれらのフェローシップやLecturerのポジションへ応募することを決めたか,考えたことなどの体験談をシェアしてくれました。

印象に残っていることとして,どの先生も「自分ができるのか(どのように寄与できるのか)」よりも,「自分はなぜそれをしたいのか」を考え,表現することが何よりも大事だと話されていました。公募に出す際も,研究実績はもちろん重要であるが,それだけではなく分野のマッチングやその他のcriteriaも同様に重要視されるため,その辺りもしっかりと見ていくと良いとアドバイスがありました。

今回の話題提供者に日本人の先生が一人おられて,国や研究場所が変わるたびに文化や環境の違いに適応しなければならず,それには一定の時間がかかると話されていました。これは他のPIの方々も同じだと話されていて,私だけがイギリスに来て慣れるのに時間がかかり,大変だったというわけではないことも知れて少し気持ちが楽になりました。

感じたこと

どのイベントもオンラインもしくはオンサイト開催,また1-2時間くらいだったので時間的にも参加しやすかったです。

私自身の生活と研究の両方に関して,これまで与えられた環境の中でどのようにすればいいかを考えて行動することが多く,何かを変えていくと強い意志を持って行動したことがほとんどなかったと気づかされました。自分の言葉でぼんやりと何かを語ったり,理想を描くことができても,結局それはその時の自己満足で終わっていました。

例えば,パッとお題(話題)を出されて,そのテーマについて自分の考えを述べる時でも,差しさわりのないようなぼんやりとしてことを言うことが多かったと思います。研究に関しては自分の考えを言えている方(だと思うの)ですが,キャリアなど他の話題になるとはっきりと言葉で言い表せないことが多いです。普段から"きちんと考えながらそれらを具体的に(かつ一貫性をもって)言葉で表現する","強い意志を持って行動を起こす"ことが何よりも大切で,私自身の今後の課題として見つけることができました。

一方で,自分が不安に感じていたことや違和感を持っていたことに対して,特に解決しなくてもシェアできる機会があったのはとても良かったです。今の私のいる環境では,偶然に出会った国籍もバックグラウンドも違う人たちと,サイエンス以外の話をする機会はそれほど多くはないので,私にとって大変意義のある会に参加できたことは嬉しく思っています。

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