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【日記】魔法の箱を手に入れた

あなたにとって、「カメラ」とは何ですか?

そう尋ねられたら、「自分の見ている世界を誰かにおすそ分けできる、魔法の道具です」と私は答えるだろう。

カメラとの出会いは、小学校3年生くらいのころ だった。

そのころはちょうど「お絵かきブーム」の
真っ最中。休み時間になると、女の子たちは
こぞって自由帳にかわいいイラストを描いて、
互いに見せ合っていた。

自由帳に鉛筆をすべらせて輪郭を描き、
ボールペンや色鉛筆で白黒の世界に色をつける。

友だちが見せてくれるその一連の流れを見て、
「ああ、〇〇ちゃんたちは、魔法使いだったんだな」なんて思っていた。

「描くとこ、もっと見せて!」とお願いすると、
友だちは決まって、「凪海ちゃんも描いてみれば
いいじゃない」と言う。
でも、できなかった。
絵を描くのが下手っぴだったのである。

友だちと同じように絵を描こうとしても、
この手から生まれるのは、手や足がアンバランスな人間や、胴が異常に長く足が短い動物だけ。

みんなと同じ道具を使っているのに、
なんで、私だけできないんだろう?

私だって、みんなみたいに、
自分だけに見えている世界を自由に描いてみたいのに。

白色の色鉛筆がだんだんすり減っていくような日々を過ごしていたある日、父がお下がりのデジタル
カメラをくれた。

初めてのカメラで何を撮ったかは覚えていないが、写真を撮ってデータを見た瞬間、びっくりした。

この四角形に、私がみんなに見せたかったものが
全部詰まっている、と。

それ以来、散歩やお出かけ、旅行など、どこかに
行くときはカメラと一緒に行くようになった。

そして、撮った写真を印刷して学校に持って行き、みんなに見せることにしたのである。

イラストの代わりに写真を見せたら、
「写真撮るの上手じゃん!」
「ねえねぇ、この写真私にもくれない?」と
褒められるようになって浮かれてしまった。

なんだ。
無理に、みんなと同じことができるようにしなくても良かったんだ。

もし何かが苦手なら、その分得意なもので補えば
いいんだ。

そこから写真にはまってしまい、今ではデジタル
カメラの代わりにスマホのカメラで、
世界を切り取っているというわけである。











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