東京から始まり、東京から始まる。
2020年の初旬。混沌が始まってから約2年。
ようやくこの時が来たと感じた3月6日でした。
人と距離を求められるようになり、孤独との戦いを強いられる。
数年ランニングを続けている身でも、この苦行には耐え難かった。
「ようやく、この試練から抜け出せそう」
3月6日開催された東京マラソンは、そんなことを感じる日になりました。
この記事では今回の東京マラソンに向けての取り組みから当日のレースのこと、特に栄養戦略についてまとめてみます。
今後、マラソンを走る予定の方には力になる内容かと。また、なぜランニング・マラソンをするのか?と疑問を持つ方にも是非読んで頂きたい。
試行錯誤の2年間
目標と"人の目"
外での運動すら制限された2020年。
大会はもちろんのこと、公園で走ることも難しい時期がありました。
明確な目標もない。一緒に切磋琢磨できる仲間もいない。
東京マラソン2020が中止(エリート選手のみの開催)になってから、私も走る習慣が途絶えそうな期間が続きました。
そんな時に声をかけて頂いたのが @Sushiman さんでした。
Sushimanさんの指導、応援の下で数か月間、これまでとは違ったアプローチでトレーニングを続けていきました。その結果を昨年、このnoteで記録しました。
夏のトレーニング
ハーフマラソン、フルマラソンを自分ひとりで行い、次に目指したのが2021年10月に開催予定だった東京マラソン。
これまで秋に出場したマラソンは、早くても11月初旬でした。そのため、練習のピークは少し涼しくなってきた頃にできたので、そこまで苦慮することはありませんでした。
しかし、東京マラソンの開催日は10月。マラソン練習のピークを夏の最も暑い時期に行わないといけません。そこで様々な工夫をしました。
朝5時からほぼ空腹状態でポイント練習を行ったり。
合間を縫って少しでも走りやすい環境にわざわざ走りにいったり。
しかし、2021年10月の大会も事実上の中止に。今回の3月に持ち越しという形となりました。
戻ってきた東京マラソン
3度の東京マラソン "中止" を経て、ようやくこぎつけた今回のレース。大変難しい判断だったかと思いますが、開催に尽力して頂いた関係者の方々には何と申し上げてよいのか。私からは心の底から「ありがとうございました。」と申し上げるしかありません。
今回は準エリートでの出場でした。最前列のブロックに整列でき、さらにこんな素晴らしい景色にも巡り会えました。
リズムを保つ
沿道からの声援は自粛を求められたこともあり、モチベーションでガンガン走るというよりも集中して走ることがより求められました。
何に集中したかいうと "リズム" です。
マラソンのように心地よく、長く、速く走るには独特の "リズム" があると感じています。
今回の東京マラソンを走った新谷さんとコーチの横田さん、EKIDEN Newsの西本さんが対談の中でランニングの "リズム" について以下のように答えています。
私の設定ペースは3分36秒〜33秒/kmとしていました。4km地点あたりで3分30秒/kmの大集団に抜かれ、それに着いて行くことも考えました。しかし、どうもしっくりくるリズムではなく、2kmほど並走してから離れる決断をしました。
歓喜のFINISH
その後は終始単独走。
それでも自分の"リズム" に乗れ、落ちてくるランナーを一人ずつ抜いていくことで気持ちも前向きに維持できました。
何より、少しずつきつくなってくるハーフ以降で35㎞まで並走させて頂いた宮原さんは今回のレースの恩人です。
結果は2時間30分40秒。
これまでは昨年記録した2時間34分48秒でしたので約4分更新。
後半もほぼペースを落とすことなく、ほぼ100点満点のレース内容でした。
栄養戦略
このような結果にたどり着くまで、今回様々な栄養戦略を講じました。
管理栄養士という仕事柄、自分で試してみなければ気が済まないのもあり。
夏のトレーニングや走行距離の増加など、この2年間はこれまでのトレーニング方法とはガラリとやり方が変わりました。
トレーニングが変化すれば栄養補給も変える必要があります。
私が東京マラソンに向けて行った栄養戦略についてまとめてみます。
マクロ的戦略
■体重を増減させる
基本的な考え方としては、体重が増えている時は栄養過多傾向にあり、減っている時は栄養不足傾向にあります。
10月から→12月まで「増量期」として栄養補給を多くしました。それもあり、体調を崩さずにハードなトレーニングをこなせました。
なお、期分けについてはこちらの記事が大変分かりやすくまとめられていますのでご参照ください。
実際、この期間中は怪我などで調子を崩すことはなく、ヘモグロビン値も体重と比例して右肩上がりでした。
■ "レース食" を実践
レース直前や当日の食事は、普段食べてる食事とは異なったものを食べる時が多いでしょう。カーボローディングや補給食はのような "レース食" は量や質が普段の食事と大きく異なります。そのため、身体の状態もどう転がるかはわからないものです。
本当に良いパフォーマンスに繋がるのか?
問題なく走れるのか?
レースの内容に近い練習(フルマラソンであれば、レースペースに近いロング走など)時に "レース食" を何度か試しました。
そういった経験もあり、当日の朝食などでは清々しい気持ちでいれたように思えます。
レース数日前の調整
■段階的なカーボローディング
レースに近づくにつれて緊張感が増してきます。前夜は寝付きが悪くなることもしばしば。
"カーボローディング" のような糖質たっぷりの食事は概ね消化吸収の負担が大きくなります。ストレス状態の身体では消化吸収能力が低下してしまうので、レース直前の食事が消化不良にならないように段階的に減らしていきます。
そうすることで、より快適な状態でスタートできるようなります。
当日
■朝食
今回は自宅から出発できることもあったので、朝食はお餅5個にしました。前述のレース直前の食事になるので、消化に負担のかからないもので餅にしています。
朝食に餅を食べることは距離走の日も同じように取っていたので「これで大丈夫」という自信にもなりました。レースの後半の大きなペースダウンも無かったので、全体的なカーボローディングは問題ない調整ができたように思えます。
■レース中の補給
エイドの水分補給は基本5㎞刻みにあるスポーツドリンクを5㎞毎に1杯取りました。水も2.5㎞刻みでありましたが、取ったのは1回程。飲み過ぎもトイレが近くなったりするため、必要最低限の量に留めました。
また、レース中のエナジージェルは3種類を以下の地点で取りました。
22㎞付近:DNS エナジージェル
32㎞付近:モルテン GEL100 CAF100
スポーツドリンク・ジェルをほぼ同時にたくさん取ってしまうと、腹痛を起こす可能性が高まります。補給5㎞刻みでエイドのスポーツドリンクを取るため、その間のタイミングでエナジージェルを補給するようにしました。
課題
唯一の課題はやはりレース当日の尿意でしょうか。
従来、脱水による影響が考えられるレースでは、事前に十分な水分補給が推奨されています。普段の練習でも同じような取り方をしていましたが、やはりレースでは何かが違うようで、何度もお手洗いに駆け込むことが多かった。
緊張感や、薄着でいる時間の長さ。
これらが練習とレースでの違いであり、尿意を催す要因になるのだと思います。もし、水分補給をしなくてもパフォーマンスが変わらないのであれば(特に冬場のフルマラソンで)、事前の水分補給は消極的でも良いのかもしれない。今後の検討課題としていきたい。
これから始める
「なぜ、マラソンが楽しいと思えるのか?」
「なぜ、ランニングを続けているのか?」
私のようにストイックに励むランナーはよく質問されることです。
私自身、その理由はたくさんありますが、やはり一番には「達成感」にあります。
マラソンの特徴は何より自分の努力量と数字が比例します。他力本願ではなかなか数字には現れません。
自己ベストという過去の自分と勝負に打ち勝つことは大きな目標になります。
走る理由はこの他にも
体力がついて体調を崩すことがなくなる。
仕事・家族以外での繋がりが増える。
私生活の質が高まる。私生活が充実する。
など、得られることがたくさん。
時間やお金がかかるかもしれませんが、これだけの得られられるので恩恵の方が大きいと思います。
でなければ、これだけ大きなスポーツ文化に成長するはずがありません。
人とのつながり、健康の大切さを感じたこの2年間。ランニングだけでなく、色んなスポーツが更に広がっていって欲しいなと思います。
東京マラソンが口火になってまた全国で走れように。全国の大会を目標にまた心が熱くなるように。それが本当のレガシーなのかと。
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