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英語力がなくても短期間でAI翻訳家になれる!AI翻訳アカデミーって大丈夫?塩貝香織ってどんな人? 最後の通訳翻訳関連4団体が出した詐欺まがい翻訳講座に関する注意喚起も読んでくださいね!

悔しいです。2018年ごろから翻訳界隈を震撼させた悪徳高額翻訳講座、在宅翻訳アカデミー。やっと類似講座や同じ情報商材屋の英語教材が大人しくなったと思ったのに、新たな悪徳高額翻訳講座が出現しました。

塩貝香織が講師をつとめる、AI翻訳アカデミーです。AIを使って作業するので、TOEIC300点でも英語が訳せる!短期間でマネタイズできる!という宣伝をLINEでしています。現在受講生(=被害者)は800人になろうとしています。被害に合っている方、まずは日本翻訳者協会・詐欺まがい講座対策委員会(連絡先メールアドレス:sagimagai@jat.org)にご相談ください。

翻訳を学べば、両方の語学力や背景知識、PCスキルなど、翻訳の仕事に必要なことがたくさんあるのは自明です。どの翻訳学校でも、語学力を高めるように、PCも練習しなさいって何度も言われます。それなのに、語学力がなくても仕事ができるという虚言。許せません。

「AIを使って翻訳するから大丈夫」と主張していますが、とんでもない間違いです。AIを使った翻訳は、業界では機械翻訳(MT)と呼ばれています。これを修正して訳文を作成する仕事をポストエディット(PE)といいます。業界では翻訳とPEを分けていますが、AI翻訳アカデミーではPEを翻訳と呼んでいるのです。

私も翻訳を始めたばかりのころは、ポストエディットもしました。機械翻訳の出力を修正して翻訳者の訳文に「近付ける」のは大変な仕事です。というのも、機械翻訳は滑らかな分、あり得ないミスをするんです。例を挙げてみましょう。

数字のミス(致命的ミス多数!)
機械翻訳は類似文を出力するので、前のデータによっては数値が違うものを平気で出力します。数値の違いは産業翻訳では致命的なミスです。
例)February 3→9月3日/2月6日  12.5 m→27.5 m

訳抜け・湧き出し(大打撃)
原文訳文を1文ごとに見ていくと、分量が合わないところが出てきます。「訳抜け」です。また、全く関係ない文が入り込んでいることもあります(湧き出し)。
機械翻訳は、例文がないときにごっそりぬかすことがよくあります。分からない(=例がない)文は「なかったもの」として出力。

固有名詞(大打撃)
固有名詞は正確に訳せていないことが多いです。住所、役職なども要注意。
クライアントの社長の名前を間違ったりしたら、二度と仕事は来ませんね。

用語のばらつき(修正に時間がかかる)
機械翻訳は実は用語の統一が苦手。同じ用語を抽出して訳文のばらつきを置換で統一。普通の校正の100倍時間取ります。翻訳支援ツールというアプリケーションを駆使しないとなかなか対応できません。

表現のばらつき(外向けには厳しい)
用語と同じく表現もばらつきます。10人の翻訳者の訳を合体して、同じ表現になるように修正していくようなもの。文ごとに主語が変わったり、受動と能動が一貫しないと読みにくいですから。

肯定否定が逆(致命的)
機械翻訳の最大の危険は、肯定否定のミス。
I am happy. / I am not happy. は、機械にとっては1語違うだけ。「ONボタンを押す」「OFFボタンを押す」も、機械にとっては2文字の差です。技術翻訳・医薬翻訳では生命を脅かす危険が生じます。

つまり、ポストエディットという仕事は、翻訳ができる人が翻訳支援ツールを駆使し、校正技術を使って粗く織られた布を滑らかにしていくような作業なのです。翻訳の仕事ができない人だと、訳文の滑らかさに騙されてミスを拾うことができません。TOEIC300点でできる仕事ではありません

塩貝香織という人は、英会話コーチを長らくしていたようです。英会話の学習についての本も出してます(ただし、情報商材屋のクラウドファンディングで)。副業で翻訳の仕事もしているのでしょう。Facebookで翻訳者を募集していたこともあります。一人でこなせない仕事を受講生にやらせているのかも…(翻訳会社との秘密保持契約違反が心配)。そして翻訳講座を思いついたのでしょうね。「マネタイズ」が大好きな情報商材屋のセミナーに出ているので、そそのかされたのでしょう。50万円や30万円の講座を20人買ってくれたらウハウハですから(現在受講生600人超らしいので、ざっと3億稼いだんじゃないかな~)
ちなみに、『ファイブアイズEnglish 〜「文化」と「習慣」を学べば英語は身につく!〜』の出版はこちらのクラウドファンディングを利用したみたいです。リターンが面白いですよ。KOIRIとお茶会、ホリエモンの店でプライベートディナーとか。https://www.kamofunding.com/projects/siokai

実録? 情報商材はLINEからやってくる
英会話の情報を求めて英語コーチのLINEに登録していたあなた。ある日、そのLINEに「AI翻訳家になりませんか」という別の講座の案内が。でも登録している先生の紹介だし、大丈夫かな…
クリックすると、受講生のキラキラした動画が流れます。「英語力はなかったけどAI翻訳だから頑張れた」って、もしかしたら自分でできるかも?と感じたあなた。次の日も別の受講生の動画が届く。パソコン苦手でも大丈夫って聞いて、ほっと安心。
スクール名を検索してみても、ウェブサイトがないみたい。ちょっと心配。でも、毎日来る通知には、申し込みは〇日からで、人数制限があるって書いてあるし…
申込開始日:高いな~でも稼げるならすぐ元が取れるかもしれない。でも高い。どうしよう
翌日:え、あと30人しか受講できないの?あ、もう締切り終わった…
数日後:ワンランク下がるけど安い講座を作って下さったんだ!もうこれは申し込むしかない!!
こうしてまた被害者が一人生まれるのです。

情報商材屋は、英会話にお金をつぎ込んだ層を狙っている。「ここまで頑張ったんだから、稼ぎましょうよ!仕事しながら英語が学べますよ!」という宣伝に引かれる人、英語講座を受けていませんでしたか? 相手は受講者名簿を使ってマーケティングしてます。気を付けなはれや!(○○先生の紹介って、ホントに大丈夫?)この商材屋は、「産業翻訳講座」、「特許英訳講座」、「マーケティング翻訳講座」なるものを30万、50万という料金で次々と打ち出していました。その共通点をまとめました。

怪しい講座の共通点
1)LINE、メルマガに誘導してステップメールを1週間送り付ける。
2)公式ウェブサイトはあっても詳細は記載されていないため、LINEに登録するしかない。
3)高い英語力やPCスキル不要、最短3か月で時給5000円目指せる、という甘い言葉をちりばめている。広告が無駄に長い
4)オンライン自由な時間に勉強でき、チャットサポートで質問し放題!
↑大事なので覚えておいてください!

業務で翻訳に係わっている人、専門分野があって英語にも馴染んでいる人もターゲット。コロナ禍や不況、病気、育児、介護など、転職せざるを得ない、在宅で仕事をせざるを得ない人、定年前にセカンドライフに備えたい人も。英語力や知識があるからこそ、翻訳ならできるかもと思う気持ちが狙われます。私も病気で退職し、早く翻訳できるようになりたいと焦っていた頃に情報商材翻訳講座があれば、引っ掛かって虎の子の退職金をつぎ込んでいたでしょう。落ち着いて! 時間をかけて確実に学習しましょう! そのお金があったら、老舗スクール行った方がいいですよ! 一般的な翻訳スクールでは、週1回の授業で受講生の訳を講師が添削、間違いの理由や調査の仕方をみっちり習う。1回数時間で1回分が1万円くらい。プロに質問し放題。1年で30万円くらいだから、よく似た料金で、もっとしっかり添削してもらえますよ♪

さて、今日のTakeawayは、こちら!
1)LINEに誘導されたら、撤退! はやい、簡単もありえな~い!
2)翻訳者になりたいなら、まずは通訳翻訳ジャーナルをどうぞ!初心者には『通訳者・翻訳者になる本 2024』もおススメ♪
https://tsuhon.jp/book/
分野、スキル、スクール、トライアル、副業、翻訳支援ツール、海外エージェント、開業など、情報がまとまってます。
3)Twitter(X)で情報収集を。かなりの数の翻訳者がつぶやいてます。特定の分野の翻訳者をフォローするもよし。セミナー情報も流れてきます。

ご質問、ご相談は、Twitter:@bumicchu ぶみにゃんご まで♪

追伸:2023年12月11日、通訳翻訳関連4団体が詐欺まがい翻訳講座について以下のような注意喚起を出しました。参考になさってください。

『近年、「簡単に翻訳者になることができる。高収入を得られる」などの宣伝文句で受講者を集める翻訳の学校、講座等が出現し、「宣伝内容と実際の講座等の内容が異なる。宣伝内容に虚偽が含まれていた」などの理由で、受講者と業者との間のトラブルに発展した事例が報告されています。

さらに、近時、「AIを使った翻訳なので語学力不問で翻訳者になれる」と宣伝する翻訳の学校、講座等が出現し、同様のトラブルに発展することが危惧されています。

「AIを使うと語学力不問でプロの翻訳者になれる」という宣伝文句の根拠はまったく示されていません。

AI翻訳(機械翻訳)の品質は、プロの翻訳者から見るとまだ十分とは言えません。原文と訳文を比較して、訳抜けや誤訳、不自然な表現を見つけて修正する作業が必要です。これをポストエディット(機械翻訳の後編集、「MTPE」)と呼びますが、ポストエディットをするには、原文と訳文の両方を理解する語学力が欠かせません。高性能な機械翻訳や生成AIを使っても、それだけでは商品価値のある翻訳はできません。

また、実際の翻訳の現場では、通常の翻訳案件はもちろんのこと、「ポストエディット」案件でも、情報漏洩等の観点から一般に公開されている機械翻訳エンジン(Google翻訳、DeepLなど)の使用が禁止されている場合が少なくありません。

このような事実に反し、そのような学校、講座等では「AIの便利な機能を使うとパッと簡単に翻訳ができる」という、実際の翻訳作業およびポストエディット作業とはかけ離れた指導が行われていることを示唆する宣伝もされており、業界への悪影響が懸念されています。

こうした宣伝文句を安易に信じ込んでしまう前に、現職の翻訳者に相談するか、翻訳学校などについてもっと情報を集めるようにしてください。

また、受講者に対し、講座の内部情報を一切開示しないこと等を承諾させ、これに違反した場合に高額の違約金を支払うことを約束させる「同意書」に署名させているとの情報も寄せられています。もちろん、講座等の内容を転載するなどは著作権法で禁止されている行為です。しかし、講座等の内容や契約その他の不当性等について、受講者が国民生活センター(消費生活センター)や弁護士、業界団体等の然るべき者に相談するなどの行為は著作権法上も妨げられていません。もし、講座等の内容や契約その他の不当性等を相談するなどの行為が、同意書に反する(違約金が発生する)かのような言辞を受けた場合や、不当と思われる違約金を要求された場合には、安易に応じることのないようにご注意ください。まずは日本翻訳者協会・詐欺まがい講座対策委員会(連絡先メールアドレス:sagimagai@jat.org)にご相談ください。

皆様には十分ご注意いただきたく、お知らせいたします。

なお、英語版を作成する場合は日本語版を正とします。

令和5年(2023年)12月11日
特定非営利活動法人 日本翻訳者協会(JAT)
一般社団法人 日本翻訳連盟(JTF)
一般社団法人 日本会議通訳者協会(JACI)
一般社団法人 アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)』

リンク:
JAT
https://jat.org/ja/news/お知らせ

JTF
https://www.jtf.jp/pdf/20231211.pdf

JACI
https://www.japan-interpreters.org/news/sagimagai2023/

AAMT
https://aamt.info/wp-content/uploads/2023/12/お知らせ_20231211.pdf


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