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パリでポスドク: 事前準備編

情報系分野(ざっくり)でポスドクとしてパリで働き始めました、さがたけです。海外ポスドクの情報を探していたときに雇用形態によって手続きが違ったり、そもそも各種情報を収集するのが大変でいざ働こうとしたときになかなかに手間がかかったので私の場合どうだったのかを記事にすることにしました。思ったより長くなったので事前準備編、到着後手続き編、生活編に分割して公開する予定ですのでよろしければフォローいただいて、続編の公開までお待ちください。

記事にない情報はコメントやTwitter、email等でご連絡いただければできる範囲で対応しようとは思いますのでお気軽にどうぞ(多忙につき返信ができないこともありますのでご了承いただければ幸いです)

(注: 本記事の情報はあくまで私の場合ですので、情報の正確性には最善をつくしますが最新情報等は公式ホームページ等もご確認ください)


雇用形態

ANRからの研究費を財源としたSorbonne Universityによる有期雇用になります。参考になる箇所は多いかと思いますが、CNRSなどの別の機関が雇用主の場合は書類手続き等が異なる可能性があるのでご確認ください。また、家族の帯同がある場合、ビザ申請に追加書類が必要なようですのでご注意ください。

渡航前準備

正直に申し上げますと、思っていた以上に手数が必要でした。けっこうあるので最初は心が折れそうになったんですが、自分で決めたことだからやるしか無い!っていう気合で乗り切りました。渡しの場合、実際はここにある手続きに加えて日本国内での引っ越し手続き(大学近辺から実家へ)もあったのでそれはそれは大変でした。

  • パスポート

  • 受け入れ協定書 Convention d'accueil

  • ビザ

  • 銀行口座の残高証明書(英文)

  • 住居(フランス)

  • 旅行保険(フランス滞在初期)

  • 航空券

  • ホテル(フランス到着直後)

  • 銀行口座や証券口座等の整理(国内)

  • 携帯電話(日本)

  • 税金関係の整理

  • 住民票

  • マイナンバーカード

  • 戸籍謄本

ここからはおすすめの手続き順で各項目について詳細に説明していきます。

パスポート

当たり前ですがパスポートが必要です。有効期限が5年か10年のパスポートを選べるかと思うのですが、有効期限10年の取得をおすすめします。前回更新時の私はパスポートケースが緑だから紺色の5年のほうがかっこいいやろ〜っていう浅はかな理由で5年にしましたが、残存期間がけっこうギリギリでした。都道府県によって申請方法や発行までの日数が異なるので注意してください。

受け入れ協定書 Convention d'accueil

雇用契約書は現地で書類にサインすることになると思うのですが、雇用の覚書のような役割の公式書類です。受入機関に発行してもらったあとに原本を郵送してもらう必要があるので数ヶ月かかります。Convention d'accueilの発行手続きに必要な書類は受入機関によって異なると思うのでご自身で確認いただきたいのですが、私の場合は受入機関書式の履歴書、パスポートのコピー、PhD diplomaのコピー、Convention d'accueil申請書(オンラインフォーム)を要求されました。この書類が準備できないとビザ申請書の提出ができないので諸々のプロセスを進めることができません。一番最初に手配したほうがいいかと思います。

ビザ

観光や出張など90日未満の滞在の場合は日本国籍をもっていれば特例でビザ申請は不要(参考: JETRO)ですが、ポスドクは90日以上なのでビザ申請が必要になります。ポスドクは研究者にあたるのでPassport Tralentという種類のビザの申請をすることになります。ビザの申請書作成はフランス政府のサイトから行います。表示言語に英語を選択しても一部フランス語表示のままの部分もありますが諦めてください。フランスのサイトではよくあります。日本の場合、東京にある在フランス大使館に直接提出に行く必要があります。ビザの受取は郵送可なのに必要書類の提出は対面という謎仕様。しかも予約が必須となっているため大使館のサイトから予約を取って提出に行ってください。特に新学期前(フランスは9月始まり)の7月と8月は予約可能な日程が1ヶ月先になることもあるため、早めに日程の仮押さえをすることをおすすめします(後日キャンセルや日程変更も可能です)。この申請書に加えて、証明写真、パスポート(申請するビザの最終日から3ヶ月以上の有効期限)の原本とコピー、赤のレターパックプラス510、ビザ申請料金99ユーロ相当(大使館の窓口に貼ってありますので詳細な額は当日確認してください)、そして受け入れ協定書(Convention d'accueil)の原本とコピーが必要になります。ちなみにビザ申請についてメールで問い合わせても役に立つ回答は得られないと思ったほうがいいです(経験談)。せめてどのビザに申し込めばいいのかくらい答えてくれればいいのに。。。


以下、完全な蛇足なので興味のない方は次セクションまで飛ばしてください。フランスでの無給インターンをビザ無し滞在の限度90日まで滞在して帰国後、フランスで開催される国際会議のAcceptが出たときのことです。ビザが必要だろうな〜とは思いつつもメールで問い合わせても有効な返事は得られず。シェンゲンビザ申請書とビジタービザ申請書を記入して関西から東京の窓口まで行ったのに、あなたの場合はどっちも申し込めないし、そもそも共同研究の契約書とか無い状態で申し込めるビザは無い」ということで受け取ってすらもらえず。結局、私自身の渡航は諦めて共著者の先生に出席をお願いする流れになりました。いや、せめてメールか電話での問い合わせ窓口は作ってほしかったものです。でも窓口の方の対応は非常に丁寧だったので、窓口の方の問題ではなくシステムの問題だということは強調しておきます。

銀行の残高証明書 (英文)

住居を借りるために必要になります。どれくらいの残高が必要なのかは住居によって異なるので一概には言えませんが、最低でも家賃2ヶ月分以上はあったほうが安心かと思います。日本の大手銀行に急ぎで発行してもらっても1-2週間はかかるかと思います。地方銀行でも依頼すれば英文で発行してもらえますが時間が発行までに一ヶ月程度かかる場合があるので注意してください。

住居(フランス)

ここもなかなかな鬼門でした。私が働き始める2024年がオリンピックイヤーだということも相まって、家賃高いし、そもそも空き部屋少ないしで決まるまでヒヤヒヤでした。まず、大学等の住居部門や提携している住宅斡旋サイトなどを利用できるか確認してください。日本のジモティーのような個人間の部屋の貸し借りのサイトは低価格なので良心的な人に当たれば節約できるかもしれませんが、数カ月分の家賃を振り込んでから音信不通になる詐欺被害も多発しているので極力避けたほうが無難です。フランスの銀行の担当者さんによると50万の被害を受けたかたもいらっしゃるようなので注意が必要です。私は大学の住居部門、CIUPScience accueilStudapartLocavizで同時並行に探したのですが、最終的には英語対応がしっかりしていて、個室にキッチン・トイレ・シャワー付きの空き部屋があったStudapartで決めました。このほかにもシェアハウスのようなコロカシオンなどもあるようですので、どうしても部屋が見つからない場合は詐欺やトラブルのリスクも頭に入れながら検討してみてもいいかもしれません。

旅行保険(フランス滞在初期)

フランスにも日本のような健康保険制度がありますが、取得に数ヶ月を要します。それまでの間、無保険は心もとないので私はクレカ付帯の旅行保険証書を携帯していました。カード会社によりますが航空券やホテルの支払いにそのカードを使用することが保証条件だったりするので注意が必要です。別途、ご自身で保険を契約しておくのも選択肢かと思います。

航空券

ここはそこまで問題は発生しないかと思いますのでお好きな航空会社の片道、もしくは往復チケットを取得してください。私はいつも使っているskyticketを使用してAir Franceの片道チケットを購入しました。skyticketは株主優待価格で購入できることが多いので個人的にはおすすめです。また、クレカ付帯の旅行保険を使用する場合は前述した点に注意が必要です。

ホテル(フランス到着直後)

契約した住居の入居可能日と勤務開始日に数日のズレがあったので、最初の数日はホテル暮らしをしていました。必要であればagodaなりbooking.comなり好きなところでご予約ください。

銀行口座や証券口座等の整理(国内)

ここは正直盲点でした。海外に1年以上滞在する場合、市区町村に住民票の除票届(海外転出届)を提出する必要があります。それに伴って銀行口座や証券口座、NISAなどは日本国内に住所がなければならないので基本的には解約が必要となります。SMBCなどの大手銀行は日本企業に雇用されて、海外支店に行く場合に限りオンラインで送金等の操作ができるサービスを利用できますが、ポスドクの場合はこの限りではないので利用できないとのことです。NISAで利益が出ていたとしても解約せねばならないとのことで、ここも痛いところでした。ちなみに給与が支払わられるまでの期間、どうすればいいのかが問題になりますが、すべての法律や規約に従うとすれば現金を持っていくかフランス到着後すぐに開設した口座に家族や友人から送金してもらうくらいしか思い当たりませんでした。日本企業に所属していて海外支店に派遣されることしか想定していない現状ってどうなん?とは思いますが、法律改正は政治家の仕事なので私にはどうしようもないわけで。。。このあたりについては諸事情により書ける情報が限られてしまうので、追加で情報共有が必要であれば雑談ベースでTwitter等でご連絡いただければ可能な範囲で協力させていただきます。

携帯電話(日本)

海外でも2GBまでなら追加料金無しで使えるので楽天モバイルに変更しました。Twitterの設定で自動画像読み込みを無効にしたり、Wi-Fi環境以外ではYouTubeを見ないようにすれば2GBでも生活できる人間なので楽天モバイルのこの点はめちゃ推せます。ありがたい。フランス国内での諸手続きにフランス国内の携帯電話番号が必要なことも多いため、音声通話のみの格安プランをフランスで契約して2回線持ちで運用しています。

税金関係の整理

大学院在学中はRAやDC2などを通して給与をいただいていたので、もちろん日本国内での納税が必要になります。私は2024年5月からフランスでの勤務を開始したのですが2024年1-3月の給与はもらっていたので、2025年3月ころに確定申告または年末調整を行う必要があります。ただそのためだけに帰国するのは大変なので、事前に納税管理人の届け出を行って手続きや支払い等を依頼することにしました。詳細はネットに大量に記事があるかと思うのでそちらをご参照ください。

住民票の除票届け(海外転出届け)

銀行口座のところで軽く触れましたが1年以上海外に滞在する場合、住民票の除票届け(海外転出届け)を提出する必要があります。国籍は日本のままですが、帰国するまで日本国内の住所がなくなることになります。んー、これまた世知辛い。

マイナンバーカード

住民票の除票にともなってマイナンバーカードも返納する必要あります。マイナンバー自体が消失することはないため、帰国後も変わらないのですがカードの再取得が必要です。また、令和6年5月27日より国外転出後もマイナンバーカードを保持できることになりましたが、マイナンバーカード及び個人番号カード国外継続利用申請書の提出手続きが必要となります。詳細は公式ホームページよりご確認ください。私はこの変更直前に国外転出手続きをしたので一度返却して、在フランス日本大使館で交付申請書を提出して再取得をする必要がありました。無念。

戸籍謄本

フランス入国後の社会保険(Securite sociale)の申請に在フランス日本大使館発行の出生証明書が必要になるのですが、その発行のために日本国内の本籍地が発行する戸籍謄本が必要になります。住民票の除票のタイミングで発行しておくことをおすすめします。

事前準備において参考にさせていただいたサイト


ポスドクは金欠でやばいみたいな話をよく聞きますが、わたくし個人としてはありがたいことに日々の生活に困窮するほどの経済状況ではございません。とはいいつつも、めちゃくちゃリッチな生活ではないのも事実。お気持ちばかりサポートしていただけますとちょっと幸せになれる気がしますので(文字数