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さようならも、ありがとうも、大好きも言えなかった。 目を覚ました紗絵は、ベッド脇で母…
「私、ですか?」 「現実を捨てて、夢の中で俺と生きて、寂しくならないかって聞いてる」 …
山の入り口が、大口を開けて紗絵を待っていた。喉の奥には濃緑が鬱蒼としている。砂利の舌は…
我ながら随分と遠くまで歩いてきたんだなと紗絵が思ったのは、町の中に田んぼが現れるように…
夢であるというのに、現実世界とほとんど変わらない。 臨海公園から歩ける所まで歩いても…
目を覚ますと、レンガ道の向こうに海が広がっていた。 さっきまで夢で見ていた海とは違い…
音が耳に迫っては引いていく。 目を開けると、煌めく水面が広がっていた。 一定の間隔で砂浜をさらっていく波は、紗絵から少し離れた所まで打ち寄せてくる。 日差しも強く差す中だったが、紗絵は半袖のティーシャツにハーフパンツ姿で、麹色の砂粒が素足にまとわり付いていた。 彼女の横を子どもたちが駆けていく。 波間に水しぶきが上がって、はしゃぐ声が響き渡った。 海水浴客の声が聞こえてきて振り返ると、人波の合間に光るものが見える。 小さな光の点が少しずつ大きくなっていき、それ
名前を聞けなかった。また会えたのに。 その後悔が、紗絵の重しとなった。 授業中にぼう…
気が付くと、メリーゴーラウンドに乗っていた。 上下する馬やドラゴンに乗る子ども。華や…
紗絵の目は、バランス良く彩られた弁当を映していなかった。 友達二人の噂話も、彼女の鼓…
街中に人の姿が無かった。 太陽はまだ東の方にあって、空は青い。 定食屋もコンビニも開…