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氷室冴子青春文学賞クラウドファンディング支援のお願い/継承への危機感について

本日発表があったように、氷室冴子青春文学賞が起案者となったクラウドファンディングが始まりました。「地方発の文学賞を成功させ、第二の氷室冴子を生み出したい!」という理念のもと、目標金額80万円を集めるプロジェクトです。拙著『氷室冴子とその時代』のサイン本もリターンの一つになっています。

立ち上げ当初から応援している氷室冴子青春文学賞は、氷室冴子の地元・岩見沢の有志が立ち上げたローカルな文学賞です。氷室冴子の名前を冠することでその功績を歴史に刻み、次世代の作家を発掘する文学賞として誕生しました。作品募集は小説投稿サイトエブリスタにて行われ、先日第2回の結果が発表されました(選考委員の久美沙織・朝倉かすみ・柚木麻子による最終選考レポはこちら)。第1回の大賞受賞作品は『虹いろ図書館のへびおとこ』というタイトルで、河出書房新社から11月に刊行予定です。

より多くの人にこの文学賞の存在を知ってもらうこと、そして資金的な基盤を固めることが、氷室冴子青春文学賞を続けていくためには重要です。クラウドファンディングの情報拡散、また可能な範囲での支援など、氷室冴子青春文学賞のためにご協力いただけると幸いです。このクラウドファンディングを通じて氷室冴子という作家が改めて話題となるよう、私も引き続き活動を応援するとともに、自分の立場から情報を発信していきます。

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以下はクラウドファンディングとは関係のない、私個人の発言になります。私は、氷室冴子とその作品継承について、非常に強い危機感を抱いています。『氷室冴子とその時代』第10章で分析したように、2000年頃を境に中高生読者のなかではすでに氷室冴子受容の「断絶」が起きていました。氷室さんが亡くなったのは2008年ですが、氷室作品が少女たちの間で読まれなくなってのはそれよりも早く、事態は根深いものになっています。かつては多くの少女たちを古典や平安の世界に誘った『なんて素敵にジャパネスク』や『ざ・ちぇんじ!』も、少女向けの定番読み物ではなくなって久しいです。定番どころか、氷室冴子や『なんて素敵にジャパネスク』という作品名すら、もはや若い世代では認知されていません。

受容の「断絶」にはさまざまな要因が考えられますが、氷室冴子作品の復刊があまり盛んでない状況が、この流れをより加速させていると私は感じています。近年はコバルト文庫作品の電子化が進みつつありますが、『銀の海 金の大地』はいまだ電子化されていないなど、すべての作品が復刊されているわけではありません。そしてやはり紙媒体での復刊も重要で、新たに書店に並ぶ、図書館に入ることで氷室冴子を知らなかった読者が作者や作品を認知する可能性が広がるでしょう。

氷室作品の復刊を望むファンの声をたくさん目にしますし、私も氷室作品を復刊してほしいと願っています。しかし、詳細を記すことはできませんが、氷室冴子作品は復刊しにくい状況にあります。読者にとっては「まさかそんな」というお話かと思いますが、氷室さん没後の復刊状況を改めて思い浮かべると、私が言っていることも納得していただけるのではないでしょうか。氷室冴子が読み継がれていくためには、何よりもその作品が重要です。その作品を復刊しにくい現状は、氷室冴子の継承に大きな影を投げかけています。だからこそ私は強い危機感を抱いています。

この状況を変えるために自分にできるのは、氷室冴子について発信し、再評価が進むよう働きかけることだけです。そのために『氷室冴子とその時代』という本を刊行したし、こうやってnoteを書いています。私がある覚悟をもって上記のことをあえて記したのは、この危機感があるからこそです。氷室冴子作品が次の世代にも読み継がれるように、自分がすべきことは何なのだろう。悩みつつ、迷いつつ、それでもとにかく行動するしかありません。

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