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佐賀県発福岡天神着の⻑距離通勤を体験してみた

取材・撮影・文 天野貴博

皆様はじめまして。佐賀に移住して 10 カ⽉⽬になりました天野と⾔います。突然ですが皆さんは移住をする上で何が⼀番の障壁だと思いますか?多くの⼈は「仕事」と答えるのではないでしょうか。「⽥舎は仕事がない」「今より収⼊が下がるのは不安」などなど考えればきりがありません。そんなお悩みのそこのあなた!今の仕事のまま移住してみませんか?そう!「⻑距離通勤」に挑戦してみましょう。佐賀なら福岡での仕事を辞めることなく移住することが出来ます。しかし⻑距離の通勤に対して「疲れそう」「時間がもったいない」等の負のイメージがあるかもしれません。結論は佐賀から福岡への通勤は快適です。今回は私が佐賀市と唐津市からバスと電⾞で福岡市の中⼼・天神エリアまで通勤体験をしてきました。

筆者⾃⼰紹介

天野貴博
⼭梨出⾝の 31 歳 結婚 3 年⽬の⼆⼈暮らし
2021 年 11 ⽉に福岡から佐賀県へ地域おこし協⼒隊として移住
東京と福岡で会社員をしてた
⻑距離通勤の経験なし(⼤学時代の通学時間は約 1 時間半)
普段は自然の中での仕事が多い(⼈混みは苦⼿)
趣味は登⼭とスキー、最近は妻と⼀緒にモルックにはまる


1  佐賀と福岡の距離感

九州の⽅なら佐賀県と福岡県が隣り合っているのは知っている⽅も多いと思いますが、実は佐賀市と福岡市は県庁所在地が隣接している全国でも珍しい位置関係です。つまり九州最⼤の都市に最も近い隣の県です。ただ、県境は脊振⼭地があり最短距離での移動にはマイカーが必要です。公共交通機関を使⽤する場合は①基⼭町や春⽇市を経由する内陸ルートと②唐津市から⽷島市を通る海沿いルートの 2 つがあります。①は約 70 ㎞②は約 50 ㎞の距離があります。今回はそれぞれのルートの中⼼となる佐賀駅と唐津駅から福岡市の天神を⽬指します。

出典:国⼟地理院ウェブサイト(https://www.gsi.go.jp/)

2  佐賀駅発バスで天神へ

体験の記念すべき第 1 回⽬は佐賀県の中⼼地である佐賀市から天神へ向かいます。調べてみると佐賀駅バスセンターから天神バスターミナルへ直通バスが有るとのこと。実際に仕事をするなら 8 時 30 分頃には天神に着きたいと思い、こちらの便をチョイスしました。

出典:⻄鉄バス HP

この時、私は「2 分位のオーバーは⼤丈夫だろう」と考えていましたが、この⽢えが間違いでした。

2.1  佐賀駅バスセンターって?

いざ乗り場の佐賀駅バスセンターへ⾏ってみると、佐賀駅の東側⾼架下に位置していることが分かりました。駅改札を出てそのまま直進するとバスセンターに⾏くことが出来ます。このバスセンターは⾼速バスだけでなく市内各所発着の路線バスも多く乗り⼊れていて⾬の⽇でも安⼼して乗り換えが出来そうです。

佐賀市内のバス拠点 佐賀駅バスセンター
センター内にはファミリーマートも併設されているのでちょっとした買い物も
ファミリーマートの先に⾼速バス専⽤の券売機がポツンとあり早朝はここで乗⾞券を購⼊ することができました(⽇中はバスセンター内の窓⼝からも購⼊できます)

天神⾏きのバスは 6 番乗⾞⼝から出ていて、私が着いた時には 1 本前の乗⾞が始まっていました。並んでいる⽅は⼤体 10 ⼈程ですが、朝は 10〜15 分間隔で出発しているのでゆったり座れそうです。また、現在は運休中の福岡空港⾏も同じ乗⾞⼝です。しっかり 10 分前には並んでいたので先頭をゲット!その後私の後ろにも 10 ⼈程並ばれていました。

バスですが必ず乗⾞券の購⼊が必要です

2.2  駅より乗客が多いバス停

しばらく待つと定刻通りにバスが到着です。ちなみに天神⾏のバスは佐賀バスターミナルからではなく、佐賀第⼆合同庁舎からの出発です。それでもこの時間はどなたも乗っていませんでした。やってきたバスは 4 列×14 列の⼀般的な⼤型バスで各シートにはコンセント完備でスマホや PC の充電も安⼼です。また、⾞内 Wi-Fi サービスも標準装備でした!ただし座席にテーブルはない為、PC は膝の上で操作する必要があります。
(※ お⼿洗いは⾞内にはありません)

座席の横にちょこんとコンセント
ボトルホルダー等も⼀般の⼤型バスと同様でした
利⽤者向けに hulu の特典もある様です

こんな感じで座席周りのアレコレを確認しているとバスは天神に向け出発。バスは佐賀⼤和 IC までいくつかのバス停を経由します。そこからもチラホラと乗⾞される⽅がいらっしゃる状況で私は郊外の⾵景を楽しんでいました。IC が近くなると大きな道を逸れて住宅街へ。「こんな住宅街にも停まるんだ」と思っていると、『⾼志館⾼前』というバス停に並ぶ人だかりが私の⽬に飛び込んできました。このバス停から 20 ⼈程は乗⾞したでしょうか。バス停の横にはバス利⽤者の為の大きな有料駐⾞場もあり郊外の⽅のメインのバス停だったようです。

駐⾞料⾦は 1 ⽇ 500 円 反対側にも同じ規模の駐⾞場がありました

2.3  時間との勝負

佐賀⼤和 IC からは⾦⽴ SA や基⼭ SA 等⾼速道路上のバス停からも乗⾞があり、最終的には乗客は 40 名程になりました。その内 7 割が通勤⽬的ではないかなと考えていた頃バスは⼤宰府 IC から都市⾼速に⼊りました。ここで初めて時計を⾒てみると「8 時 15 分」をさしています。これは確実に定刻オーバーです。「何分遅れになるのだろう」と考えているうちに周りの⾞はみるみる増えていきます。しかも、終点は⼤都市福岡のど真ん中天神です。都市⾼速を降りてからも信号待ちの連続です。私は内⼼「体験で良かった。実際だったら遅刻だ…」などと胸をなでおろしていると、バスは終点の天神バスターミナルに到着です。時刻は「8 時 51 分」で 20 分程の遅れでした。今回の教訓は「⾼速バスは余裕をもって計画を⽴てる」でした。

実際の遅刻でなくてよかったと安堵の筆者

2.4  帰りもゆったり

通勤とは出社と帰宅がセットだろ!と思い同⽇に帰宅体験も実施しました。乗⾞する時間は 18 時から 2 時間残業して帰ると想定し、20 時 43 分発の便に乗ることにしました。天神バスターミナルは福岡天神駅と同じ建物の 3 階です。乗り場は落ち着いた雰囲気で待合スペースも多数ありました。18 時からロビーで時間を潰していると帰宅ラッシュがスタート。九州各地に向かうバスはどれも 7 割以上の乗⾞率で「ラッシュ時を体験した⽅が良かった…」と後悔しながら⽬的の便に乗⾞しました。

出発ロビーにはスターバックスやローソンがありました
佐賀⾏きは 4 番乗⾞⼝から
帰りのバスも同じ設備 唯⼀違うのはコンセントの位置

この⽇は午後から九州北部は激しい⾬に⾒舞われていて私が乗った便も神埼市近辺まで⾬が降っていました。佐賀市に⼊ってから⾬は⽌み降りていく⼈たちも⾬に打たれずに家路につけそうです。朝と同じく⼀番多くの⼈が利⽤したのは「⾼志館⾼前」でした。そしてバスは定刻より10分早く佐賀駅バスセンターに到着です。一回目の体験を終えて「バスの時間は読みずらい」と「バス通勤は意外に疲れない」という2つの発見があった一日でした。

3  唐津から地下鉄直通で天神へ

第一回から1週間後の同じ曜日に今度は唐津から海沿いルートで天神へ通勤体験。筑肥線は福岡地下鉄と直通運行しているし、前回がバスだったので今回は電車を選択です。JR唐津駅から福岡市営地下鉄の天神駅までの道のりで今回も8時30分頃到着で検索すると7時07分に唐津駅を出発する電車があったので乗車決定!

出典:auナビウォークアプリ


3.1  唐津駅が始発じゃない…

前回と違い青空の見える気持ちのいい朝で私のテンションも上がります。今日は通勤の後半は地下鉄なので景色はゼロ。前半で見られるだけ絶景を見ようと意気込んで駅構内へ。

朝日に照らされた唐津駅 すがすがしい朝です

唐津駅構内にもファミリーマートがありそこで飲み物を準備!駅構内には松ぼっくりでできたゴジラのオブジェがお迎えしてくれました。

唐津市の景勝地「虹の松原」のPRを兼ねているみたい よく見るとかわいい

そして駅について初めて気が付いたのは筑肥線の始発駅は唐津駅ではなくお隣の西唐津駅だったのです。伊万里方面へ乗り換えができるのでてっきり唐津駅が始発駅だとばっかり思っていました。下調べ不足を痛感しながらホームへ。

福岡方面の電車は3番線から出ています

ホームへ上がりしばらくするとお目当ての電車が滑り込んできました。この列車は快速で西唐津~筑前前原間は唐津・和多田・東唐津・浜崎・筑前深江に止まります。(7駅通過)唐津駅始発ではないことに一抹の不安がありましたが、車内はガラガラ状態で安心して座ることができます。

JR九州の電車はみんなオシャレです
ガラガラでした

電車に乗り込みしばらくすると発車ベルがなりいよいよ約1時間20分の通勤がスタート!出発してすぐに松浦川を渡る長い鉄橋がとてもいい眺めです。朝からこれだけの景色が見られるのは贅沢だし少し癒されると思っていたら車窓が急に一面の緑に変わってしまいました。残念に思い地図を見てみると、そこは虹の松原のど真ん中。これはこれで贅沢ではあります。

海なのか川なのかと思うぐらい開けた景色

3.2  海を⾒ながらの通勤

そんなことを考えている間にも電車は東へ進みます。そして今回随一の絶景唐津湾が見えてきました。海なし県で育った私としては海を見ながらの通勤なんて贅沢すぎる。毎日見ていたい。見れている方は幸せだと改めて実感しました。ちなみにバスは内陸にある高速道路を走るためここまで立派に海を見ることができません。この景色を楽しむことこそ長距離通勤の醍醐味の一つだと私は思います。

一面の唐津湾‼今回の通勤体験で一番テンションが上がりました

3.3  ⼈が増えてきた

そんな絶景を楽しんでいると電車は福岡県へ入っていきます。ここからは海とお別れして糸島半島の田園風景となります。それと同時に乗客も一気に増えていき、福岡市に入ったころには乗車率100%を超えるくらいになりました。姪浜からは地下鉄となり景色も見えない、本を読むのも気を遣う程になり、ここから天神までの残り30分は人混みに耐える時間でした。そして天神に着くや否や多くの人がホームへと吐き出され、それと同じくらいの人が電車に詰め込まれていました。下車後、電車は時間ぴったりだったため前回のようにハラハラはしませんでしたが、人混みが苦手な私は多少げっそりとしてしまいました。

3.4  帰宅ラッシュ

今回の帰宅は第一回の反省を踏まえ、あえて過酷な帰宅ラッシュの18時30分頃を狙って乗車しました。狙っていた電車の1本前からホームに並ぼうと思い改札を通過すると既にそこにはたくさん人が…ホームに並ぶとちょうど1本前の電車が滑り込んできました。車内を見ると「朝に比べて人が多くない!これはやった!」と思ったのも束の間、ホームの人が乗り込んでいかない…後でわかったのが1本前の電車は地下鉄の終点である姪浜駅行き。対してこの時間に乗車する人の多くは筑前前原駅までの筑肥線各駅が目的地であったようです。その為に目当ての電車は既に乗車率100%でそこに天神から乗り込む人で朝以上にギュウギュウでした。

3.5  ようやく着席

そんなギュウギュウ状態に耐えること約30分。福岡市最後の駅、周船寺駅で目の前の人が下車してくれたおかげで何とか座ることができました。しかし、座って10分ほどで終点の筑前前原駅に到着となりました。ここから向かいのホームで待機している西唐津駅行きに乗り換えます。

耐え抜いた地下鉄空港線
ここからお世話になる筑肥線 行先表示がなんともレトロです

ここから唐津駅までの乗車率はスカスカ状態で暗く景色も見られないので読書にもってこいの環境でした。唐津駅に到着したのは20時過ぎ。向かいのホームには佐賀県とロマンシングサガのコラボラッピング電車が止まってました。

こっちは電車ではなくディーゼルでした

前回よりも早い時間での到着でしたが、満員電車に耐えただけあって今回の方が気も心も疲れた気がします。パーソナルスペースって大事ですね。
それでも朝の絶景と座って出社できるのは、会社員時代に都内の満員電車に10分だけ乗っていた時よりも断然良いことだと今回感じました。

4  バスと電⾞を⽐較

2ルートでバスと電車で通勤体験をして、バス通勤の方が空間的ゆとりが確保されている点が大きいことがわかりました。その為、移動中の時間をより有効活用ができるので車内での読書やちょっとした業務、学習に充てることができるのではないでしょうか。対して電車は時間的ゆとりが確保できていると思います。時刻通りに到着する確率が高く、遅刻を心配しなくて良いのは大きな強みだと思います。どちらも一長一短があるのであなたの許容できるポイントを押さえて選択するのが良いのではないでしょうか?

5  結論 佐賀から天神に通うのはオススメです‼

私が会社員時代は「混んでても良いから通勤時間を短く!」と思っていました。しかし長距離通勤でも乗る場所を工夫すればストレスを少なくして通勤することができます。今回は佐賀市と唐津市から長距離通勤を体験してみましたが1時間を超える通勤でも苦ではなく、景色を楽しんだり、本を読んだりと有意義に時間を使うことができました。田舎で自分らしい生活をしたいと考えているあなたへ私が伝えたいのは「通勤時間は無駄な時間じゃない」ということです。仕事を変えずに理想の生活を「長距離通勤」で手に入れてみませんか?

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