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にこやか童話 「小人さんと倒された自転車」

小人さん達の住む町"にこやかタウン"は今日もみんなの笑顔に溢れています。

「みんなおはよう!」
このお話の主人公である自転車の小人さんも、みんなと毎日にこやかに過ごしているのでした。

ある日の夜、
小人さんは仕事を終え、
最寄駅近くの駐輪場に向かいました。

小人さんはそこに自分の自転車を停めているのです。
「どこに停めたっけなぁ…」
借りてる区画に向かったときのことでした。

スーツを着た男性が、
一番手前に置いてあった小人さんの自転車にぶつかり、
その列の自転車を倒してしまいました。

「ありゃりゃ、自転車を立てるの手伝おう!」
小人さんは駆け寄ろうとしました。
すると…

男は馬鹿デカい舌打ちをし、

小人さんの自転車を踏みつけ、

立ち尽くしている小人さんに
一瞥をくれると、

去り際にぶつかって去って行きました。

えっ…?

何が起きた…?今…?

お、おっけーちょい待ち!
一回整理しよ!

私の自転車にぶつかって倒した人が、

逆ギレして、

自転車を踏みつけて、

恐らく一連の流れを見ていたことへの
腹いせに軽タックルをかまされて…?

残されたのは
この倒されまくった自転車たち…?

なるほど…!
おけおけ、わかった!つまり…

こんな仕打ちF4の道明寺くんでも
ギリ許されないレベルやぞ!!

こんな理不尽あって良いのか…?
そう思いながら小人さんは一台ずつ自転車を戻しました。

自転車を立て終わっても怒りは全くおさまりません。
「くっそ〜!あそこですぐ怒り返せていれば…!」
「でも既にあそこまでキレてる人にやり返す胆力は無い…!」
どこか冷静な自分もいます。

しかし、このまま帰るにはある問題がありました。

このまま帰っては…
怒りのあまりくそデカ舌打ちをしたり
床をドスドス音を立てて歩いちゃう…!

時刻はもう夜。
小人さんは集合住宅住まいなので、生活音を立てすぎると近隣の人に迷惑をかけてしまいます。

しかも下の階の人は最近赤ちゃんを授かったばかり…!
このご時世に挨拶してくださる感じの良いご家族の安眠を妨げる訳にはいかない…!

最近なんだか元気なさそうだし…
ますます騒音を出すわけにはいかない…!
小人さんは決意を固めました。
かくなる上は…

とるしかない…!自分の機嫌を…!!

自らのバイブスを上げるため、
小人さんは最寄のガストに向かいました。

そして…
「ご注文のお料理を持ってきましたニャー♪」

頼みたるはチョコバナナサンデー!

「おいし〜❤︎」
小人さんは大概甘いものを食べるとhappyになるので、
普段はご褒美にしている大好物をほおばりました。

「は〜美味しかった!」
サンデーを平らげた後、小人さんは

依然ブチ切れていました。

食べていた時は良かったのに、
食べ終わった今、先ほどの出来事が蘇ってきて
腸(はらわた)が煮えくり返ります。
しかし怒りを収めねば帰ることはできません。
なぜなら…

小人はうっかり換気扇全開の状態で
米津玄師の「Lemon」を気持ち良く大熱唱してしまい、

最後、めちゃ念押しされてた…

集合住宅の管理組合から注意喚起のお手紙を
頂いてしまったことがあるからです。

「これ以上!!!
ご近所の皆さんの迷惑になってはいけない!!!!」

その瞬間、小人はハッとしました。

「あれ…?
下の階のご家族、元気が無いんじゃなくて、
私のこと単にヤバイ奴だと思って避けてるのでは…?」

う…嘘…

真の化け物は私でしたァ!!!!!!!!!!

情緒がめちゃくちゃになった小人は
最寄のカラオケに駆け込みました。
深夜料金のことなど、
もはや考える余裕はありませんでした。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

部屋に着くやいなや無心でデンモクを叩きます。
そして…

「わかる〜!デスボイス・シャウトは心の禊(みそぎ)だよね〜!」
と思われた方、さらにワンランク上のストレス解消法をお伝えします。
それは…

"直立不動の全力ホルモン”です。

本気でホルモン歌(や)ってる時に
全く動かないのは至難の業で、
尋常じゃない集中力を必要とします。

「全力で歌う」「体を動かさない」この2方向に全集中することによって
余計なことを一切考えずに済み、気が済んだ頃にはあらゆるネガティブな気持ちから解放されているのです。

ちなみに、歌っているところを録画してミュートしながら見た時、
「もはや静止画の域に達している…!」
と思える所までやり切るのがポイントです。

気が済んだ小人が外に出た時、もう太陽が昇っていました。
ついでに喉もカッスカスでした。

「よーし!
 これで今日もにこやかに過ごせるぞ〜!」

小人さんはにこやかに微笑んだのでした。

「みんな〜!このお話、どうだった〜?」

「なんかすごかった〜!」
「ねぇねぇ、どうしてこの話を僕たちにしたの〜?」

「それはね…」

どんなに自分の機嫌をとった所で、

こういうストレスフルな出来事は、ネタとして人に話しでもしないとやってられないからだよ…

ニ゛コ゛っ!!!!!!!!!

「・・・・・・。」

-完-

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