彼女の自殺と救済
私の彼女がこの間死にました。死因は自殺です。
自分が何もできなかったことがただただ悔しくって、罪悪感に溢れていて、どうでもいい友人たちに散々当たり散らしました。そうしたらみんな、どっか行っちゃった。
そうして最後に残ったのが、この子。
弟みたいに可愛がってる、この子。
でもきっとこの子だって最後にはどっかに行ってしまうんだ。だからこの子と電話しながら、言い放ってみました。
「死ぬ死ぬ言ってる人って、100回中99回は死なないけど、1回は死んじゃうんだよ」
って。その後、追い打ちをかけるように、小声で
「死にたいな」
と付け加えて。
そうしたら案の定、この子は言葉を失いました。大成功です。私のせいで、みんなもっと苦しめばいいんだ。だって、私はこんなに苦しんでいるんだもの。この子だっていっぱい傷ついて、私を嫌いになって、私の前から消えちゃえばいいのに。
遠く感じる受話器に耳が痛み、十円玉が落ちる音にすら心臓が高鳴りはじめた頃、この子がやっと口にした言葉は意外なものでした。
お姉ちゃんは悪くないよ、そう囁くように、ぽつりと。
今度は私が言葉を失う番です。どうしてこの子が私を庇う必要なんてあるのでしょうか。私は意にそぐわぬ応えに腹が立って、すぐに切り返しました。
「どうしてそんなこと言うの」
と。
この子の吐息を聞いてからまたしばらく経って。
お姉ちゃんは僕にとって大事な人だから、ってこの子が言ったんです。
大事な人、って何。私はただただそう思い、更に腹が立ちました。でも出てきたのはたくさんの涙、と、それにつられて出てきたかのような一言。
「助けて」
私はそう呟いてしまってから自分で自分に驚きました。私は助かりたかったんだ、って気付いてしまったから。
続けて、この子は笑って言ったのです。
僕に助けを求めてくれてありがとう、だからもう、お姉ちゃんはきっと助かるはずだから、って。
私は体がくの字になるみたいに、頭を前に垂らしました。
電話ボックスの透明な壁に打ち付けられたのは、いつもと違う、見慣れない自分の顔。
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