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【実録】40歳バツイチ女がマッチングアプリで年下彼氏に出会うまで(5)

いらっしゃいませ!さえこです。週末ですね。今日もゆるりと読んでいってくださいまし。

【実録】シリーズ連載5回目。前回の記事はコチラです☆

https://note.com/saeko_111/n/nd08e8f2a0cdd

【前回までのあらすじ】
39歳バツイチのさえこは、マッチングアプリで知り合った大ウソつきのヒロくんに「実は既婚者なんだ」と告白される。
ショックを受けるも、それから数ヶ月にわたり、別れることができず関係は続いていた。「さえこがいなくなる恐怖に耐えられない」そうのたまい、マッチングアプリを利用しはじめた彼。デート終わりに、さえこは彼を尾行することにした。舞台は金曜夜の渋谷。さあ、この行動は吉と出るか、凶と出るか?

===

大通りに出ると彼はタクシーを捕まえた。

ああっ! しまった…!

ドラマみたいに「あの車を追ってください!」とやりたかったが、タクシー乗り場じゃあるまいし、そんな簡単に流しのタクシーはつかまらない。

やがて、彼の乗ったタクシーは遠ざかり見えなくなった。私はスマホをバッグから取り出し、よせばいいのに彼にLINEしてしまう。

『こんな時間から、タクシーに乗ってどこにいくの?』

郊外ならともかく、ここは渋谷だ。
四方八方に線路が張り巡らされた都会である。どこに行くのも電車が一番早いし運賃も安い。(車は渋滞するしね)

大企業勤めの彼の取引先が、タクシーに乗らなければいけないほど駅から離れた場所にあるとは思えなかった。

加えて彼の自宅は横浜。電車がある時間帯にわざわざ渋谷からタクシーに乗って帰宅するわけがない。
となると、行き先は渋谷からさほど遠くなく、最寄駅からは距離のある住宅街ーー交際相手が住む家と考えるのが自然である。

LINEを確認した彼から、すぐに電話がかかってきた。

「さえこ?…もしかして、僕のあとをつけてきてたの?」
「…うん…」

私は弱々しく答えた。
あまりの情けなさに、予期せず涙がこぼれる。
雑踏の中、立ち尽くしながら声を殺して泣いていた。

「言ったでしょ。お客さんのところに向かってるところだよ」
「社名は?」
「…え…」

「なんて会社なの!? 早く答えてよ!!」

突然の私の剣幕に慌てたのか、彼がしどろもどろに社名を言う。

何も言わずプツリと通話を切ると、震える手でその社名を検索した。

「…無いじゃん…そんな会社…」

確信した。彼には、他にも付き合ってる人がいる。奥さん以外の、第三の女性。若いのかな?それとも私と同年代? その人も知ってるんだろうか。彼が既婚者だってこと。
一人と不倫できる男は、何人とでも不倫できるんだな、と思った。

潜在意識のセン子が言う。

ーーそんな風に決めつけちゃっていいの?
彼は、たまたま、社名を言い間違えただけかもよ?
信じてあげたら?

「はぁ…。どうしてセン子って、いつもオモテの私と正反対の意見を言うの? 
違うよ。彼が他の人とも不倫してるかどうか、そんなことはもはやどっちでもいいの。ほら見て。問題なのは、この顔

私はショーウィンドウに映った自分の姿をまじまじと見つめた。

顔は涙でグシャグシャ。必死に彼を追いかけたせいで髪は乱れてるし、なんだか一気に10歳くらい老け込んだみたい。

これだけはハッキリしてる。いまの私は、幸せではない。

ーーふふ。わかってんじゃん。今日のあんたは正解だよ。ほら、いつものあれ、買って帰ったら?

「うん。帰る」

スマホをバッグに放り込むと、私は帰路に着いた。
いつものあれ、とはセブンイレブンのシュークリームのことだ。
辛いことがあったら、いつもこれ。

ほーら。美味しそうでしょ。カスタードとホイップのダブルシューだよ。これが170円で買えるとか、セブンさん、神すぎるでしょ。


セン子は言う。

ーー結局さ、あんたは、男より誰よりも、自分が一番好きなんだよね。だから騙されたり嫌な目にあったとき、長引かせず立ち直って次に行ける。
そんなあんたのことが私、嫌いじゃないよ。

「ありがとね。まぁ、セン子に褒められても自画自賛なだけだけどさ、自分を自分で褒めてあげなきゃ、やってられないよね。だって、他に誰も褒めてくれやしないんだから……」

その夜は一度もスマホの画面を見ること無く眠りについた。久しぶりにぐっすり眠れた気がする。

翌朝になって見てみると、ヒロくんからのLINEと着信が残っていた。

速やかに着信拒否の設定をし、LINEは読まずに消す。

さようならヒロくん。貴方みたいな嘘つきは嫌い。だからもう付き合えない。
だけどさ、悔しいけど。
けっこう、ちゃんと、好きだったよ。

こうして私は、短いながらも必死で恋した日々に終わりを告げた。

彼の前ではスマートな大人の女でありたいと思っていた。でも、全くそうじゃなかった。
最後の最後まであとを濁しまくり。だけど、やれるだけのことはやったから不思議なくらい悔いは無いのであった。

さて、と。次の恋を探しに出かけるか。
ほんとのこと言うと少しだけ億劫。けれどけっこう楽しみなんだ。

失恋を癒す特効薬は新しい恋!
だいじょうぶ。まだ頑張れる。だって、女の恋はいつだって「上書き保存」だからね!

(続く)

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