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音の記憶をなくす話


ずっと覚えてる声があるから大丈夫

私には忘れない音の記憶がある。30年前に亡くなった弟の声だ。
説明はできないがたまに再生ボタンが勝手に押されるように流れる。
普段人に言っても困るだろうから、別に言わないし。いつも自然の物音にまじってるから気にしない。

二年前、幼なじみの友人のお母さんが亡くなった。ご近所さんで沖縄出身、三線の先生。私も2年ほど三線をおそわった。末っ子の妊娠出産でばたばたとお稽古に行かなくなってしまったけどいつも私には優しく指導してくれた。
先生自身、三線のテクニックや歌の練習にはとても厳しくて熱心で、亡くなる前の年、沖縄で開かれる三線の大会(資格をとる)に出ることが目標だった。

先日、地元のFM局で先生の三線演奏と歌の音源が流された。先生を知っている人がリクエストしてくれたのだと思う。幼なじみが「良かったら聞いてやって~」と連絡をくれたので、もちろん!きいた。再放送もきいた。
「先生の声だなー」ふだんの優しい声とは違うけど少し緊張していて、でもしっかりと張りのある声…優しい三線の音色。
きっと幼なじみの彼女と残されたお父さんは涙が抑えられないはず。
LINEで感想を伝えるのはしばらくやめておこうと思う。
今朝も、昨日聞いた先生の声を頭の中で思い出していた。

そしてついでに?ふと30年以上前の声の記憶を呼び出そうとしてみた…なぜか出てこない。
嘘だ!そんなはずはない!先月の命日には久しぶりに開けたアルバムを眺めていた時には意識せずとも脳内で幾度となく再生されていた。
私の50年以上の記憶の中では再生回数ナンバーワン、ゴールドディスクはとうに超え、プラチナディスク100万枚にあたいしてる。
音源が消えた…。マジか。ヤバイ。

どうして?覚えていた体の頭の細胞が全部死滅して入れ替わったのか??
電化製品みたいに脳の記憶も期限があったのか?引き出しが見つからないようなスイッチがみつからないような変な気分だ。
スイッチがなくても体には染みついているんだろうからもう少し待つしかないのかな。
怖いわ~(汗)

東野圭吾さんの「クスノキの番人」を読んだ。思いや歌や心を記憶しているクスノキ、降霊ファンタジー。誰でも大事な人に残したい思いがある。ネタバレごめん。私の感想。
いま、クスノキがほしいけど、きっと私が覚えてるって思って満足していただけ。この声は誰にも聞こえない…。20歳の弟の声。再生されるのは私の脳内だけだから…私の肉体が消えるまでここにいて!


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