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「少し」のリラックスから「深い」リラックスへ

こんにちは。気功師の佐伯です。

気功のレクチャーではリラックスのやり方、リラックスの深め方についての話題がたびたび出てきます。

特に、難しい話題に触れたあとは「リラックス」や「手から気を出す」など基礎に戻っておいた方が、より安全に知識を運用できるでしょう。


リラックスは脳のパフォーマンスを最大限に引き出すための必需品です。

学校の勉強でも資格の勉強でも、知識や技能に関する勉強でも、脳を使うすべての行為はリラックスが上手にできる人ほど高い成長率を発揮します。

耳慣れた単語ですが、気功を極めたい人にとっては武器にするべきものが「リラックス」だとお考えください。


さて、「リラックス」と聞くと「心と身体が穏やかで温かでゆるんだ状態」をぼんやりと想像すると思います。

では実際にここで挙げた状態を、今すぐにこの場で自分の身体に起こすことはできるでしょうか。

「いつでもどこでも寝られます!」というタイプの人でも、起きたままで深くリラックスするのは難しいかもしれませんね。

起きた状態で速やかにリラックスに入っていくには、どうすれば良いのか、どう考えれば良いのかを見ていきましょう。





スポーツでゾーンと呼ばれる状態

リラックスと似た内容で、動作中に深い集中状態に入れることを競技の世界では「ゾーン」とか「フロー」と呼ぶのを聞いたことがあるでしょうか。

リラックスと言うと、静かに穏やかに過ごすイメージが強いと思いますが、僕はゾーンと同じように動的な状態においてリラックスをすることを重要視しています。

リラックスした心身を運動や思考に活かしたいのです。

さて、ゾーンのもたらす効果ですが、時間感覚が引き延ばされたり、心身のパフォーマンスが急激に向上したり、精神的に研ぎ澄まされる感覚が得られると説明されることが多いですね。

僕も学生時代に、部活で長距離マラソンのトレーニング中にゾーンに入ったことを今でも覚えています。


周囲と比べても平均くらいの体力だったと思いますが、なぜかその日はいくらペースを上げても苦しいと感じず、走っているうちにどんどん心地よくなっていました。

いつもは走っているうちに辛いと感じるはずが、普段の自分からはまったく想像もつかないほどのハイペースで走ることができてしまったわけです。

陸上競技の長距離走では「ランナーズハイ」とも呼ばれる現象ですね。

当時の僕は走ることに対して高いゴールを持っていたわけでもないので、偶然に入ってしまったゾーンです。


もう一つ自分の例を挙げると、軟式野球の草野球大会で柵越えホームランを打ったことがありました。

ホームランを打ったときにゾーンに入ったのではなく、ホームランを人生で初めて打ったという劇的体験のせいでゾーンに入りました。

よほど僕は嬉しかったのでしょう(笑)

多幸感がその後の試合中ずーっと持続し、劇的に身体的パフォーマンスが向上したのを覚えています。

まるで羽でも生えたのかと思うくらいには身体が軽くて爽快でした。

「こういう動かし方も可能なんだ」と自分の中に眠っていた身体能力を発見できた気分でもありました。


筋肉が緊張していると身体の動きはぎこちないものになりますが、運動中に深くリラックスできているとなめらかな動きが可能になります。

このとき、脳は自分の身体の動かし方を再発見し、良い動かし方を学習して成長していきます。

ゾーンに入ってリラックスして運動する頻度が多い人ほど、卓越した身体能力を発揮できる脳を持つことができるわけです。


さて、僕が挙げた例はスポーツからでしたが、「時間が経つのも忘れるくらい没頭したこと」などの経験はありませんか?

勉強でも、工作でも、絵でも、ゾーンに入ることができます。

この場合だと、「目の前の作業に集中しやすくなる感覚」を学ぶことになりますね。

勉強に対してリラックス状態を維持できる子ほど、「落ち着いて上手に学べている自分」を何度も自覚することになります。

当然、どんどん学力が向上します。

これは大人になってからも同様です。

趣味で勉強する、仕事で必要だから勉強するなどの場合でも、リラックス状態を維持して学ぶ方が「自分が上手く学べていること」を自覚できるようになります。


僕らは日頃の自分のパフォーマンスを向上させるために、ゾーンの状態や深いリラックスなどの意識状態を求めています。

意図的に起こし、その恩恵に預かろうと考えているわけですね。

ここからは段階的にリラックスを深めてゾーンに入っていく練習方法を少し書き残しておきます。

主なトピックは下記の3点です。

  •  初めからパーフェクトなリラックスを求めすぎない

  •  雑念の対処のため、呼吸を一定の周期でくりかえす

  •  部分的にリラックスできている自分を認識する

それぞれ詳しくみていきましょう。



初めからパーフェクトなリラックスを求めすぎない

リラックスに慣れていない人ほど「劇的なリラックス」を求める傾向があるようですが、慌ててはいけません。


そもそも完全に脱力してしまうと、椅子に座っていることはできません。

着席時は、無意識で身体の平衡感覚(バランス)を感じる必要があります。

バランス機能のスイッチを切ってしまうと、ドテっと椅子から転げ落ちて怪我をするかもしれません。

なので、「力は抜いていくけれど、最低限椅子に座っていられるくらいの筋力は維持するもの」と考えてください。

こう考えることで、身体から力が抜けきらないことにイライラすることも無くなるでしょう。

「これくらいなら力を抜いても自分は椅子から落ちない」と、身体を使って確認作業をすると考えておくと良いでしょう。


リラックスの練習なら寝そべってやるのも良いんですが、眠ってしまうと練習になりません(笑)

起きている間にリラックスの効用を得たいので、椅子に座った状態で身体のバランスを維持して力を抜く練習に取り組んだ方が効果的でしょう。



雑念の対処のため、呼吸を一定の周期でくりかえす

さて、リラックスを深めていくにあたり、変性意識が深まることで起きることも考慮しなくてはいけません。


変性意識が深まる過程で脳の働きが活発になっていくと、さまざまな記憶が呼び起こされることがあります。

記憶が呼び起こされるだけではなく、想像力が働いて新たな考えやイメージも出てくることもあるかもしれません。


中には「ひらめき」と呼べるイメージもあれば、妄想や雑念と呼べるイメージもあるでしょう。

ひらめきの場合はそのまま感じていれば良いですが、妄想と雑念が強く出てくるとそちらに強く引っ張られることもあります。

深い変性意識状態の中で出てきた妄想と雑念だからこそ、思考を奪われるような臨場感を覚えるかもしれません。


ですが思考を奪われっぱなしではせっかくの練習時間がもったいないですし、対処したいですよね。

その対処法が、「呼吸を一定の周期でくりかえす」です。


本末転倒の事態を回避するために、リラックスを深める訓練をする際は、「呼吸を一定の周期でくりかえす」を厳守してください。

苦しく感じない範囲で「一定の周期」、「規則性や法則性」を感じられるリズムの呼吸であればオッケーです。


妄想や雑念が出始めたなと感じたら、呼吸のサイクルを一定に保つことを第一に考えてしばらく待ちます。

苦しく感じない範囲で呼吸を一定の周期でくりかえして1分間すごします。

「今やった呼吸と同じリズムで呼吸をする」と言葉で考えながら呼吸をくりかえすと、なお良いでしょう。



部分的にリラックスできている自分を認識する

さて、これだけ説明してもリラックスに対して苦手意識を持つ人は「それでも私はリラックスが苦手」というおっしゃるかもしれません。

部分的な脱力や、一時的なリラックスなら、誰もが毎日経験しています。


お風呂温かいお湯に浸かっても一息つけませんか?

極端な話、トイレで用を足しているときは部分的にですが筋肉から力を抜いています。


「苦手」と言いたがる人は、やや拡大解釈気味に「私は一日中リラックスできていない」と思い込んでいるフシがあります。

ちょっと大げさに、あるいは盛ってマイナスの表現していませんか?

細かく表現しなおせば、「必要なときには脱力やリラックスができて、それ以外のときはリラックスできていない」が本当のことです。


これを「部分的な肯定」と呼称することにします。

「一日中リラックスできていない私」はただの幻で、「一日の中でリラックスができたり、できなかったりする自分」が本当の存在だったわけですね。


実際、「少しだけ」ならそんなに時間をかけなくても、意図して脱力やリラックスをすることができます。

試しに、大きめの深呼吸を何回かしてみれば少しくらいはできるでしょう。

もしくは、呼吸の周期を一定にして1分ほど静かに過ごしていれば、「少しだけ」ならリラックスできるはずです。

何度か呼吸をしてみて、肩や首からわずかにでも力が抜けませんか?

お腹や肺が柔らかく動いている様子を観察していると、少しくらいは緊張の糸がほぐれてきませんか?

もちろん、とても深い脱力やリラックスにはまだまだ遠いですが、一時的、部分的に上手く行っていることもあるのです。



自分は「学んでいる最中」であることを自覚してみる

そもそも、リラックスや脱力がうまくいかないのは、自分の心身で学びきっていないからです。

自分の身体を使って、まだ学習し終えていないだけです。

まずは部分的な脱力で良いので意識に上げ、「部分的に脱力ができた私」を作り上げていきましょう。


とはいえ、身体の中にはなかなか頑固な部位もあります(笑)

そういうときは「自分はまだ自分の身体の脱力とリラックスについて学び始めたばかりだ。今、学んでいる最中だ」と言葉で考えてみてください。

いきなり、ぐにゃっと深い脱力を作るのは至難の技です。

それを求めすぎるあまり、深く脱力できていない自分にイライラするかもしれません。

理想と現実が作り出す大きなギャップを認識したのだと思いますが、しかしイライラしていてもリラックスは上手くなれません。

全体的に見たらまだまだだったとしても、せっかく練習しているのですから部分的に肯定して前進していった方が建設的でしょう。


さて、一定のリズムで呼吸をしている間に少しでも「ゆるんだ!」と感じた瞬間があったら、決して逃がさず言葉にしてください。

そして、自分が「リラックスのやり方を学習している最中であること」を自覚するのも忘れずに。

きっとうまくできますよ。



サムネイルに使用した画像の引用元:Pixabayより

<a href="https://pixabay.com/ja/users/ataner007-3921035/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1967892">Renata Hille</a>による<a href="https://pixabay.com/ja//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=1967892">Pixabay</a>からの画像

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