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トヨタ自動車パワハラ自死和解、7紙が社説でパワハラ問題を訴えた

トヨタ自動車とパワハラ自死 遺族との和解条項

トヨタ自動車パワハラ自死和解での豊田章男社長の対応を称賛する報道も多い。

だが、トヨタ自動車や豊田章男社長への評価は、豊田章男社長が遺族に約束したパワハラ再発防止策を、今後、二度とパワハラを起こさない改革をどこまで実現するのかを見極めてからではないか。

そしてトヨタ自動車と豊田章男社長を最終的に評価するのは「遺族」だ。

遺族とトヨタ自動車とで結ばれた和解文書には、トヨタ自動車は遺族の意向を全面的にくみ取り、パワハラを無くす断固とした組織改革実行をトヨタ自動車が遺族に約束すること、また今後5年間、トヨタ自動車が組織改革の進捗状況を遺族に報告すること、などといった和解条項が明記されたと伝えられている。

だからトヨタ自働車や豊田章男社長を最終的に評価するのは1年後の遺族、2年後の遺族、3年後の遺族、4年後の遺族、さらには5年後の遺族になる。私たちはもまた、和解条項にしるされた遺族の思いを決して忘れることのないようにと願う。

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トヨタ自動車パワハラ自死和解に関して7紙が社説

トヨタ自動車パワハラ自死和解に関して問題点を指摘する社説を出したのは毎日新聞、京都新聞、東京新聞、愛媛新聞などだが、日本経済新聞、新潟日報、中日新聞も社説をだしている。

あくまでも個人的に確認しただけのことだが、今朝(2021年6月17日)の時点で7社確認している。

毎日新聞:社説「トヨタのパワハラ自殺 企業の意識改革で根絶を」

毎日新聞は、社説「トヨタのパワハラ自殺 企業の意識改革で根絶を」(2021年6月9日)で、「亡くなったトヨタ社員は上司から繰り返し叱責されて適応障害を発症し、休職した。管理職はパワハラの情報を把握していたにもかかわらず十分調査せず、復職後も上司の近くで働かせていた。対応に問題があったのは明らかだ」とトヨタ自動車の対応を明確に問題視した。

毎日新聞:社説「トヨタのパワハラ自殺 企業の意識改革で根絶を」

京都新聞:社説「パワハラ防止 企業は対応を強化せよ」

京都新聞は、社説「パワハラ防止 企業は対応を強化せよ」(2021年6月9日)で、「労働基準監督署がパワハラによる症状と自殺の因果関係を認め、労災認定したのが19年9月。その報道で豊田社長は事態を知ったという。社内での情報共有がなかったことを物語っていよう。パワハラが疑われる上司に対して上位者から何らかの働き掛けができず、復職後の配属にも配慮がなかった点も教訓とせねばなるまい」と、トヨタ自動車の対応の悪さを指摘。そして「電通や三菱電機でもパワハラが若手社員を追い込むケースがあり、問題の根は深い」とパワハラ自死がトヨタ自動車だけのことではないことにも言及した。

京都新聞:社説「パワハラ防止 企業は対応を強化せよ」

日本経済新聞:社説「パワハラ撲滅は社長が先頭に」

日本経済新聞は、社説「パワハラ撲滅は社長が先頭に」(2021年6月9日)の冒頭で、「トヨタ自動車の社員が上司のパワーハラスメントが原因で自殺したことを巡り、同社が遺族側と和解した。日本を代表するグローバル企業で労災を防げなかったことは極めて残念だ。トヨタの責任は重く、パワハラ撲滅へ努力を尽くさなければならない」と、パワハラ撲滅への企業努力を強調した。

日本経済新聞:社説「パワハラ撲滅は社長が先頭に」

東京新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」 

東京新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」(2021年6月11日)は個人的に評価すべき社説だと思うので、全文を掲載させていただく。

トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=が二〇一七年に自殺したのは「上司のパワーハラスメントが原因」だとして労災認定されたことを巡って、同社が、遺族と和解した。

当初、トヨタ側の反応は鈍く、パワハラが原因と認定されてから、遺族がメディアに訴える経緯もあった。和解により、遺族に誓った人事評価の改革など再発防止策の着実な実行を求めたい。

男性社員は会社の寮で自ら命を絶った。遺族はその後のトヨタの対応を不十分と感じ、一九年十一月、新聞に詳細を公表した。その時点で、豊田章男社長のもとには、男性の自殺の詳細が伝わっていなかったほか、労災認定までの経過報告もなかったという。社内での危機感の無さと情報共有のまずさが浮き彫りになった。

新聞報道の直後、豊田氏はすぐに副社長と二人だけで謝罪に赴いた。今年四月にも豊田氏は再度遺族と面会し、謝罪をするとともに徹底的な職場改善を誓った。

和解条項は、遺族の意向を全面的にくみ取り、パワハラを無くす断固とした組織改革の実行を約束した。今後五年間、進捗状況を遺族に報告することも明記した。

男性の自殺を巡る調査の過程で、パワハラをしていた上司が過去にも同様の行為を他の社員に繰り返していたが、人事情報の中で共有されていなかったことも明らかになった。

さらに、この上司と男性の関係についても詳細が職場に知らされておらず、該当部署では男性が体調を崩して復帰した後、この上司と別のグループになったものの、同じフロアで席も近い場所に異動させる配慮の無さもあった。男性は当時「(上司の)目線が気になる」と漏らしていたという。その後、男性は自死を選んでしまう。

今回の事態を受け、トヨタは人事評価制度を刷新した。管理職の勤務評価をする際、上司や部下、同僚など三百六十度で評価するシステムを導入した。人事評価などの個人情報も一元化した。本人のほか家族などからも通報できる窓口を設置。各部署ごとに職場相談員の配置も進めている。

パワハラは厳しい指導との線引きが難しく、各企業でも対応に苦慮している。毎年の春闘で、労使交渉のリード役として注目されてきたトヨタだからこそ、パワハラ防止でもリーディングカンパニーになることを期待したい。(東京新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」2021年6月11日)

東京新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」

新潟日報:社説「パワハラ自殺 再発防止は社会の使命だ」

新潟日報は、社説「パワハラ自殺 再発防止は社会の使命だ」(2021年6月11日)も個人的に評価すべき社説だと思うので、全文を掲載させていただく。

遺族との再発防止の約束を守るために取り組みにどう実効性を持たせるのか。重い課題が突き付けられているといえよう。

トヨタ自動車は、企業体質の改善に全力で取り組まなければならない。

2017年に、トヨタの当時28歳の男性社員が上司のパワーハラスメントが原因で自殺し、労災認定された問題を巡り、同社がパワハラと自殺の因果関係を認め遺族側と和解した。

男性は入社3年目で上司から日常的に「ばか」「アホ」「死んだ方がいい」などの暴言を浴び適応障害を発症、休職した。

ところが、社内の関係部署でパワハラの情報が伝わらず、男性は復帰後も同じ上司の下で働かされた。上司の上位者は問題解決に踏み込まなかった。

復帰当初は離れていた席も後にそばに移され「上司が廊下でぶつかるようなしぐさをしてくる」「席を替わりたい」と訴え単純ミスを繰り返すようになった。「もう精神あかんわ」と漏らし、社員寮で命を絶った。

パワハラが繰り返されていた中で、孤立感を深めていったのではないか。

情報共有の欠如によって有効な対策が講じられず、男性の命が奪われたようなものだ。無念の思いはいかばかりだったか。

豊田章男社長は19年に男性が労災認定された報道で、初めてパワハラの経緯を知った。

トップダウンで原因究明を指示し、遺族と面会して直接謝罪した。さらに、徹底した社内調査を約束した。

和解を巡り、トヨタは執拗なパワハラがあったことや上司への監督を怠った安全配慮義務違反を認めた。

再発防止策として就業規則を改定しパワハラに関する懲罰規定を明記。従業員の異動時には、評価情報の引き継ぎを徹底するなどとした。

豊田社長は遺族に「仕組みは作ったが完成ではない。最終責任者である私が事実を忘れず改善していく」と誓ったという。

しかし、和解まで3年半以上もかかったことは、世界のトップ企業とは思えぬ未熟さだ。

20年6月に施行された女性活躍・ハラスメント規制法は、大企業にパワハラ防止対策を義務付け、22年4月からは対象が中小企業に拡大される。

だが、職場のパワハラは一向に収まる気配がない。

厚生労働省の20年の実態調査では、約8千人の労働者のうち、約3割が過去3年間にパワハラに遭ったと回答した。約半数は侮辱や暴言といった精神的攻撃を受けたと訴えた。

トヨタ以外にも三菱電機、電通、日立など日本を代表する大企業で陰湿なパワハラが相次いで発覚しており、病巣の根深さをうかがわせる。

パワハラを防止するために必要なのは、私たち一人一人がひとごとではないという自覚を持つことだ。

その上で、パワハラをはじめ種々のハラスメントを決して許さない社会をつくるために力を合わせたい。(新潟日報:社説「パワハラ自殺 再発防止は社会の使命だ」2021年6月11日)

新潟日報:社説「パワハラ自殺 再発防止は社会の使命だ」

中日新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」

中日新聞は、社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」(2021年6月11日)で、「今回の事態を受け、トヨタは人事評価制度を刷新した。管理職の勤務評価をする際、上司や部下、同僚など三百六十度で評価するシステムを導入した。人事評価などの個人情報も一元化した。本人のほか家族などからも通報できる窓口を設置。各部署ごとに職場相談員の配置も進めている」とトヨタ自動車の再発防止策を紹介し、そして「パワハラは厳しい指導との線引きが難しく、各企業でも対応に苦慮している。毎年の春闘で、労使交渉のリード役として注目されてきたトヨタだからこそ、パワハラ防止でもリーディングカンパニーになることを期待したい」と結んでいる。

中日新聞:社説「パワハラ自殺 再発防止に力尽くせ」

愛媛新聞:社説「パワハラ自殺和解 法改正で国の禁止姿勢を明確に」

愛媛新聞は、社説「パワハラ自殺和解 法改正で国の禁止姿勢を明確に」(2021年6月12日)の冒頭箇所「トヨタ自動車の若い男性社員が自殺したのは、上司のパワーハラスメントによる適応障害の発症が原因として」だけを公式サイトに公開している。

愛媛新聞:社説「パワハラ自殺和解 法改正で国の禁止姿勢を明確に」