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副業・兼業の安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務

労働政策審議会・労働条件分科会の開催
厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会(第162回)が、本日(2020年7月30日)13:00~15:00、労働委員会会館講堂(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館7階)で開催されたが、議題は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」等について(報告事項)、副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について、労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しについて。

副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について
公開された労働政策審議会・労働条件分科会(第162回)資料によると、本日の労働条件分科会の議題「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について」では、競業避止、情報漏洩、安全配慮義務等について議論された。

資料「副業・兼業の場合の労働時間管理について」抜粋
労働契約法第3条第4項において、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」とされている(信義誠実の原則)。この信義誠実の原則に基づき、使用者及び労働者は、労働契約上の主たる義務(使用者の賃金支払義務、労働者の労務提供義務)のほかに、多様な付随義務を負っている。副業・兼業の場合には、以下の点に留意する必要がある。

(1)安全配慮義務
〇労働契約法第5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされており(安全配慮義務)、副業・兼業の場合に は、副業・兼業を行う労働者を使用する全ての使用者が安全配慮義務を負っている。副業・兼業に関して問題 となり得る場合としては、使用者が、労働者の全体としての業務量・時間が過重であることを把握しながら、何らの配慮をしないまま、労働者の健康に支障が生ずるに至った場合等が考えられる。
〇このため、
・就業規則において、長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
・副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について、労働者の安全や健康に支障をもたらさないか確認すること
・副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること等が考えられる。

(2)秘密保持義務
〇労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務を負っている(秘密保持義務)。副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、自ら使用する労働者が業務上の秘密を他の使用者の下で漏洩する場合や、他の使用者の労働者(自らの労働者が副業・兼業として他の使用者の労働者である場合を含む。)が他の使用者の業務上の秘密を自らの下で漏洩する場合が考えられる。
〇このため、
・就業規則において、業務上の秘密が漏洩する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
・副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密の漏洩が生じないよう注意喚起すること 等が考えられる。

(3)競業避止義務
〇労働者は、一般に、在職中、使用者と競合する業務を行わない義務を負っていると解されている(競業避止義務)。副業・兼業に関して問題となり得る場合としては、自ら使用する労働者が他の使用者の下でも労働することによって、自らに対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合や、他の使用者の労働者を自らの下でも労働させることによって、他の使用者に対して当該労働者が負う競業避止義務違反が生ずる場合が考えられる。
〇したがって、使用者は、競業避止の観点から、労働者の副業・兼業を禁止又は制限することができるが、競業避止義務は、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないことを内容とする義務であり、使用者は、労働者の自らの事業場における業務の内容や副業・兼業の内容等に鑑み、その正当な利益が侵害されない場合には、同一の業種・職種であっても、副業・兼業を認めるべき場合も考えられる。
〇このため、
・就業規則において、競業により、自社の正当な利益を害する場合には、副業・兼業を禁止又は制限することができることとしておくこと
・副業・兼業を行う労働者に対して、自社の正当な利益を害することがないよう注意喚起すること
・他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと等が考えられる。(第162回労働政策審議会・労働条件分科会資料2「副業・兼業の場合の労働時間管理について」より抜粋)

労働政策審議会・労働条件分科会(162回)資料(厚生労働省)