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【百人一首】(ながらへば/八四・藤原清輔朝臣)

ながらへばまたこのごろやしのばれんうしと見しよぞいまは恋しき
(八四・藤原清輔朝臣)

【解釈】

この先ももし長く生きながらえたとしたら、やがて今のつらさも懐かしく思い返す時が来るのだろうか。人生はこんなに苦しく厳しいものかと思っていたあの頃が、今となってはたまらなく恋しいのだ。

なんだか暗い歌です。
子供の頃は、この歌の良さがさっぱり分からなかったような気がします。

出典は新古今集 雑下 一八四三。

作者は藤原清輔朝臣。平安末期の十二世紀を生きた人です。
六条藤家3代にあたり「奥義抄」「袋草紙」の作者。平安時代の歌学を大成した人物とも言われています。

とはいえそれほど華々しい人生という訳ではなさそう。
父との折り合いが悪く、40代くらいまで位階は従五位下と、あまり出世もしていなかったようです。

この歌は、それなりに年を重ねてからいろいろ振り返って詠んだのかな。

複雑な技巧はなく、シンプル。最後の係り結びから生まれるさりげない余韻が美しく、大人の哀愁が漂います。

暗いけれどそんな美しさがあるせいか、救いのなさは感じません。
むしろ最悪期を脱したからこそ言えるのかな、という印象です。

まあ長く生きていれば、誰しもそれなりに大変な目に遭うもの。

なんとなく藤原清輔の言いたいことは分かる気もするのです。
自分も年をとったと言えばそれまでかもしれないけれど。

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