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【百人一首】わすれじの(五四・儀同三司母)

わすれじの行末まではかたければけふをかぎりの命ともがな
(五四・儀同三司母)

【解釈】

いつまでも私をずっと愛してくださるとあなたはおっしゃるけれど、遠い未来のことはわからない。いっそそんなふうに言ってもらえた今日限りの命であったら良いのに。

前回の右大将道綱母の歌に続いて、重めの女シリーズが続きます。
作者は儀同三司母(ぎどうさんしのはは)、中宮定子のお母さんにあたる人ですね。

出典は新古今集 恋三 一一四九。
「中関白通ひそめはべりけるころ」という詞書がついているので、藤原道隆との恋が始まって間もない頃に詠まれた歌なのでしょう。

名作の誉れ高い歌ではありますが、個人的には何だかあまり共感できないなと思います。

つきあいたての恋人に向かって、あなたの愛が未来永劫続くなんて思えないからもう今死んでしまいたいと言う女。重いです。そこはかとないメンヘラ感すごい。

それでも、平安時代の女性には共感を集めまくる歌だったのかな。

関白の妻、中宮の母として栄達を極めたかに見えて、道隆亡き後の晩年はあまり幸せではなかった儀同三司母。
今日限りで命が尽きればいい、と思ったその感覚は、案外すんなりと受け入れられるものだったのかもしれません。

技巧に凝るわけでもなく、ストレートに気持ちを詠んだところもこの歌の魅力のひとつなのでしょう。

とりわけ、結句の「命ともがな」の切ない余韻。

やさぐれているようで、それでもどこか激しい情熱を秘めていて、胸に迫るものがあります。

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