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【百人一首】心あてに(二十九・凡河内躬恒)

心あてにおらばやおらむ初霜の
をきまどはせるしらぎくの花
(二十九・凡河内躬恒)

【解釈】

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当てずっぽうに白菊の花を折ってしまおうかな。
初霜が降りて真っ白になって、どこまでが霜なのか花なのか、白菊の花がどうにも私を惑わせるのだ。

出典は古今集、秋下 二七七。
作者である凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は三十六歌仙の1人。
生没年は未詳ですが、古今和歌集の選者の1人ですから紀貫之などと同時代、平安前期に生きた人でしょう。

白い花が霜にまぎれてぼんやりと浮かんで、白菊の花なのか一面に降りた霜なのかよく分からない。

古今集らしい世界観であるし、また百人一首の選者である藤原定家がいかにも好みそうな雰囲気だな、とも思います。

ぼんやりと幻想的なのに透明感がある不思議な歌です。ちょっと漢詩っぽい趣もありますね。

晩秋、というか初冬でしょうか。身の引きしまるような寒さの中、まだ薄暗い朝。白い花に霜が降りた庭を眺めて、そんな歌を詠む。風流ですね。

「白菊の花」という体言止めも、ほんのりさびしい余韻が効いています。

若い時頃はこの歌について、白い花と霜の区別がつかないって目悪すぎじゃない?なんて思っていたのですが、最近は分からないでもないな、と思うようになりました。これも年のせいかな。

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