【百人一首】(長からむ/八〇・待賢門院堀河)
【解釈】
大人の恋の歌やなあ、とローティーンの頃から心惹かれる歌でした。
お泊まりして別れた後の恋人へ贈る、いわゆる後朝(きぬぎぬ)の歌です。
出典は「千載集」恋三 八〇一。
作者は待賢門院堀河(たいけんもんいんほりかわ)。
平安後期の人ですが生没年は未詳です。中古三十六歌仙、女房三十六歌仙のひとりで、西行とも親交があったようです。
恋しい人と過ごした翌朝、ひとりでまだ寝床にいる女。ほんの少し気だるくて、淋しくてちょっと不安で、そんな気持ちがよく現れています。官能的なのだけど、ピュアな恋心も感じられるのがすごい。
お泊まりの翌朝に、あなたと過ごして乱れた黒髪が云々なんて詠まれたら、またすぐにでも会いに行きたくなってしまいそうです。
狙ってセクシーな表現にしたのであれば、待賢門院堀河はなかなかモテる女だったのかもしれません。
明治時代には与謝野晶子が「みだれ髪」を歌っているし、情事で寝乱れた黒髪という表現は現代の私たちでもドギマギしてしまいます。
そんな価値観を作ったもののひとつが、間違いなくこの待賢門院堀河の歌なのでしょう。
とは言え、崇徳院がオーダーした「久安(きゅうあん)百首」に収められた歌です。実際に恋人に贈ったというよりは、あくまでもテーマに沿って創作した作品と見るむきもあります。
実際のところは分からないけれど、本当は若い頃ちょっとつれない片思いの相手に送った歌をしれっと再利用、とかだったらすごいです。
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