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【百人一首】風をいたみ(四十八・源重之)

風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものをおもふ比(ころ)かな
(四十八・源重之)

【解釈】

風がひどく吹くので、岩にぶつかる波が激しく砕け散る。岩はびくともしないというのに。
そんなふうに、あなたが岩のように心を動かしてくれないまま、私の思いだけが千々に乱れる今日この頃だ。

出典は詞花集 恋上 二一〇。

作者は源重之(みなもとのしげゆき)。清和天皇を曽祖父に持つ、平安中期の歌人です。
清和源氏ですから、源頼朝の祖先にあたる人でもありますね。

三十六歌仙の1人で、生年は未詳ですが1001年没と伝えられます。

さて、さっぱりふりむいてくれない相手にあれこれ思いをめぐらせてはフラれたおす、片思いの切なさを詠んだ歌です。

東尋坊的な風景を勝手に想像していたのですが、特にモデルとなる場所は伝わっていません。旅先などどこか特定の場所で詠んだものではなく、前半はただの序詞と見られています。

それでもダイナミックな描写で、リアルな風景が想像できますね。

冷たい態度の相手に、自分ばかり心が砕けそう。
岩にぶつかって砕け散る波にたとえるなんて、なかなか激しい思いです。

自分の恋しい人がそんなふうに思っていてくれたらうれしいけれど、まったく興味のない相手だったらちょっと重いかな。
片思いのつらさはよくわかる一方で、そんなふうにも思います。


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