見出し画像

【百人一首】夏の夜は(三十六・清原深養父)

夏の夜(よ)はまだ宵ながら明ぬるを
雲のいづくに月やどるらむ
(三十六・清原深養父)

【解釈】

画像1

夏の夜は短くて、まだ宵の口だと思っているうちに夜明けが来てしまった。
月もまだ出ていて、とても隠れる時間はなさそうだ。いったいあの月は雲のどこに宿をとるのだろう。

名歌ですね。百人一首の中で好きな歌ベスト5に入ります。
出典は古今集、巻第三 夏 一六六。

作者は清原深養父(きよはらのふかやぶ)。生没年は未詳ですが平安前期頃です。清原元輔の祖父であり、清少納言のひいおじいちゃんに当たる人です。深養父は三十六歌仙には入っていませんが、百人一首に3人も選ばれるなんて、この家系やっぱりすごい。

詞書には「月のおもしろかりける夜、暁がたによめる」とあります。

明け方まで月を眺めて過ごしていたなんて、雅ですね。
ぼんやりと1人でもの思いにふけっていたのか、それとも愛しい人と語り明かしていたのか。

早すぎる夜明けを惜しんでいるような歌だから、後者なのかな。月が西の山に隠れるヒマもなさそうだなんて、センスのいい言い回しです。

さらりとした質感で情景を詠んでいるのに、どこか思わせぶり。

晩年は洛北、岩倉あたりに住んでいたとされる清原深養父ですが、この歌はどこから見た月だったのかな。暑い京都の夏、夜にはいくらか涼やかに過ごせたのかもしれません。ひ孫の清少納言も枕草子の冒頭で「夏は夜」なんて言っています。

晩秋になって、日の入りがすっかり早くなってきました。夏の短い夜が、少しだけ恋しくもあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?