見出し画像

【百人一首】みかきもり(四十九・大中臣能宣)

みかきもり衛士(えじ)の焼(たく)火の夜はもえ昼は消えつゝ物をこそおもへ
(四十九・大中臣能宣)

【解釈】

御垣守(みかきもり)である衛士が焚く火。漆黒の夜にはあかあかと燃え、昼にはひっそりと消えている。
私の恋心も夜には燃え上がり、昼にはすっかり消え入るような気持ちで、物思いを繰り返しているばかりだ。

出典は詞花集 恋上 二二四。

作者は大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)。平安中期の歌人で、村上天皇の時代に「梨壺の五人」の1人として清原元輔や源順などとともに活躍しました。

万葉集を読み込んだり後撰和歌集の編纂をしたりという実績があり、自身が歌よみにたけているだけでなく、古来の歌全般に造詣の深い人だったのでしょう。

前半はいわゆる序詞にあたりますが、夜の闇に浮かぶかがり火、というビジュアル的な美しさが際立ちます。

「みかきもり」とは宮中で門を守る、警備員のようなお仕事です。衛兵、という感じかな。

真夜中の暗闇で、こうこうと焚かれる火。静寂の中でパチパチと燃え盛る炎。そんな恋心、なかなか激しめです。

夜更けにめらめらと燃え上がって、一転して昼間はテンション激落ちの繰り返し、というのも何だか一方的に暴走している感もありますが、夜にはデートしているから、ということなのかしら。

恋人と激しい夜を過ごして、朝になって別れた後はぼんやりして抜け殻みたいになってしまう。
片思いなのかと思いきや、がぜん大人の色恋のお話なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?