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【百人一首】有明の(三十・壬生忠岑)
有明(ありあけ)のつれなくみえし別(わかれ)より
暁(あかつき)ばかりうきものはなし
(三十・壬生忠岑)
【解釈】
十六夜を過ぎて、空に有明の月が見えていたあの日、ずいぶんつれなく、追い返されるようにして別れた。あの日から、暁ほど辛いものはないのだ。明け方の月は真っ白で、実に冷たくそっけない。
出典は古今集、恋三 六二五。
作者である壬生忠岑(みぶの・ただみね)は三十六歌仙の1人。
前回の凡河内躬恒と同じく、古今和歌集の選者の1人でもあります。
はっきりとフラれた訳ではないけれど、明らかに自分以外の誰かに心変わりをしていた恋人。
あれが最後のデートになるのかな、みたいに思った経験は、誰しも一度くらいはあるのかもしれません。
朝になっても空に残っている有明の月。
歌のモチーフとして美しく切ないものだけれど、この歌ではひとしお冷たく感じられます。
むしろ、まだ一緒にいたいのに朝になったからもう別れなければいけない、そんな時に見えるのが有明の月。恋しい人と名残惜しい気持ちを象徴するもののイメージです。
こんなふうに有明の月を詠むやり方もあるのだな、と思います。さすが壬生忠岑。
決して大げさに嘆いているわけでもないのに、じわっと心に響く歌です。恋の終わりって、案外そんなものかもしれません。
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