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【徒然草】春暮れて後、夏になり(第百五十五段)
春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気を催し、夏より既に秋は通ひ、秋は即ち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅も蕾みぬ。木の葉の落つるも、先づ落ちて芽ぐむにはあらず、下より萌(きざ)しつはるに堪へずして落つるなり。迎ふる気、下に設けたる故に、待ちとる序(ついで)甚だ速し。
【解釈】
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春が終わった後に夏になり、夏が亡くなってから秋が来るのではない。
春はすぐに夏の気配を含んでくるものだし、夏の間からすでに秋が迫っている。秋になったかと思うとたちまち寒くなる。かと思えば10月は小春日和で草も青くなり、梅の蕾がふくらむこともある。冬もあるのにいそがしい。
そもそも秋に木の葉が落ちるのも、まず葉が落ちて次の芽が出るわけではない。下から新たな芽吹きの兆しがあるから落ちるのだ。次の世代を迎える下地がしっかりとあるからこそ、ものすごい速さで動いていくのだ。
札幌の秋が深まっています。10月下旬になり、街中もすっかり紅葉してきました。
朝晩の気温は一桁。寒いです。
もうすぐそこに冬が来ていることは分かっていながら、みんなして気づかないフリをしているのが札幌の秋なのかもしれない。と最近思うようになりました。
まあ、ヌルッと季節が移り変わって、そのスピード感がすごいと思うのは本州でも九州でもあるあるですね。
そんな切れ目のない季節の変化、人の手の及ばない大きな自然の営み、みたいなものを些細なことからも感じ取り、受け入れるというのはいかにも兼好法師らしい視点かもしれません。さらりと読めて、文体も美しい。
次があるって分かってるからサクサク入れ替わるんだ、というのは深い考察ですね。紅葉すごい、ってちょっと思ってしまう。
ただし、この段には今回抜粋した前後にも続いていて
「世の中に爪痕残したい系の人はとにかくタイミング大事」
「でも生老病死みたいなことはこっちの都合完全無視」
「四季の移り変わりは早くて連続的なもの」
「季節の変化は順序があるけど死ぬのはマジで順番無視で急にくる」
みたいな流れです。冷静に読んでみると、で、何の話ですかっていう感じがなくもない。
悟っているような煙に巻いているだけのような、このつかめない感じがまた何とも徒然草感。
とりとめのないエッセイに、オチを求めるのも無粋なのかもしれません。
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