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【百人一首】あまつ風(十二・僧正遍昭)

あまつ風雲のかよひ路(ぢ)吹とぢよ
乙女のすがたしばしとゞめん
(十二・僧正遍昭)

【解釈】

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天を吹く風よ、雲の通り道を吹いて閉ざしてくれ。
はかなく去っていく天女たちの姿を、今しばらくここにとどめておきたいのだ。

六歌仙のひとり、僧正遍昭の作です。古今集から。

僧正遍昭という表記になっているものの、この歌は僧侶になる前の30代ごろに詠まれたと言われています。ちなみに彼の俗名は良岑宗貞(よしみねのむねさだ)といい、桓武天皇の孫にあたる人物なのだそうです。さっき知りましたが、有名な話なのかな。

この歌には、大嘗祭で披露された五節(ごせち)の舞を見て、舞姫を天女に見立てたという何とも雅な背景があるようです。

清楚で可憐な舞姫たちの姿には、ほんの少しセクシャルな雰囲気も感じ取れて、奥深い趣があります。

個人的には、百人一首の中でベスト5に入るくらい好きな歌。

その瞬間のはかなさと、その後に長く残る切ない余韻。
あますことなく三十一文字にぎゅっと閉じ込めた名作だと思います。


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