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【百人一首】このたびは(二十四・菅家)

此(この)たびはぬさもとりあへず手向山(たむけ山)
紅葉(もみじ)のにしきかみのまにまに
(二十四・菅家)

【解釈】

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今回の旅は全くもって急なことで、ささげ物である幣をお供えすることもできないでいます。
この美しい手向山の紅葉を、どうか幣としてお受けくださいませんか。
神の御心のままに。

出典は古今集、巻九 羈旅 四二〇。
作者は菅家、菅原道真です。

宇多上皇が吉野方面へ行幸した際に詠んだ歌であると言われています。
道祖神への捧げ物がないからと見事に色づいた紅葉をお供えするだなんて、いかにも雅。
情景が鮮やかに目に浮かぶ、美しい歌です。

「この度」と「この旅」、「手向山」とお供物を「手向ける」などの掛詞など、リズミカルな技巧の美しさ。旅情をかき立てる余韻。
さりげなく見えて抒情的な歌です。

のちに藤原時平に敗れて太宰府に流されてしまう道真ですが、こんなに歌や学問にたけた人だったのなら、政治の中枢になんて行かなければ良かったのに、とも思います。

ちなみにこの手向山というのが一体どこであったのか。実は正確には分かっていないとする説もあるようですね。

東大寺法華堂と春日大社の間にある「手向山八幡宮」の辺りだとばかり思っていました。

手向山八幡宮周辺は桜もいいけれど、今なお紅葉の美しいエリアでもあります。秋の奈良、また歩いてみたい。

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