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【旅の短歌】宗谷本線・南稚内(北海道)

ようこそとプラカード持ち跳ねる子を過ぎて列車は最北へ行く

札幌にいつまで住むのかはまだ分からないけれど、札幌暮らしの間にJR北海道の全路線に乗りたいと思っています。
昔に比べると駅も路線も減っているので、そこそこ簡単に達成できてしまいそうな気もします。

宗谷本線に乗って、終点の稚内まで行ってきました。

札幌から5時間以上もかかる、長い長い鉄道の旅です。

特急列車は芒洋としたサロベツ原野を抜けて終点のひとつ手前、南稚内の駅に近づくと減速を始めます。

ゆるいカーブにさしかかった瞬間、車窓の先に「稚内へようこそ」と書かれたプラカードを持って跳ねている小さな子供の姿が見えました。

特急「サロベツ」に向かって蛍光色のパネルを一生懸命振っている姿がとてもいじらしくて、そんな一期一会の風景がいかにも旅情をそそって、何だか泣きそうになりました。

あわてて全力で振り返した手は、ちゃんとあの子から見えていたのかな。

そのあと列車はするりと南稚内駅へ停車し、ほどなくして定刻どおりに最北端の稚内駅に到着しました。

稚内は本当に最果て感のある街で、特に何もせずとも遠くへ来たなという実感があります。

港の風景も、海や空の色も素晴らしかったけれど、ずっと後になって思い出すのはプラカードを持って飛び跳ねていたあの子かもしれない。そんなふうにも思います。

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