【百人一首】奥山に(五・猿丸大夫)
奥山に紅葉ふみ分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋はかなしき
(五・猿丸大夫)
【解釈】
深い山奥で、一面に積もった紅葉をふみ分けて鳴く鹿の声が聞こえる。
物悲しい秋の日である。
猿丸大夫は謎の多い人で、生没年も出自も分かりません。
奥山とは一体どこなのか、時代を考えれば奈良のどこかの山なのかな。鹿のイメージに引っぱられているだけかもしれないけれど。
この歌の解釈において常に問題になるのは、「奥山にもみじを踏み分けているのは誰か」という点です。鹿なのか、それとも作者か。
「鹿」と見るのが一般的で、藤原定家の時代ならば、歌会で屏風に描かれた紅葉と鹿の絵でも見ながら詠んだ歌と考えても良いくらいだ、と学生時代には習いました。
でも、できれば作者自身が一面に降り積もった紅葉をかさかさと踏みながら秋の山を歩いていて、ちょっと心細い気持ちで鹿の声を聞いている、という歌であってほしいな。
その方がずっと趣があるし、ちょっとひんやりした秋の空気が伝わってくるような気がします。
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