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【百人一首】(難波江の/八八・皇嘉門院別当)
難波江(なにはへ)のあしのかりねの一(ひと)よゆへ身をつくしてや恋わたるべき
(八八 ・皇嘉門院別当)
【解釈】
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難波の岸辺で、刈り取った芦の根元(刈り根)の一束(ひとよ)、その仮寝のたった一夜の出来事が忘れられない。我が身を尽くして、あなたを恋しく思うのです。
ワンナイトの恋が忘れられない、というちょっと刺激的な歌。
出典は「詞花集」恋上 二二九 。
「旅宿に逢ふ恋」というお題のもとで作られた歌です。
作者は皇嘉門院別当(こうかもんいんべっとう)。平安末期を生きた人です。
皇嘉門院、藤原聖子(摂政・藤原忠通の娘)に仕えた女房であったことからこのように呼ばれています。時代は少し違うけれど、紫式部や清少納言みたいなポジションですね。
さて、解釈。なかなかに技巧多めの歌です。
難波江は歌の世界によく出てくる大阪の入り江。芦の群生地です。
この難波江に、芦・刈り根・一節・澪標(みおつくし)が縁語。
「かりね」は刈り根と仮寝の掛詞、「ひとよ」は一節と一夜の掛詞になっています。ややこしい。
それでも、ちゃんと伝わるのがすごいところ。
これでもかとたたみかけてくる技巧に、係り結びの言い切りの強さ、切ない余韻。詰め込まれているようで、余白がちゃんとある。上手いなあ、と思わずにはいられない歌です。
通い婚の時代、会いに来てくれなくなった恋人やつれない夫を待ちわびたり、なじったりする歌はたくさんあるけれど、ここで詠まれているのは行きずりの相手です。
はかないけれど甘美な恋。かりそめの愛。何とも独特の趣があります。
一夜限りの相手に、身を滅ぼすほどに恋焦がれる。
残念ながらそういう経験はないけれど、少しだけ分かるような気もするのです。
短く、はかなく終わった恋ほど忘れられないなんていうことも、案外真実なのかもしれません。
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