【百人一首】かくとだに(五一・藤原実方朝臣)
【解釈】
なかなかに技巧の入り組んだ歌ですね。
出典は後拾遺集 恋一 六一二。
作者は藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)。花山院の時代などに活躍した歌人で、清少納言とも交流があったと(一説によるとおつきあいしていたとも!)言われています。
詞書には「女に始(はじめ)て遣(つかはし)ける」とあります。片思いの相手に最初に贈った歌なのかな。
リズミカルで響きの美しい歌ではありますが、ややこしめです。
古文の授業でいきなり出てきたら、ちょっと何言ってるか分からないなって思ってしまうかも。
まずは「さしも草」って何やねん問題ですが、お灸の材料になったりするモグサ(ヨモギ)を表しています。よく燃える草、というイメージでしょうか。伊吹山で採れるものが有名でした。
滋賀と岐阜の県境にあるのが伊吹山。
岐阜生まれの私にとっては、なじみ深い山です。冬には「いぶきおろし」という冷たい風が吹きます。
解釈に戻ると、「いぶき」が「言ふ」と「伊吹山」をかけた掛詞。さらに「いぶきのさしも草」が4句目の「さしも」への序詞。「思ひ」も思いと「火」が掛詞っぽいし「燃ゆる」「火」「さしも草」は縁語でたたみかけています。
ちょっと技巧が過ぎるような気もしますが、きれいにまとめているのがすごいです。現代語訳ではばっさりカットしてしまったけれど。
こんな凝った歌をいきなりドヤ顔で贈られたらしつこいかもしれないけれど、燃えるような恋は実ったのでしょうか。
それとももうお互いの心が通い合っていることは充分に知った上で、オレの方がずっと君のこと好きなんだよ、っていう気持ちで詠んだのかな。
そんな気もします。
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