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【百人一首】難波がた(十九・伊勢)

難波(なには)がたみじかきあしのふしのまも
あはで此(この)よを過(すぐ)してよとや
(十九・伊勢)

【解釈】

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難波潟に生えている短い葦、その節と節の間のようなほんの短い間でさえも、会うこともなくこの世を過ごせと、あなたはおっしゃるのですか。

出典は新古今集 恋一の一〇四九。
作者は伊勢、三十六歌仙の一人です。生没年は分かっていません。

つれない恋人に会えないつらさを詠んだ、名作と名高い恋の歌です。
言葉づかいは巧みできれいなのだけど、淋しさや切なさを詠むというよりは相手をなじるような強さがあって、情熱的な雰囲気がいい。

恋多き女性というイメージがある伊勢ですが、この歌をみると確かにそうかも、と思います。恋しい気持ちをこんなに強く、こんなに美しく歌にのせられるのって素敵です。

実際のところ伊勢は宇多天皇の中宮温子に仕え、温子の兄、宇多天皇、宇多天皇の皇子などとの恋愛遍歴があります。

多感で魅力的な人だったのでしょう。

難波潟は、大阪湾のこと。
前回の住之江もしかり、現在の大阪湾は埋め立てが進んで人工の海岸線ばかりのため、平安時代の様子をうかがい知るのはなかなか難しいかもしれません。

この歌に詠まれているように、当時は葦の生える干潟が広がっていたのでしょうか。

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