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【百人一首】ひさかたの(三十三・紀友則)

久堅(ひさかた)のひかりのどけき春の日に
しづ心なく花のちるらむ
(三十三・紀友則)

【解釈】

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おだやかな日の光がのどかにさしている春の日だというのに、
なぜ落ち着いた心も持たないで、桜は急ぎ散っていくのだろう。

出典は古今集、春歌下 八四。

作者は紀友則(きのとものり)。
時代は平安前期、紀貫之のいとこにあたる人です。古今集の選者の1人であり、三十六歌仙にも名を連ねています。

枕詞などはあるけれど、歌としてはとてもシンプルで分かりやすい。
それでいて、情景だけでなく、あたたかい日差しや春の匂いまで感じられるような、表現力豊かな歌です。

よく晴れてぽかぽかする春の日、はらはらと目の前で舞い散る桜の花びら。

はかなさゆえのちょっと切ない美しさが、過不足なく詠みこまれていると思います。

美しい余韻が残るのは結句の「ちるらむ」の効果でしょうか。
「らむ」は、推量を表す助詞などと言って古文の授業で覚えたやつです。

何とも雅な響きです。なぜ〜だろう、という問いかけで終わるのがいいですね。

古今集の詞書には「桜の花のちるをよめる」とあるだけなので、紀友則が見ていたのが一体どこの桜だったのかは分かっていません。京都のどこかの桜でしょうか。

今年(2021年)の春は、久しぶりに京都で満開の桜を見られました。写真は円山公園の枝垂れ桜。

賀茂川沿いや、疏水あたりもきれいでした。来年も見に行けるかな。

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