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【百人一首】名にしおはば(二十五・三条右大臣)
名にしおはゞ相坂山(あふさかやま)のさねかづら
人にしられでくるよしもがな
(二十五・三条右大臣)
【解釈】
相(=会う)坂山のさね(=小寝)かづらという名前を持っているのなら、そのさねかづらをたぐるように、人に知られることなく恋しい人をたぐり寄せるすべがあれば良いのに。
出典は後撰集、恋三 七〇一。
作者である三条右大臣とは、藤原定方という人のことです。
「さねかづら」はモクレン科の多年生蔓草。そのさねかづらを添えて女性に送った歌であると言われています。人目を忍ぶ恋の歌ですね。
掛詞も多用されており、技巧に優れた歌です。
ただし「くる」の解釈は大まかにふた通りあって、
・自分が恋人のところへ行く
・恋人を連れ出す
に大別されます。江戸時代、契沖と賀茂真淵のころから解釈が分かれているとも言いますから、なかなかに難しそう。
男性から女性に送った歌であることから「自らが恋人のところを訪ねていく」とするのが自然にも思いますが、恋しい人をたぐり寄せる、という解釈も個人的にはいいなあと思います。
「相坂山」は「逢坂山」とも書き、かの有名な蝉丸の歌に出てくる「相坂の関」があった場所。
逢坂の関を越える=道ならぬ恋に落ちる、という意味合いがあったとも言われています。
滋賀と京都の境あたりの峠を越えるだけで道ならぬ恋に落ちてしまったらだいぶ大変な気もするけれど、古来さまざまなドラマの生まれる山だったのでしょう。
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