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【百人一首】(恨みわび/六五 ・相模)

恨みわびほさぬ袖だにある物を恋にくちなん名こそおしけれ
(六五・相模)

【解釈】

つれないあなたを恨んで、恋しく思う涙で濡れてばかりの袖。そんな着物の袖ですら朽ちてぼろぼろになるのが惜しいのに、この実らぬ恋がおかしな噂を呼んで私の名が朽ちていくことがやりきれないのです。

出典は後拾遺集 恋四 八一五。
内裏で行われた歌合せの席で詠まれたものです。

作者は相模(さがみ)。
相模という呼び名は、役人であった夫・大江公資の転勤で相模国に住んだことからついたようです。

その理論でいくと私は札幌とか呼ばれそうだし、なんかニックネーム雑じゃない?という気もしますが、まあそんなものなのかしら。

さて、中身。

自分を愛してくれない相手を想う、激しい恋の歌です。
恋しい人を恨み、嘆き悲しみ、とめどなく流れる涙をぬぐった袖が乾くヒマもない。

単に気まぐれな相手だったのか、それとも道ならぬ恋だったのでしょうか。ただフラれただけならば、良からぬ噂で評判を落とすというほどのこともないようにも思います。

そして恋にやぶれた自分の名前が汚れるのが嫌だなんて、ボロボロになりながらもどこかで切り替えて、先の人生を見据えているということなのかな。どこか憎めないというか、チャーミングな人です。

恋多き女の匂いがしますね。

これだけ嘆き悲しんでいても、しばらくしたらうっかり次の相手に出会って、新しい恋に落ちていたのかもしれません。


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