「重要伝統的建造物群保存地区」って?
仕事上、筆者はこの言葉を口にする機会が多くある。
その度になんて長ったらしい名前なんだと辟易する。
「じゅうようでんとうてきけんぞうぶつ」まで言ったあたりで、相手の頭に???が浮かんでいるのが分かるからだ。
だから知っている人は“重伝建”と略すようになる。
(これはこれで変換がなかなか上手くいかない)
重伝建は歴史ある町並みを保存・活用するために設けられた国の制度だ。
あまり聞きなじみのない制度だとは思うが、選定地は有名な場所が多い。
角館、川越、妻籠宿、白川郷、伊根浦、倉敷川畔、温泉津、飫肥など。
1975年の制度発足以来、選定を受けたのは全国126地区に及ぶ。
選定地区を持たない都道府県は山形、東京、神奈川、熊本だけになった。
新潟県では佐渡の宿根木が唯一選定を受けている。
制度の特徴は、対象を建造物“群”としたことにある。
建物単体ではなく、地区全体を守り継いでいくための制度なのだ。
裏を返せば、一般の住宅が文化財になってしまうということでもある。
そのため所有者に過大な負担をかけぬよう、選定を受けると手厚い補助が受けられるようになっている。
歴史ある建造物を昔の姿に近づけるために行われる“修理”
近年の建物を周囲の景観と調和させるために行われる“修景”
これらの事業に対し、9割の補助が出る(宿根木の場合)。
もちろんある程度の規制がかかるとはいえ、とんでもない制度だ。
佐渡で、新潟で2つ目の重伝建地区を目指して―
前述の宿根木から車で10分ほどの場所にある小木町。
ここでは数年前から重伝建選定を目指した取り組みが続けられている。
重伝建に選定されるためにはいくつものステップを踏む必要がある。
まず必要になるのが保存対策調査の実施だ。
これは町並みの価値を明らかにするための調査で、自治体から委託を受けた大学や研究機関によって行われる。
小木町では、令和3年度から2年間に渡る調査が実施された。
調査の成果は報告書にまとめられ、一般市民でも読むことができる。
この報告書は今後のまちづくりを考える上で“バイブル”となるだろう。
自分の住む町をこれだけ詳しく知れるのは貴重なことだと思う。
出来上がった報告書を基に佐渡市は伝建地区決定のための手続きを進めている。
保存地区の範囲や補助率を決め、物件の所有者から同意を取得してきた。
令和5年の12月には重伝建一歩手前の“伝建地区”となることが決まった。
その後、国に対して申出をし、特に価値が高いと認められれば、晴れて重伝建地区に選定される見込みだ。
一度選定を受ければ、この先何十年、何百年と町並みを守り継いでいくことになる。
これを重荷と捉える人も当然出てくるだろう。
しかし、このまま高齢化が進み、空き家、空き店舗が増えていけば、地域が立ち行かなくなってしまうのは明白だ。
重伝建に選定されれば、町を訪れる観光客が増え、そこで商売を営みたい個人、企業が現れ、行き来する人や移り住む人が増えていく。
まさに“選ばれる町”を実現するための一丁目一番地だと言える。
そのためには、選定を受けたことに慢心せず、制度を活かして小木の町を守り育てていくという想いを持ち続けなければならない。
重伝建選定は決してゴールではない。
スタートなのだ。
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