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伝わらない

 いつになれば彼女に触れられるのだろう。僕は今猫を飼っている。彼女の名前はもちである。名前の理由は毛が白いからだ。彼女が来て半年ほど経過したが僕はまだ彼女に触れる事ができない。
 モチは保護ネコだった。多頭飼いされた中の1匹だったらしい。彼女との出会いの話はまた詳しく書ければいいなと思っている。

 最近僕たちの生活に少しの変化があった。なんの前触れもなくモチが鳴き出したのである。今ままではうんともすんとも言わず同じ家の中でただ同居しているだけの関係だった。詳しく話すと僕がご飯やおトイレの世話をして彼女は遠くからその姿を見つめ僕が去ったらご飯を食べ綺麗になったトイレにうんこをするという主従関係が構築されていた。

 話した日の事は凄く鮮明に覚えている。僕が自分の部屋で仕事をしているとチコチコ歩いて僕の部屋に入ってきたモチがお利口さん座りをしたのち急に「ニャオニャオ」言い出した。彼女の声は僕の家に来た時にストレスでゲージ内で「アオーン」と鳴いていた時ぐらいしか聞いた事なかった。

「君はそんな声で鳴くんだ」とか「え?なんで急に?」とか「どっか体調悪いのか」などポジティからネガティブよりどりみどりの思いを僕馳せていた。
 「おそらく僕の部屋の窓から外を見たいからどいてくれ」の「ニャオニャオ」だと思う(あくまで推測)。
 まあ色々書きましたがとりあえず最初に嬉しかった。反抗期が抜けた子供に会話してもらえた親ってこんな気持ちなのかな。

 なんか最近「言わないと伝わらない」という事が多い気がする。最近友人が急に離れていった。結局その理由は何も話してもらえず、忙しいの一言で一切の連絡を断たれた。「断たれたら」というか「暇になったらこっちから連絡する」というおそらく永遠に暇にならないのだろうと容易に推測できる常套句で終焉を迎えた。
 まあ僕が何か相手の嫌な事をしたのだろう。「申し訳なさ」と「寂しさ」と原因がわからない時点で「この対応されても仕方ないかな」と思いつつ「嫌なら嫌って言ってくれよ」とも思った。

 「伝える」って簡単なようで難しいし、伝えない人が年齢を重ねた方が多くなる事に今更ながら気づいた。まあ「言わなくてもわかるよね大人なんだし」という事なんだろう。そしてなんとなく感じ取れてしまうのがまた凄く嫌だ。
 
 それからというと友人からの連絡が途絶えたがモチからの要望は増えるばっかりである。鳴くことができるのを初めて気づいたかのように最近は彼女の近くに行くと「ニャゴニャゴ」いってくるのである。そして何を要望しているのかはまだわからない。そしてまだ触らせてはくれない。

 全く本当にもう、かたや伝えなくても嫌でも伝わるし、かたや知りたいのに全然意図がわからないし、動物ってめんどくさいな。
 

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