ベンチャーキャピタリスト的・北アフリカ「マグレブ3国」の歩き方 ーはじめにー
このNoteを書くきっかけ
はじめまして!Sunny Side Venture PartnersのSadaです。当VC(ベンチャーキャピタル)は、昨年半ばに、日系VC初の北アフリカフォーカスファンドとして立ち上がりまして、現地に根差しながら投資を開始して約1年、これまで主にエジプト(一部スーダン)を中心に、計9社に投資実行をしてまいりました(現在10社目を検討中)。メインマーケットであるエジプトのスタートアップ事情やマーケットの魅力はこちらの対談記事でも詳しくお話をさせて頂きましたので、今回は、その他の北アフリカマーケットを構成するモロッコ・アルジェリア・チュニジア、いわゆる「マグレブ3国」について、お話させて頂きたいと思います。2年目に差し掛かるタイミングで、さらに投資対象地域を他の北アフリカの国まで広げるべく、モロッコ・アルジェリア・チュニジアを2023年5月末~6月上旬に渡って2週間、濃厚に(?)訪問してきました(LinkedInのConnectionを数えるだけでも150~200人ぐらいには会えたかと思います)。今回Noteを書こうと思い立ったのは、その興奮冷めやらぬ内に、日本にはまだまだ知られていないと思われるマグレブ3国のHotなスタートアップ事情・エコシステム状況を日本語で残しておきたいと思ったのがきっかけです。初Noteのため読みづらい部分もあるかと思いますが、是非お付き合いください。北アフリカで、ひいては、ラストフロンティア・マーケットとしてますます活発になりつつある「Middle East and Africa(中東・アフリカ地域)」で、未来に向けて新たな産業を創るべく突き進むスタートアップ・シーンに、このNoteで少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
今回はまずプロローグとして、マグレブ3国がどんな地域か、概況をご紹介させてください。
マグレブ3国ってどこにあるの?
これが、マグレブ3国の位置関係です。
「マグレブ(Maghreb)」とはアラビア語で「日没(Sunset)」を意味する言葉で、「西方のアラブ諸国」を意味します。これに対して東方のアラブ諸国は「マシュレク(Mashriq)」と呼ばれ、アラビア語で「日の出(Sunrise)」を意味するそうです。この地図を見ると、良く分かりますね。
マグレブ3国の共通点としては、主な宗教がイスラム教スンニ派であること、また、アラビア語が公用語でありつつ、旧宗主国であるフランスの影響でフランス語も幅広く通じることがあります。反面、英語は通じづらいため、私は今回、基本的に英語一本足打法で強硬突破しようとしたのでタクシー等で苦労しました(笑)。
マグレブ3国の特長は?比較してみよう
こちらがマクロデータの一覧です。これを眺めていると、いくつかの特長が読み取れます。
まず、人口規模。各国単体ではそこまで大きくないように見えますが、実はマグレブ3国を足すと、アフリカ2位の人口を誇るエジプトにも匹敵することが分かります。加えて経済規模も魅力的です。2022年、この3か国のGDPを足し合わせた経済規模(約$380B)は、アフリカ1位のナイジェリアのGDP(約$477B)に僅差で届かずにアフリカ2位となったエジプトのGDP(約$475B)にはやや届きませんが、アフリカ3位の南アフリカ(約$406B)に肉迫するような経済規模です。西サハラ領土問題でモロッコとアルジェリアの政治関係は良好ではありませんが、元々文化背景を共にしていて、宗教・言語が近しいマーケットであるマグレブ3国には、地域マーケットとしてのポテンシャルが存在しています。現に、アルジェリアとチュニジアの間では政府間で互いの国のスタートアップをサポートし合おうとする動きも出てきており、また、民間レベルではアルジェリア発スタートアップがモロッコにも進出しているケースがあります(このあたりは各国篇でまたお話します!)。
加えて購買力もサブサハラやインドに比べて比較的高いことが特長です。一人当たりGDPは$4,000前後で、これはエジプト($4,553)には及ばないものの、フィリピン($3,623)、ベトナム($4087)、インドネシア($4,798)といった東南アジアの成長国にも近い数字となってきています。
さらに、都市人口率やインターネット普及率も比較的高く、インフラの成熟度を示すAIDI(AIDI: Africa Infrastructure Development Index。アフリカ開発銀行が発行するインフラ開発度数。①Electricity、②Transportation、③ICT、④Water and Sanitationの4つの観点から評価)においてもアフリカトップクラスの国々であることから、都市型のtoCビジネスやTech-enabledなtoBビジネスを行うスタートアップたちが出てくる土壌がすでにあると言えます。
そんな比較的高い購買力やインフラ成熟度を持ちつつ、人口構成は(サブサハラの雄であるナイジェリアやケニアほどではないものの、)まだまだ若者が多いのが特長で、年齢中央値や人口構成はインドと同程度というのが、マグレブ3国の市場の魅力でしょうか。これからまだまだ伸びる市場です(ちなみに日本の年齢中央値は48.6歳です・・・圧倒的な差ですね)。
ちょっと話が堅くなってしまったので、最後にマグレブ3国の情緒あふれる風景をお届けして、終わりたいと思います(笑)。次回、各国篇もお楽しみに!
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