解決しなくていい悩み
『ありがとう。楽になれたぞ』
(そいつは目出度ぇことだ)
『金を稼ぐことに囚われてた』
(ムリねえよ。ご時世だもんな)
『再起動できたね。言われた通り空を見上げていたら、雲がふんわりゆったり流れてさ』
(たまにはいいもんだろ)
『問題は解決してないけど、一瞬でも解放されたというか……逃げてるだけかもな』
(かっかっか。そのままでいいんだよ)
☆☆☆
こんにちは!
フジミドリです♡
今回の私物語は、お金に関する幽界見聞録の二巡目となります。
私は眠りに就く前、どうか幽界で遊ばせて下さいと守護の神霊へお願いするのです。
守護の神霊が護って下さる、眠りの間は本来の自分へ戻る、自由自在に寛いで……
全て思い込みに過ぎません。けれど、穏やかに心安らぐ思い込みなのです。
これが私の在り方と言えましょう。
シーズン4も折り返しとなりました。12月3日に完結予定でございます。
では早速──
☆☆☆
『ここへ来ると、起きてる間に悩んで苦しんだあれこれが、スッパリ消えちまうぞ』
(そりゃそうさ。悩んで苦しんでは、肉体があるからこそなんでよ)
『こんな快適なら、もっと楽に生きられるって思うけど、目が覚めたら忘れてる』
(かっかっか。当たり前。なんせ不自由を味わいたくて、あっちに生まれたんだぜ)
☆☆☆
うーん。よくわからない。
幽界にいれば自由自在だ。どうしてわざわざ肉体へ閉じ籠って、不自由な思いをしなければならないのだろう──
(あんたさ。わからねえって思いながらわかろうとしてるの。それじゃわからんよ)
指導霊はチョビ髭の下で白い歯を見せる。細い目の上で太い眉は奇妙に動く。ステテコに腹巻。下駄を履く。薄茶の麦わら帽子。
一方の私はといえば、濃紺スーツでブルーのワイシャツに赤いネクタイ。革靴を履く。
二人は竹細工の長椅子に並んで腰掛ける。
『え。どうすりゃいいんだ?』
(わかる自分になっちまえばいい)
『は。なんだと。わかる自分……』
(神さんみてえなあり方だよ)
☆☆☆
神のようにわかる自分──
なるほど。起きてる間の自分は何もわかっていない。確かにそうだった。
わかっていないから、わかったフリをする。不安だから同調者を求めるのだ。
本当にわかっているなら、話す必要はない。書いて主張するまでもないことだ。
では、指導霊の言う通り今ここで、なんでもわかる自分になったらどうか。
☆☆☆
(何でもわかっちまう存在からすれば、わからないって事が謎なんだよ)
『たーしかに確かに。気づかなかった』
(オイラたちは、元を辿れば神さんに繋がっちまう。神じゃねえものがあるかって話)
『途方もない話だぞ』
(でもそれじゃつまんねえから、こうやって一人ひとりに分かれてるってわけさ)
『つまんない……か』
☆☆☆
全てわかるとつまらない。奇妙な考えだが、なぜかスッと中真へ収まってしまう。
ああ、そうか。
悩みのない自由自在は退屈なのだ。それで、不自由な暮らしを創り出して味わう──
そうだったのか。
☆☆☆
(世の中にある金は、どうにだってできるのさ。それをわざわざ小分けにしてる)
『小分けにしてる……笑っちまうな』
(これはオイラのだ。そっちは誰のってね。世知辛いことやってるわけよ)
『ふうぅ。ここじゃ金の悩みから解放されている。あっちで解決する必要はないか』
☆☆☆
ちょび髭の指導霊は空を見上げる。
隣に座る私もつられて──
抜けるように澄んだ青空
白い雲がゆったり流れていく
(悩みはあっていいの。解決したくて生きるんじゃねぇから。味わうためさ)
『解決しないけど薄らいだよ。どうでもいいかな。もう決まってるんだからねぇ』
(かっかっか。そんなこと言うんじゃ、そろそろあんたも肉体世界は離脱だな)
『裕福な家に生まれついてとか、事業で成功して資産運用ってのはどうなんだろ』
☆☆☆
呟いた途端、見上げる青空に、そんな暮らしが映し出されてきた。
へえ、そうなんだ。
何度も何度も生まれ変わり、裕福になったり成功したり、飽きれば悩んで苦しんで。
私は沢山の人生を味わったのだ。
起きている時は知らなかった。今ならスッとわかる。思い出せたら心地よい。
☆☆☆
(金持ちじゃなくっていいんだよ)
『こっちで自由自在だもんなぁ』
(悩んで苦しんだアンタは偉い!)
『褒められるとは……驚いたぞ』
(自分を褒めてやんなきゃ)
『え。いいのか。これで』
(そのままでいいのさ)
『あああ。いい気分だぜ』
☆☆☆
お読み頂きありがとうございます!
次回の私物語は10月29日午後3時です。恋愛に纏わる幽界見聞録お届け致します。
是非、いらして下さい♡
ではまた💚
ありがとうございます🎊