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幽界にあるお金の物語

(あんたは金が欲しいんだろ)
『え……たーしかに確かに』
(でもよ。なんで欲しいのさ)
『イヤだって、それは当然……』

(金があれば豊かになれるって思う。そいつはね、これまで金に不自由してきたからさ)

答えかけて躊躇ためらう……なのに言葉が流れ出た。どこから漏れるのだ。戸惑う。

(遠慮しなくていいぜ。ここ幽界はそういう場所だ。気を遣う必要なんてねえよ)

抑えた言葉はやっぱり流れ出ていった。

(隠せないんだからさ)

恥ずかしさで耳が熱い。衆人環視の中、着ている全てを脱がされた気分だ──

☆☆☆

こんにちは!
フジミドリです♡

今回の私物語わたしものがたりはお金──収入や資産にまつわる幽界ゆうかい見聞録となります。

このところ毎晩、守護しゅご神霊しんれいに導かれ、幽界探索へいそしむ私です。

その度、案内役をつけて頂きます。

指導霊とお呼びするのです。

私たちと同じ肉体の暮らしを経て、今や霊界で波動の高い領域にんでいらっしゃる。

頼りになるのです。

精神世界スピリチュアル苦手スルーという方なら、幻想小説ファンタジーとしてお楽しみ頂ければ嬉しく思います。

では早速──

☆☆☆

(起きてりゃ本心だって隠せるよ。嘘ついてバレなけりゃね。けどここじゃ、思った途端に伝わっちまうのさ)

『ハラをくくるしかないか』

(そうこなくっちゃいけねえよ。あんたの思ってる何もかもバレバレさ。伝えてくれ)

『オレは金が欲しい。でも、なんで欲しいかなんて、考えたこともないって気づいたよ』

(金が欲しいのは、金のない経験があるからなのさ。ならば、どうしてこれまでない暮らしだったかのってことだよな)

☆☆☆

堂々巡りだ。

金が欲しいのは金のない暮らしだから。なぜ金がないか。金を欲しがったから……

思いは私の周りで渦巻く
比喩的な表現ではない

思いの流れが私を取り巻くのだ。なんだこりゃと恐怖心に包まれた瞬間、私はグイと引っ張られて渦から離れた。

☆☆☆

(ふぅ。あぶねえ危ねえ)
『ありがとう。助かったよ』
(どういたしましてさ)
『怖いところだな、ここは』

(まあな。ある意味こええ。ここは思いが溢れ返っていやがる。取り込まれちまう)

『どうすればいいんだ』
(手放すのさ、あんたの思いを)
『思いを手放したらどうなる』
(すっからかんになるのよ)

☆☆☆

そう言うと彼は高らかに笑った。

顔がハッキリしてくる。眉は濃く、鼻下にチョビ髭。麦わら帽子を被り、ステテコ姿に腹巻き。素足で下駄ゲタ履きだった。

どこかで見た姿なのに思い出せない。滑稽の極みだけれど妙に懐かしかった。

(かっかっか。なら、あんたはどうよ)

☆☆☆

私は自分の幽体を眺める。紺のスーツ。ネクタイを締めたYシャツの首が少し苦しい。

もうすぐ三十歳。営業職。毎日重い鞄を手に都内で歩き回っていた。

ああ、そんな時代もあったよ。

途端に周囲は都会の喧騒やかましさに包まれる。電車の走る音。車の警笛。人いきれ。よどんだ空気。だる夏の暑さ。腰砕けの倦怠感けだるさ

☆☆☆

生活のため、やりたくないことでも金を稼がなければ立ちいかないという強迫観念。

金を稼ぐのは大変だ。苦労しなければならない。何か良くないことでもしなければ──

そんな既成概念で覆われた自分に気づく。

(おいおい。見ろよ。澄み渡る青空。白い雲がゆったり流れてるじゃねえか)

空を見上げて引き込まれる。気がつけば、私は青空いっぱいに広がっていた。

☆☆☆

青空になった私は、既成概念に覆われて身動きとれない自分を外から眺めている。

なんと不自由な姿だろう。

哀れなヤツだぜ──

気の毒になる。助けてやりたい。そうは思うものの、適切な方途ほうとが浮かばなかった。

☆☆☆

(どうだい。自分を俯瞰ふかんするって)
『イヤな気分だな。ああ。イヤになる』
(わかるぜ。オイラも覚えがあるさ)
『そうなのか……やりきれないね』

(さあて、青空いっぱいに広がった自分に戻ってごらんよ。どんな気分だ)

『うーん。いいなあ。心地よい。これが本当のオレじゃないかって気がしてくるぞ』

☆☆☆

(ああ、そうなのさ。オイラたちは神の分け御霊みたま。法則から生まれてきたんだよ)

『分け御霊……そうなのか』

(この世じゃ金の姿だけどよ。元を正せば神そのもの、エネルギーってやつだ)

『金ってエネルギーなのか』
(波動だって言ったらどうよ)
『まぁ素粒子だけど。何でもな』
(ここには溢れてるんだ、金がさ)

☆☆☆

不思議な気分になる。

前回、私は本当の自分が、幽界でいつも健やかなことを知った。現状がどんなでも。

金についても同じか。

現実の世界でどんな暮らしをしようと、本当の自分は無限の富に溢れているのだ。

もしそうであるなら──

『このままでいいって思えるぞ』
(そうさ。このままでいいんだよ)



イラストは朔川揺さん💖

☆☆☆

お読み頂き、ありがとうございます!

次回の私物語は10月1日午後3時です。

今週木曜朝8時が別アカウント西遊記、イラストの朔川揺さんと創作談話です。

是非、いらして下さい♡

ではまた💚


ありがとうございます🎊