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Vampire Weekend オタクによる『Only God Was Above Us』全曲レビュー

こんにちは、Vampire Weekend大好き!
日本一ヤバめなエズラファンを自称するsakoです。

今日は、2024年4月5日にリリースされたVampire Weekend 5枚目のアルバム『Only God Was Above Us』について一曲ずつ語りたいと思います。

Vampire WeekendのVo&G兼ソングライターであるエズラにハマって、あらゆるメディアの記事やインタビューを読み、聴き漁った記憶を思い出しながら書いてるので、もし記憶違いだったらごめんなさい。

引用元がどれだったか思い出せなくて…頑張ってそれぞれ探せよって話なんですが、個人のブログなのでご容赦ください。

表題『Only God Was Above Us』について

タイトル『神だけが私たちの上にいた』は、1988年の飛行機事故で、飛行機の屋根が上空でふっとんでしまった時にみた光景について乗客が語ったという新聞記事の見出しから。

「新聞の見出しとして変わってるなぁ」と思ってエズラがメモしていたもので、最初は「まぁ結構いいかも?」くらいだったのが、後日「ニューアルバムのタイトルにはこれしかない!!」と思い、つけたらしいタイトル。
確かにインパクト抜群で完璧すぎる!

それでは一曲ずつどうぞ。

1. Ice Cream Piano

“I scream, ‘Piano’ ” (僕は「ピアノ」と叫ぶ)にかけたタイトル。
“I softly reach the high note” (優しく高音に達する)と続くように、音楽用語で「小さく」を意味する「ピアノ」で叫ぶ、高音を出すには勢いがいるのに「優しく」出すという、相反することを歌っている曲。

“Fuck the world”(世界なんてクソ)で始まるこのアルバムは、エズラ曰く、Jorney(旅路)のようになっている。
この曲が一曲目で、ラストが「Hope」というアルバムの曲順は、最初から決めていたそう。

2. Classical

明るくポップな曲調なのに皮肉で暗い歌詞がとてもVWらしいともいえる楽曲だが、間奏のサックスのソロやディストーションの効いたサウンドは彼らの曲にはとても新鮮でクール。

いかに残酷さが
時間と共に
古典になっていくか

「歴史は勝者が作っている」ことを皮肉めいて歌っている歌詞は、世界はクソだという一曲目からの流れのまま、まだ暗い。
ベースのバイオがこの曲を2曲目にすべきだと提案して決まった曲。

3. Capricorn

山羊座に生まれた君の年は
すぐに過ぎ去ってしまった
そして次の年は君の年ではない
若く死ぬには年をとりすぎていて
1人で生きるには若すぎる
何世紀にもわたって
自分だけの瞬間を求めている

新人でもベテランでもない、中堅バンドとなったVW。40歳を迎えたエズラが語る中年のaging(年齢の重ね方)に対する見解がうかがえる。

3rdアルバム『Modern Vampires of the City』では30歳になる手前のエズラがagingについて「Step」と「Diane Young」で語っていたが、その10年後の、ミレニアル世代の一青年の姿にとても共感する。

もはや自分は時代の主役ではない、次の世代へとバトンが受け渡される。

若くもなく、老いてもいない中年期は半端なまま。もう始まってしまった大縄跳びに入れず、ずっと自分だけが逃してしまったチャンスをうかがっている。
中途半端な自分、でももう頑張らなくてもいいよ。

そんな風に私は解釈している。アルバム通して一番好きな曲かもしれない。

リリースの2、3年前にはデモが完成していたらしい。

4. Connect

エズラが「サイケデリックガーシュウィン」だというこの曲。
アシッドをキメた人が歌詞に登場するように、壊れたピアノで、人を不安にさせるような不協和音のメロディーを奏でる、狂ったガーシュウィンのサーカスミュージックのような曲。

エズラはギターを弾くイメージが強かったので、この曲のピアノを弾いてると知って「ピアノうまいんだ!?」とびっくりした。笑

彼らのデビュー曲「Mansard Roof」のドラムがサンプリングされている、セルフオマージュが嬉しい。

5. Prep-School Gangsters

このアルバムの中で最もインディーミュージックっぽい曲。

エズラは面白いと思って見つけたフレーズはメモに書き留めているらしく、このタイトルもそのひとつ。(4thアルバム『Father of the Bride』トラック7 「Unbearably White」もそうらしい)

最後の管楽器のパァーンを、ライブではメンバー3人それぞれトランペットなどホーン楽器を持って演奏しようぜ!と冗談で言っていたのが可愛かったので本当にやってほしい。笑

6. The Surfer

元VWメンバー・ロスタムが関わっている曲。それだけで往年のVWファンは泣いてしまう…

サーファーといえば、日差しが眩しい西海岸の陽気な海でパリピがアゲアゲなイメージ(偏見)なのに、これまた相反して不穏でダークな曲調。

オーケストラ監修はVWツアーメンバー鍵盤でおなじみのウィルが担当。
(「Connect」でもチェロの音域にそんな低い音はないよとか教えてくれたらしい)

7. Gen-X Cops

ドラムのCTとエズラが初めて一緒に作った曲。
イントロのサイレンのようなスライドギターの音について、エズラは「自分が作るならタカタカタカタカと短音で区切った音になっていただろうからスライドギターを使うCTのアイデアが良かった」と語っていた。

X世代、ミレニアル世代、Z世代と「世代」に区切って語られることが増えた現代で、

それぞれの世代が各々の謝罪をする


というのは、上の世代が犯した過ちを下の世代が尻拭いをし、また次の世代もそれの繰り返しだと歌っているのだろうか。

ドラムを10回以上撮り直した曲らしく、プロデューサー・アリエルのこだわりが半端ない。

アリエルがどうしてもと何度も撮って完成したクオリティ。エズラはアリエルに感謝してるそう。

CT、お疲れさま!

8. Mary Boone

エズラが2022年サブスクで最もよく聴いたTop 5を紹介した際に、2位に紹介したのが合唱曲「Abide with Me (Eventide)だった。

そういった曲も彼は日頃から聴くんだなぁと興味深く思っていたので、その影響もあるのだろうコーラスワークが美しい曲。

2022年フジロック出演後、奥さんのラシダの仕事の同伴で、家族で日本に住んでいたエズラ。
ラシダが仕事、息子くんをスクールに送って行った後のひとりの時間は、喫茶店ライオンに1時間くらい歩いて通って、コーヒーを飲みながらクラシック音楽をのんびり楽しんでいたらしい。
最後に歌詞を書いたというブリッジ部分には安藤忠雄建築の教会も登場。
日本での経験がこの曲に垣間見れるのが嬉しい。

海外ファンの掲示板Redditでは、シングルリリース当初、VWファン界で最も人気の曲である「Hannah Hunt」にも匹敵する最高傑作だ!と騒がれていた。それも十分に頷けるエズラの低音ヴォーカルが美しい名曲。

9. Pravda

このアルバムでは1番エズラの手癖っぽい、VWの優しさを詰め込んだ安心させてくれるメロディー。
タイトル「Pravda」は歌詞の中にもあるように、ロシア語で「真実」を意味し、冷戦時のソ連の機関誌らしい。

I wonder if they’ll wait a while
To clear away my crocodile

この部分、エズラがコロンビア大学の学生時代、寮の建物に大好きだったというラコステのワニの絵を落書きしていて、
それがまだあるかなぁという歌詞なんだけど、
こんな文脈わかるわけない!対訳を書く翻訳家泣かせだな!と思った部分。笑

10. Hope

8分あるVWで最も長い曲。

エズラは近年ずっとボブディランの影響を受けているようで、前後編で4時間ボブディランの中期ベスト盤を語るラジオをしていたり、
フジロックでもその中から「Jokerman」をカバーしており、ディランの影響は大きい。

まさにディランのようなフォークソングの形式をとったこの曲は、このアルバムの長い旅路の終わりに相応しい「希望」が示されている。

歌詞全体はとても暗いワードが多く、希望だとは一見思えないが、

君が諦めてくれますように
君が諦めてくれますように
敵には敵わない
君が諦めてくれますように

という歌詞は、人生の達観とも思える。

諦めることはすべてを受け入れること、
ありのままを認め、そのままを受け入れること


それは未来への希望と繋がるような気がして、私のとても好きな歌詞だ。

この世界はクソだけど、それを受け入れて、この世界を愛そう。
そうすれば、希望は元から君のそばにあるんだって気づくよ。


ミレニアル世代の40歳、父親になったエズラが歌うこの旅路は、
未来への希望の道筋のように思える。


余談

購入したヴァイナルとCD

こちらはクリアヴァイナル!ほんとに透き通ってる〜
黒×青ヴァイナル、かっこよすぎるな
日本盤CDボーナストラック「Broken Washing Machine」は前作『Father of the Bride』の置き土産のような曲でこれもまた良い

ボーナストラックで思い出したけど、このアルバムには当初11曲目に「New York Hospital」という曲が収録予定だったそう。「Hope」でラストを締め括ったのは完璧だと思うけど、幻の11曲目もいつか聴かせてほしいね!

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