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奥さんからのミッション、父娘でお出かけ【エッセイ】

今日はじめて娘をベビーカーに乗せて遠出をしました。
遠出といっても吉祥寺まで電車で行ってきただけなんですけど。

特に吉祥寺に用事があったわけではなく、ただふらっと出かけて、ヨドバシカメラの中をうろついていただけです。
5階の家電コーナーで、冷蔵庫を見たり、空気清浄機を見たり、エアコンを見たりしていました。買う予定もなく、ただのウィンドウショッピングです。

平日の昼間なので結構空いていたんですが、そんな時間帯に中年男性おっさんがベビーカーを押して家電量販店をうろついている姿というのは、店員さんもあまり見かけないんでしょうね。何となく遠巻きにされて、まったく声を掛けられませんでした。
もしかしたら無職のお父さんだと思われていたんでしょうか……
かなりラフな格好をしていましたしね。

まあ、なんでそんなことをしたかというと、「ベビーカーで電車に乗ってこい」というミッションを奥さんから課せられていたからです。

我が家は、夫婦二人とも自宅勤務の自営業者という少し変わった業態です。なので、昼間のお守りは曜日交代制にしています。月水金土は奥さん、火木日はぼくという分担です。
こういうのも何ですが、生後半年の赤ん坊の面倒をみるのって、時間を潰すのに苦労するんです。何しろ相手ができることが少ないですから。
体を動かしたり、歌を唄ったり、絵本を読んだりしても、それぞれ20分も持ちません。うちは引っ張って引っ張ってせいぜい30分が限界です。
子ども向けのYouTubeはずっと見ているんですが、まさか日が暮れるまで『トマトちゃん』をリピート視聴させるわけにもいきません。

なので、奥さんが娘の面倒を見ている時は、よくお散歩に出かけていました。
飽きずに長く時間を潰すにはお散歩が一番です。運動にもなるし。
最初はベビーカーで近所の公園を巡っていただけだったのですが、そのうち町内のお店を巡るようになり、カフェでお茶をするようになり、だんだんとレベルが上がっていって、最近は電車で吉祥寺までお買い物に出かけることが多くなりました。
やっぱりなんだかんだ、ずっと家でゴロゴロするよりは、外に連れ出したほうが健康的だし、娘も楽しいみたいです。
適度に疲れてくれるので、寝付きもよくなります。

ところが、ぼくのほうがなかなか出不精でして。
近所を散歩くらいはするのですが、それ以上のお出かけは気が乗らない。
奥さんだと、駅ビルのアトレで服や雑貨やお花を買ったり、ベビーカーで入りやすい無印良品のカフェでお茶をしたりと、お出かけして楽しめることは多いのですが、男性のぼくにしてみると、あまりそういう楽しみ方が想像できないのです。
なので、手近なお散歩で誤魔化していたのですが、奥さんとしてはそれが少し不満みたいでした。
それに奥さん曰く、「ベビーカーで外出をすると、街の移動がどんなに大変か分かるからいってきたほうがええで」とのこと(ちなみに奥さんは大阪人です)。
確かに。夫婦で子育ての目線を揃えることは大事ですよね。
片方が問題意識を持っていることに対して、もう片方がポカンとしていたら、ただでさえ赤ん坊の世話で忙しいのに、そこに夫婦げんかがアドオンされてしまいます。そんなの考えるだけで嫌だ。

それなら行ってみるべきか!と本日ついに重い腰を上げるに至った次第です。
自分がうろついて楽しそうな場所が家電量販店だったので、吉祥寺のヨドバシカメラを行き先として設定し、ベビーカーを押してJRの駅に向かいます。

ちなみに一言で「ベビーカーを押して」と書いていますが、ベビーカーのお出かけにはそこそこの装備が必要です。
まず、おむつ。それから使用済みのおむつを入れる消臭袋。おむつからうんちが漏れてしまった時のための着替え。よだれかけ。よだれを拭くガーゼハンカチ。ミルクや飲み物。UVカットのケープ。携帯扇風機。おもちゃやおしゃぶり。抱っこ紐。
なんでベビーカーを押しているのに抱っこ紐が必要なのかというと、赤ちゃんは往々にして、抱っこをしてもらいたくて大泣きするからです。
以前は、街行くお母さんたちが子どもを抱っこしつつ、空のベビーカーを押している光景を目にして不思議に思っていましたが、今ではよく分かります。二刀流でいきましょう。

さて、駅のホームについたはいいのですが、実を言うとぼくは少しナーバスになっていました。
ベビーカーを押して、はたして上手く電車に乗り込むことができるか心配だったからです。
もちろん家の回りでは、しょっちゅうベビーカーで段差を乗り越えています。理屈としては同じことをすればいいわけですが、ぼくはやったことのないことを事前にあれこれ考えてしまうタイプでして、変にストレスを抱えてしまうのです。よくないクセです。
ふと娘を見ると、ベビーカーに取り付けたケープを一心不乱にいじって遊んでいました。ぼくを見ていないどころか、ケープ以外まったく見向きもしていません。ケープに集中しています。これだったら家でゴロゴロしているのと同じことなのでは。親の心子知らずです。

幸いなことに電車の乗り降りは、まったく問題なくクリア。ほっと胸をなで下ろしました。
むしろ吉祥寺駅のホームについてからが厄介でした。ベビーカーはエスカレーターや階段では移動できません。エレベーターを探さないといけない。でもどこにあるんでしょうか。
エレベーター自体は以前から絶対に見ているはずなのですが、どこにあったかまったく記憶に残っていません。
人間、見ているものと見えているものは違うということですね。目に入っていても認識できているとは限らないのです。

看板を頼りにエレベーターを探しました。ほどなくして見つかります。エレベーターまで向かう途中も、ホームの端を通らなければいけなかったりして、気を遣います。すれ違う人も多い。

普段なら気にも留めず、すいすいとかわしていくのですが、ベビーカーを押しているとやはり人混みをいくのは難しいです。
単純に動きづらいというのもありますが、何だか時間がスローになります。
何かあってもすぐに反応できないので、結果ゆっくりとしたテンポにならざるを得ない。『ゾウの時間 ネズミの時間』という本を思い出しました、生物は体のサイズによって流れている時間の早さが違うという話です。物理的な大きさだけではなくて、体に与えられた制約によっても、時間の進み方は変わってくるのかもしれません。

ホームからコンコースに降りて2Fの改札を抜け、1Fに降りるためのエレベーターを探します。なるほど、確かに階段ひとつ使えないだけで、いつもの駅がダンジョンのようになります。
ぼくは地図感覚というか、土地や建物のマップに対するがかなりいい方なので、苦になりませんでしたが、人によっては迷ってしまうでしょうね。

ヨドバシカメラでは先に書いた通り、店内をブラブラして店員さんに不思議がられていましたが、本当にベビーカーを押している父娘おやこっていませんね。
ほぼお母さんと子ども、もしくは家族連れ。
ママ友同士が子連れで歩いているのもよく見かけましたが、お父さん同士が子連れで並んで歩いているのって、正直ぼくが想像してもまだちょっと違和感があります。否定的な意味ではなく、ただ馴染んでないってことですが。

本当は吉祥寺にある、パパも使える授乳室をチェックするという別のミッションもあったのですが、今日は早々に帰宅してしまったので、まだ次回チャレンジしたいと思います。
ちなみに娘は家に帰るまでずっとケープで遊んでいました。




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